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Vol.11-10 EU の金融危機
相変わらずの就活、就職戦線
就活の日から離れず油蝉 三郎
東北大震災の影響もあって国内経済は回復の時期が遅れ、目下のところその分、学生諸君の新規就職戦線の悪化、雇用市場の収縮を余儀なくされています。反面、大震災の復興、新規開発計画が後盾となって、復興需要計画が労働市場拡大につながって、景気けん引のきっかけを掴むことができればと期待するところです。学生諸君の新たな就活に活路を招くことができればと期待します。
下記に揚げた提言は、昨年の8月に用意されたものですが、一年が経過した今日も国内の経済の回復状況は何ら変わっておりません。むしろ、ギリシャに端を発したEUの金融不安が世界経済に重くのしかかってきて、予断を許さぬ展開となってきております。加えて東北大震災の影響で、企業の生産活動は一時停滞を余儀なくされて景気回復の足枷となってしまっていますが、次第に沈静化に向かってきております。学生諸君にとっては捲土重来、再度の成功への活躍の場となるように願っております。
10月3日
就職戦線の異常市場
青年諸君に希望を持とう
8月6日に文部科学省が公表したところによると、2010年3月に卒業した大学生で、就職も進学もしていない割合が、5人に1人、約10万6000人に昇ることがわかりました。この数字は、昨年に比べて約三割ほど増加しています。また、高校から大学へ進学する学生も、さらには大学から大学院に進む学生の数も軒並み増加しております。
このことは高校を卒業して就職する若者たち、大学を卒業して就職する若者たちが、就職難に直面して止むを得ず選択する道であります。いかに多くの学生諸君が就職を断念し、留年、あるいは進学に切り替えて当座をしのいでいるのかが判り、就職戦線は若者たちにとって深刻な状況となっています。卒業後に定職に就けず、無為に過ごす若者たちの増加の一途は、社会にとって由々しき問題であります。これにいたっては、学生諸君の努力不足では済まされない問題であって、優秀な人材を放置するに等しいといわざるを得ません。これはひとえに日本に置かれている今の経済社会の責任であり、日本企業の責任であり、はたまた国家の責任でもあります。
即ち、経済の回復をないがしろにして、日々政策論争を繰り返し、政権交代を果たした民主党が、相変わらず党利党略に明け暮れて国民経済を省みない低劣きわまる為政者の問題に起因するものであって、誠に以て遺憾の限りと云わざるを得ません。加えて論外なことは、多くの課題を背負った改革、改善の道を怠り、非効率や、無駄の根源である経済社会の仕組みを変えないで、いたずらに浪費を重ねている経済社会構造を放置していることです。その事例は枚挙にいとまがありません。例えば、身近に口にされることですが、その一例が、議員の歳費を下げる事を拒み、議員の定数削減を拒み、あまつさえ逆にお手盛りの増額を図ろうとするなど、はたまた依然として天下りによる税金の無駄使いは目に余りあるもので、言われているところは氷山の一角であります。以て言語道断であります。そうした資金を、止む得ず就職できなかった若者たちの訓練、鍛錬のための資金に積極的に振り向けたらどうでしょうか。
今の日本の為政者たちは、若者たちの将来を、何と考えているのでしょうか。先ず以て雇用市場を改善させるためには、景気の回復を図って学生諸君を吸収しうる雇用市場の改善を図ることではないでしょうか。企業を活性化させなければなりません。法人税の引き下げ、幾多の古い規制を外し、企業の参加を許し、銀行の融資枠を拡大し、以て更なる企業の競争力を高め、労働市場の拡大を図る果敢な政策の発動が望まれます。決断と実行が望まれます。為政者には姑息な小心者が多く、国民本位の政治を行っていこうとする大志をもった偉人、巨人が今の日本に欠けていることは慙愧に耐えぬところであります。
この夏の暑さに負けず、若者たちよ、与えられた充分な時間を有益に活用すべきであります。就職を断念して選択した留年は、大学進学は、大学院に進学した若者たちは、この際、青春を謳歌すべき貴重な時間を手にしています。その貴重な時間は、君たちの自由に任されています。その自由は、放縦とはちがいます。目的を持った行動と、責任がついてまわります。外国を旅行してきた多くの人たちが、一様に述べる感想は、やっぱり日本は一番良い国だということであります。幸いなるかな、世界旅行をしなくても今の日本はいながらにして世界を体験できる国情に置かれています。先ず以て、自分の国についてよく勉強すべきではないでしょうか。
最近のことですが、食べ物にしても私は、タイ料理を食べてみる機会に接しました。私の体にも合って、日本人に合う食べ物であることを知りました。私の昔の体験は、お金のことよりも、食べることの算段でした。衣食住に事欠く時代でしたが、食べ物に困るほど、悲惨なことはありません。白米はおろか、麦さえもいただけず、芋の雑炊でさえ哀れな始末でした。生きることと懸命に戦った日々でした。しかし精神はむしろ鍛えられていきました。終戦前後の混乱した時代のことです。勉強の場所も無く、況や働く場所等ありません。恐らく戦乱の難民に等しい生活だったことでしょう。誰もが等しい貧困に力強く立ち向かっていました。
それに比べれば、今の生活は天と地との差であります。恵まれていると考えて、今におかれている君たちは、健丈な肉体の練磨と同じく、人間性を豊かに持った人格の陶冶に心がけて、例えば留年の学生諸君は、高尚な個性の発揮に努力すべき絶好の機会と捉えてみてはどうでしょうか。リーズナブルな価格でタイ料理、韓国料理、中国料理などをたくさん食べて、抵抗力のある筋肉質の体を先ず以て鍛える夏とすべきであります。健全なる精神は健全なる肉体にあるといいます。若いときの無茶は、年を取ってから必ず出てきます。貝原益軒の著書「養生訓」には、快眠、快食、快便はもとより、過信に陥りやすい無理、過剰な発揮は、 反って害あって損うもの多く、地道な節制こそは健康な肉体に必要な条件だと述べられております。
今年の就職を断念し、留年をした諸君、大學に進学した諸君、大学院に進んだ諸君たちは、実際には優秀な諸君たちでありましょう。従って今度は、この一年間なり、二年間なりを学校で学ばなかった学問、実学を、身に着けるときとすべきで、いたずら無為に過ごしてはなりません。言うなれば悔いのない充実した時間に心して励むべきであります。私事で恐縮ですが、商人の家庭に育ったわたしは、一介のサラリーマンになって生涯を送ることなど全く考えていませんでした。大きな夢を追って学業に励んでいましたが、父の死去でそうした贅沢な夢は砕かれてしまいました。遅まきながらも、経済の重要さも悟り始めました。取り敢えず素早く「あきんど」、経済の道へと方向転換をしなければなりません。商人の道が、封建的なしきたりだと称してしまえばそれまでですが、「おたな」の倅は昔、学問の道を出されると、修行の道に出たものです。主として大阪とか、京都といったところの遠方の取引先や、得意先に一時的に預かってもらい、その間主人に仕えて商売の「道」を覚えていったものです。今で言えば企業の経営手法、労使関係、製品の製造工程とその管理方法、販売戦略といった事柄を肌身を持って会得してこなければなりません。体験的、実践的修業であります。それがつらい丁稚奉公の場合もあります。いきなり番頭の資格に昇るわけにはいきません。一人前になるための修行ですから、下積みからの修業であります。修行を終えて帰り、検証の後は、のれん分けをしてもらって自立の道を歩むのが常道でした。いきなり正業に就くことは至難であります。
若いときには常に勉学と、信念と情熱をたがえない確たる根性を持つ必要があります。誰しも生活がかかっています。しかしながら月給が労働の対価として当たり前といってしまえばそれまでですが、それだけではあまりにも味わいがありません。喜んで働いて、少しでも社会に奉仕できたという勤労の対価を感謝しなければ、社会での生活は長持ちいたしません。そうした単純な思いは、その後の私の人生で狂いがありませんでした。労使の立場が逆転したときも同じであります。
若いときこそ、急がばまわれと、前向きに志向を変えて、自主独立の良いチャンスと受け取ることも出来ます。現在は尚更のこと、資金があれば世界をまたに駆けて検分探検するのも、自分の視野を広げて道が大きく開けてくるでしょう。ナポレオンの使う辞書には不可能と言う言葉はなかったといわれています。ましてや、現代は量的にも質的にも、当時のナポレオンの時代と我々を取り巻く生活の環境も、世界の環境も大きく変っております。そのときの10分の1の努力と消費で、事足りる環境に恵まれて生きています。その気になれば10倍、20倍のチャンスは如何様にもつかむことが出来ます。考え方で人間の一生はどうにでもなります。但し、光陰矢の如し、一寸の光陰軽んずべからずのとおり、時間を無駄に費やすことは大いに戒めなければなりません。そうしたところで人生到るところ青山あり と思えば目先のことにくよくよせずに将来を大きく展望して成果を手中に収めることができます。艱難は忍耐を呼び、忍耐は練達を呼び、練達は希望につながり、希望は決して失望におわることはありません (聖書)。青春時代の、艱難に立ち向かう人生、試練と思えば、修業とすべき一年、二年ほどの留年など、また何をか況やであります。
(8月10日)
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EU の金融危機
EU圏でギリシャの国債を大量に保有する大手銀行デクシアは評価損が拡大し、短期の資金繰りに窮し経営破綻に追い込まれました。ギリシャ国債を持つ銀行の経営悪化といった金融不安が広がって来ています。昨日の、欧州債務危機が本格化してから初の大手銀行の破綻で、世界経済はまかり間違えば2008年のリーマン・ショックの再来と懸案される事態に直面しました。リーマンショックの時には世界経済の混乱を回避するために各国が協調する形で大量の、且つ大規模の財政支出を行って救済を図ってきましたが、今日その付けが廻ってきたことの結果であります。勿論、各国が大なり小なり国の借金が膨らんで苦慮しているのが現状ですが、これから早く脱却する道を模索しているところです。こうしたなかで国の体質にもよりますが、ギリシャが財政危機に陥ってEUからの援助をもって緊急避難を図ろうと試みて、国内の緊縮財政を議会で可決しようとしております。これに反対する市民や労働者が連日大規模なデモをアテネを中心に仕かけています。
ギリシャの政府債務危機が起きたのは去年の春ですが、ドイツ・フランスの指導でEUの結束が維持され、EUの通貨危機に飛び火しない懸命の努力が行われてきました。一方、ギリシャ政府には財政の健全化を求めて緊縮財政と政府機関の支出圧縮を求めました。これに反対する民衆のデモが政治不信、経済不信を増長せしめる結果となり、一向に改善の措置が進まないままに来てしまいました。
EUの信用不安は、過大な債務を抱えるイタリア、スペイン、ポルトガルにも波及する異常な事態に発展しかねません。このところギリシャの信用不安が世界同時株安を演じてきており、こうした状況を反映し、ユーロも10月5日には対円レートで100ユーロを割り込む寸前になってきております。世界経済に暗雲がたちこめてきました。
EU、ユーロ圏首脳会議が23日に包括策を打ち出すという声明を出したことと、9月にドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が、欧州域内の銀行の資本増強などを進める方針で一致したことで、若干安心感が漂い、10月11日現在、ユーロは104円台にまで戻してきております。ニューヨーク株式市場もこの日は330ドル高と一ヶ月ぶりに高値をつけました。EUや国際通貨基金、欧州中央銀行は11日、財政危機のギリシャに融資を継続して80億ユーロを11月に払い込むことになりました。これでギリシャが債務を返済することができなくなる事態は当面避けられることになりました。
ところでデクシアの破綻処理は、2008年の米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻の場合と違い、関係者が自発的再生にあたる「私的整理」に踏み切ったことです。リーマンの時は米連邦破産法の適用を申請して最終的に清算させる「法的整理」でしたが、今回のデクシアは「私的整理」です。即ち持株会社は存続し、株式市場の上場は維持し、預金は保護されます。法的整理に踏み切らずに対応したことは、激震を避けて軟着陸に成功した結果とみていいでしょう。
それと政府の公的資金の注入です。リーマンは政府の公的資金の注入はなされませんでした。デクシアの不良債権の受け皿となる「バットバンク」にはベルギー、フランス、ルクセンブルグが政府保証を与えます。
更に、デクシアはEUとIMF(国際通貨基金)の支援を受けているギリシャ、ポトガルの国債を大量に保有していことが資金繰り悪化の原因で、リーマンの時と比較して単純でした。リーマンの時はサブプライム・ローンを裏付けにした金融証券化商品を通じ、資金の貸し出しと受け手が複雑に入り組んでいました。今回の銀行の破綻の原因 は、ギリシャの発行する国債が不良債権化して起きた結果でした。但し保有している金融商品が、相手が国債なので万が一の時には助けてくれる先のものがありません。子分がこけてしまったケースなら親分が面倒を見ることにもなりますが、事は肝心の親分の不始末ですからどうしようもありません。幸いギリシャ自身はEUに参加しているので、EUが親分役を買って出ているので見放すわけにはいきません。当然ながら財政支援に懸命であります。私は紆余曲折はあっても早急に事態解決の方向に進んでいくと思っています。
デクシアは救済策を受け入れて、解体されることになりました。不良資金を切り離した上で、ベルギーの銀行部門は同国政府に売却(40億ユーロ)、一時国有化します。金融、銀行の不安拡大に歯止めがかかる見通しと期待が持てることになりました。しかし火種はくすぶり続けるでしょう。欧州の金融システムの抜本的な解決こそ、加盟17か国のEU欧州共同体の繁栄につながるものであり、如いては世界経済の安定と発展につながるものであることが、今回の国債信用不安から学び得たことであります。 10月12日
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限界の公的債務
新年度に入って心機一転、意気高揚して驀進していく身ですが、一方で今の日本は大震災と放射能汚染と戦う日々の生活が待っています。日本を覆う大気は重苦しいさなか、大人から子供たちまで「頑張ろうにっぽん」、「発揮しよう日本の底力」のスローガンで連呼する毎日であります。
目下の課題は、生活を直撃する放射性物質を除去し、健康被害のない生活環境を取り戻すことが急務であります。そのためのあらゆる手段と技術を駆使して行かねばなりません。
土壌汚染の除去には膨大な資金と労力が必要であり、個人ではもとより地方自治体の手にも負えぬものであります。国の資金を使って大胆に敢行する必要があります。国会で予算の審議をしている間にも汚染被害はどんどんと広がっていきます。ましてや大気の汚染の及ぶ地域は広く、「大臣もこもかぶり」も等しく汚染被害の中に住むことを強いられています。土壌汚染が進んだことを理由に避難地域では一部が避難解除がなされて、住民の帰宅が許されていますが、子どもや幼児を連れて帰宅する家族は稀で、健康被害を最も恐れている父兄が大方で、事態の深刻さを如実に物語っています。
又、福島県から他県に流出する県民が多く、人口動態に関係者は危惧の念を持っているのが実情です。
コメの出荷が始まりました。福島県では農家に対して水稲の植え付けの前と、収穫の時の二度にわたって放射能の検出検査を行ってきましたが、幸いにも国が定めた基準値を大きく下回って安全基準を確保することが出来ました。これを以て県は一斉にコメの安全宣言を出して出荷を許可しました。農家にとってはコメの出荷をするための県の許可を得たとはいっても、果たして消費者が購入してくれるかどうかが心配だとする声が圧倒的であります。不安と風評被害の及ぶところは米にとどまらず、すべてに及んでおります。先日、不動産開発業者が白河以南の分譲住宅地を一括して売却しましたが、優良住宅地にもかかわらず二、三年前に売った値段の半分にまで値下げして売らざるを得なかったと慨嘆しておりました。それでも不動産市場の低迷する折、思い切って量を以て処分できたことはラッキーなことであったと述懐しておりました。
先日、IMF・国際通貨基金発表しましたが、傾向として先進諸国の経済成長が鈍化して、財政と金融の不確実性は著しく増加したとのことであります。分けても地震と津波に襲われた上に、放射能汚染に甚大な被害を蒙った現下の日本は、こうしたニーズに対応して高水準な公的債務に直面しており、世界の重大な関心が集められてきています。市場の信頼感が熱いとは言いながら放置しておけるものではなく、日本は赤字と公的債務に対する意欲的な削減計画に乗り出す必要があるとのことでありますが、これは当然のことと認識すべきであります。経済の一寸先は同じく闇であります。何かのきっかけで経済のフレームが衝撃的に破壊されかねないこともあります。つまり日本への信頼が突如として弱まる可能性がないとは言えません。
日本の政府債務は、2011年の名目国内総生産の213パーセントに達しております。米国は101、ちなみにギリシャは157、イタリアは129パーセントと日本が特殊な事情にあるとは言いながら、いかに突出しているかがわかります。世界の目は厳しく、米格付け会社スタンダード・アンド・ブアーズによると日本は第4ランクのダブルAマイナスであります。日本にとって公的債務問題がいつか大きなリスク要因として浮上しないとも限りません。日本と我々国民は常にこうした問題意識を以て将来に対処していかねばなりません。 10月14日。
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放射線量の測定値
最近驚いたことがあります。驚きが別に感じなくなってきたことが又、驚きであります。普段何気なく見ているNHKのニュースの終わりごろに天気予報が告げられて、これが私たちの明日の行動に大きく左右してくるときがあります。行楽を控えた時などは尚更のこと天気予報に気を配ったりしています。驚いたことと言うのは、天気予報と一緒に、今回の東電の原発事故で大量の放射性物質が各地に飛散して被災地の住民を襲っていますが、その放射線量の結果が、毎日の報道に組み込まれて画面に告げられています。いつの間にかこれが普通になってしまい、あるのが当たり前で、ないのがおかしいという感覚に慣れてきてしまいました。近頃はあって当然、なくてどうしたんだと懸念されるようになってしまい、人間のなれとは恐ろしいものだと思うようになりました。毎日の放射線報道に飼いならされてしまったというのが実感です。そして測定されて結果がどうなっているか、日々変化してきているか、さらには増加して心配な数値に上がってきているか、気に掛ける毎日となりました。気温の上がり下がりと同じように、私たちの生活と直結していつの間にか深い関係に結ばれることになってしまいました。
しかし、このことは我々が非常に危険な生活習慣の枠組みにはめられてしまったということであります。放射能に被曝したりするということは、原子爆弾を投下しあって、戦争でも始まらない限りありえないと単純に誰しもが思っていたことでした。つい忘れがちなことですが、私たちは広島の原爆、長崎の原爆にあって放射線の被曝にあった悲惨な被害者たちの実情と暦史を知っている唯一の国民です。事もあろうに原子エネルギーの平和的利用を目指して開発、建設した原子力発電施設が地震津波の天災を受けて爆発事故を起こし、恐るべき膨大な放射性物質の拡散で、日本全土が放射性物質の汚染にさらされているという危険極まりない状況にさらされていることです。その現状が、汚染の測定値が各地の数値として日々告げられているのです。告げられていても、危険の度合いが示されていても、私たちはどうすることもできないわけで、ただ傍観するしかありません。目に見えない放射能の実体は、幽霊のような化け物にしか映りません。勝手に暴れまくっていますが、悲しいかな、私たちは手出しすることもできず、ただ呆然としてこれを甘受するのみであります。
大臣も物乞ひもみな放射性物質をあびて生きる日々なり
国民の上下の隔てなく万遍に行き渡って、セシウムやヨウソは我々の体を大なり小なり蝕んでいく危険を孕んでいることは確かなことです。福島県初め近隣の各地域では汚染の除去に躍起になっていますが、除去した土壌や瓦礫を一体何処に運んでいくのでしょうか。運んでいった先で汚染物質の絶対量が減るわけでもなく、これが消滅するには何十年、何百年といった期間がかかります。しかも狭い国土で放棄する場所をめぐって、議論と争いが続いております。
放射能対策では被害が広範囲に及んで今は、八方塞の日本ですが、良い知恵を出しあい助け合って、解決の道を進むしかありません。汚染除去に有効な化学物質の発見なり、開発なりが進めば、これに勝るものはありません。私たちは電力行政と電力業界の事について、今まで余りにも無知に過ぎました。原子力発電のコストについても無知に過ぎました。使用済み核燃料の廃棄についても、今行わんとする放射能汚染物質の除染と処理以上に困難極めるものであることも、漸く認識するようになりました。
それには開発に要した資金以上のコストがかかるかもしれません。しかも炉心の廃棄には30年、40年といった歳月を要します。おびただしい労力と時間と資金がかかります。素人の私たちは、今回始めて勉強する機会に遭遇したわけであります。昔、始めのころの原発推進に関わった人たちは、その後も、今日に至っても、私達素人に等しい国民を啓蒙することなしに、自分たちの利益を優先して、これを国策としてまで推進してきたのです。それまでは専らそうした事実は封印されたままの状態で来ていたのが実情です。ましてや、東電の原子力発電基地の爆発事故が、日本国と民族に与えた被害は計り知れず、日本民族の命運を決するほどの重大性を帯びているといっても過言ではありません。それを思うとき尚残余の原発基地の推進に旗を挙げる人たちが居ることを不思議に思うのです。 10月17日
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狂犬 カダフィ死亡
内戦が続くリビアで20日、独裁者カダフィが銃撃され死体で見つかりました。四十二年間の強権政治を敷いてリビアの国民を支配してきた通称「アラブの狂犬」です。
市民による反政府デモは一月のチュニジアに始まり、ジャスミンの香りの市民革命はそのまま中東北アフリカで春の嵐となって熱く吹き荒れ、二月のエジプト、そして三月のリビアと続き、今回のカダフィイ独裁政権が市民の民主勢力によって次々と崩壊しました。三年前イラクでフセインが穴のなかで発見されましたが、カダフィは下水管の中に隠れていたそうです。
歴史上、幾多の英雄が出てきてそのまま権力の座に居直りましたが、国民の財産をほしいままに初志貫徹はままならず、末路は悲惨そのままに終焉です。しかしながら長期にわたる圧政、束縛のもとで苦しむ市民の身の代償は、余りにも大きくその犠牲たるや言語を絶するものがあります。独裁者に共通する点は一族による利権の独占と、治安機関による民衆の監視国家であります。秘密警察による言論統制と容赦ない弾圧であります。民衆に対しては自由を剥奪し、反政府活動の一滴をも漏らさじと、密告を奨励し、疑心暗鬼の風潮を流す陰湿極まりない社会構造に仕上げていきます。そうした時代に遭遇した民衆こそ悲運であり、悲劇であります。片や独裁者とその一族は権力を集中し、富を独占し、治安部隊を周囲に配置し常に警戒の目を許しませんが、外部との接触は分厚い塀を以て遮断され秘密のベールに隠されて、豪勢な生活をむさぼっているのが常であります。資源国にこうした傾向が強いのは、国民は無知蒙昧に放置されているので、自己覚醒に乏しく教育の普及はもとより、政治への参加意識は低く、科学技術の進歩発展は皆無であります。指導者というのは、たまたま権力を掌握して頭角を現したものが英雄視され権威化されていく過程で豊富な資源を楯にして勢力を拡大し、99,9パーセントの民衆を盲従させていくスキームを形成していくのでしょう。自由と平和を元に民主主義を標榜する我々にとって、正に暗黒の世界であります。
今最後のあがきを演じるシリア、イエーメンでは政府軍と、独裁と圧制に放棄して立ち上がった市民、反政府武装勢力との間で凄惨な戦闘が続けられていますが、市民と反政府武装勢力は、豊富な武器弾薬を所持する政府軍の容赦なき攻撃の前で、苦戦を強いられて多くの犠牲者を出しています。実体と本質は先に崩壊したチュニジア、エジプト、リビアと何ら変っていません。早晩圧政からの解放を叫んで立ち上がった民衆の勝利に神は味方してくれるに違いありません。
大規模かつ長期化する内戦によってリビアが、これ以上の市民の犠牲者がでることを憂慮していましたが、カダフィの死の結末によってそれを喰い止めることができ、大いに喜ぶべき事であります。リビア国民は今、カダフィ死亡の報らせに歓喜し、市民は街に繰り出して旗を振り、兵士たちは銃口を空に向けて打ちならしています。
英雄の座にいなほりて独裁を長きに敷きて末路あへなし
ジャスミンの香りを放ち民衆の蜂起におびゆ独裁の国
フセインもカダフィイも皆穴のなかより死に体になりて捕はる
取り巻きの悪ろきさかりに身を落とす独裁の座のたどる道とも
雄弁を以て民衆をあほりたてナチス、フセイン、カダフィイも又
中東の狂犬カダフィイも民衆を敵に廻して打ちはてにけり
意のままに国と民とを喰ひつくし破滅にいたる独裁の果て
一族が富と利権を収奪し油のうえに暮す豪奢に
重税にあえぐ民衆の国もあり資源の贅に酔ふ国もあり
温和なる世の人々を震撼す専制政治の狂暴の日々
欧州の金融危機にメルケルの女性の英知と勇断に期す
ギリシャ発国債価格の暴落に不良債権のかさむ銀行
この時期に女性メルケルの活躍に頼る世界の金の亡者ら
脚光を浴びて現はるメルケルに男の子の威信の暴落のあと
中東に自由と民主の地をめざし独裁政治に立ち向かふ民 十月二十日
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傭兵を使い民衆に銃を向け鬼畜にひとしカダフィイ・アサドら
国民の大量虐殺も明らかにシリアのアサドの断末魔の果て
国民を守る立場にありながら銃口を向け虐殺するとは
カダフィイに愚者のアサドも追随し惨めな羽目に落ちていくかも
独裁者亡き後の国の混乱の収束にたつ若き民衆
くにたみの富を一族が手におさめ貧しき民を治む政治や
英雄の出現に盲従の民多く圧制の維持に片や貢ぎて
イエーメンもシリアも同じ轍を踏む定めにあれば白旗を振れ
人生を蓄財の道とこころへて政治の世界に挑むばか者
権力の座を利用して蓄財に励み奈落の道を行くなり
みじめなりあはれなるかなエジプトのナセルの軍服姿のあへなし
法廷のさばきに檻に容れらるる哀れナセルの老醜の沙汰
法廷に立つも檻に身をおきて二重の手錠にかかるナセルよ
檻におる今は昔の英雄のナセルの姿に重ねあはせり
広漠の砂漠に高きピラミッド怒り放ちて国を救へり
肥沃なるナイルの岸に栄ゆ国エジプトに今再興の時
人は皆神のみ元に限りなき恩寵を受く定めありしに
文明の発祥の地に夕焼けの巨大ピラミッドの長く曳く影
大いなる御山に朝の光さし栄えをのちに長くかたらむ
悠久の流れに神の恵み得てナイルの岸に栄ゆエジプト
エジプトの国土に神の恵み得てナイルの富を今に続く日
中東の砂漠の砂丘に隠れたる資源に赤き夕日落ち行く
竪琴の調べもかなし悠久のピラミッドのかげ砂に消え行く
荒鷲の砂丘の果てに飛び行きてピラミッドの影ゆるる夕べに
東洋に君主に臨む教えあり天下泰平と民の安泰
人の世に悪ろき企みを持ちて住むサタンのごとき人の多かり
賢人の論語に学ぶまつりごと徳知主義にて道を踏むべし
英雄のナセルの堕落にエジプトの古代の王も嘆きおるらし
国民に銃を突きつけ弾圧に振る舞ふアサドを誰かとどめん
これ以上自国民をば殺すことなく自由解放の道に勤めや
己が身のアサドに破局の身と知りて自棄と自暴になるを恐れむ
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平成23年10月12日
社団法人 昭和経済会
理事長