line

社団法人昭和経済会

理事長室より
LAST UPDATE: 2024年12月13日 RSS ATOM

HOME > 理事長室より

理事長室より

Vol.12-02 回復するニューヨーク株式

初春
    あらたまの空朗々とあけそめて神の恵みにみつる大地よ
    年明けの鐘の音たかく聞ゑきて夢と希望のひろごりていく
    ものごとの成就をねがひ絵馬にかき湯島が宮の梅にかけたり
    この年にはたすしごとのあれこれと全てなさむと思案するなり
           +

回復するニューヨーク株式

   3日のニューヨーク株式市場は、注目の米雇用統計が大幅に改善したことを好感して活況を呈し、前日比150ドル82セント高の1万2862ドル23セントで取り引きを終えました。二〇〇八年秋のリーマンショック以来の高値で、アメリカの景気回復の兆候が鮮明になってきました。欧州の信用不安で世界経済に動揺が走るなか、力強いアメリカ経済の動向が唯一明るい前途を映し、我々に大きな希望をもたらすものであります。秋に大統選を迎えるオバマ大統領にとっても追い風となって、オバマ氏の表情にも明るさが戻ってきました。
   ダウ平均株価を押し上げた雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前日比二四万三〇〇〇人増加して市場予想を大きく上回ったことが好感されました。非製造業の景況感指数も上昇し総体的に「米国の経済活動が一段と拡大している」ことに自信を持ち始めています。個人消費も堅調に終えたクリスマス商戦を機に徐々に回復し、世界の資金が業績面で好調な大手企業に潤沢に向きつつあります。こうした動向を受けて心理的にも世界経済に良い影響をもたらして株価水準が堅調に維持されているうちに、実体経済の構造改革が進んでいくことを期待したいものであります。
   株価の上昇は個人資産の増加をもたらし、消費意欲に刺激を与え、企業には在庫投資一巡後の設備投資への余力を蓄える機会ともなり、これが景気回復の顕著な指向と、乗数効果を果たす健全な循環過程に入ったものと思われ、そのように期待しているところです。東北大震災の復興需要を当て込んで各産業分野が活動してきておりますが、これが起爆剤となって日本での産業構造の改革が進んで次世代の経済競争に打ち勝っていける新産業の構築に役立てる大きなきっかけを作らなければなりません。東北大震災と原発事故の被害は、第二次世界大戦の敗戦で受けた壊滅的な荒廃を凌ぐもので、日本経済の大損害をもたらした今回の史上最大の致命的事件であります。シュンぺータの創造的破壊の理論を適応して、自然災害の突発的壊滅の被害でありますが、今までの旧組織、旧体制を壊して新しき創造への踏み台としてこれをとらえ、新経済構造のフレームを作るチャンスをいち早く手に入れたものであります。時はまさに欧州信用不安のあおりをくって新興国へも影響し、世界経済の萎縮と後退をもたらしつつある今、アメリカ経済の独自の回復に意を強くして、世界に先駆けて日本独自の経済機構の構築を目指して我々も進むべきであります。言うなれば新資本主義経済の構築というべき意義ある歴史的使命を帯びております。
   ところで株価上昇と実体経済との乖離を指摘する人たちもいます。しかし反省しながらも、株価の先見性発揮の特殊性以外に諸般の事情、例えば大幅な金融緩和が行われ、流動性で株価が支えられている間に構造問題に道すじをつけ、実体経済を前進させていけばいいのではないでしょうか。株式と株価の役割と使命は、そこにあると云うことを認識すべきであります。経済効果のタイムラグによる現象で、初歩的観察と云うべきであります。
   顧て日本株式はデフレ脱脚ができぬまま失われた二〇年を内包し、加えて株式市場の改革が遅れるなか活性に立ち遅れ閉塞感が重くのしかかっています。アメリカと比べリーマンショック後の高値は未だに1万1339円を大きく下回ったままに推移して、取引高も連日停迷の状況です。米株式市場の好調な推移に軽ろうじて水準を保っており、つれ高期待のみで八方ふさがりの状況は慨嘆の極みであります。いたずらに株式の投機色を警戒する余り、過剰な規制に翻弄されて市場の力をそがれているきらいがあって、旧態然の体質が投資家に敬遠されています。
   記憶ですが昔は特定銘柄ポストが設けられ、市場の活性化に大きく寄与していました。東京海上、平和不動産、日本郵船といった業界をリードする銘柄が立ち会い前に取引されて、市況を判断する特別な役割を果たしていました。若干投機的手法を導入し、市場の活況を誘導する使命を果たしていたくらいです。しかし、最近は官僚的価格統制に似た規制や監視が過剰にすぎて、市場に楽しみが生まれにくくなってきたことは大きな弊害であります。市場にまかせて投機色の強い銘柄の活躍を利用して、潤滑剤の役目を発揮させることも重要であります。監視委員会は株式の動きを止めるのではなく助長させ、逆に反社会的資金の割り込みを排除するため、徹底的に内容と動きを監視することに視点を移すべきであります。  2月4日


            豆まきと立春                                                                   多摩川の岸辺に立ちて紺碧の空に富士の嶺とほく見る春
       豆まきに厄を払いて福をよぶ今朝より声の高きわが家
       立春を迎ふ紺青のけふの空くまなく澄みて光るまほろま
       今朝はやく愛する孫のふたりきて祝ひの袋をそなへ待ちけり
       来るたびに言葉を覚えたのしみて所作に示して孫のかしこし
       面差しのわらべにたとへあどけなし観音菩薩のほほえゑみてたつ
ものごとの成就をねがひ絵馬にかき湯島が宮の梅にかけたり
       この年に果たす仕事のあれこれと全てなさむと思案するなり
       この年に及びいささか慌てきぬあまりにでかき仕事ひかへて
       立つ春の鐘の音たかく聞こゑきて夢と希望のほろごりてゆく
       十字架の主のあがなひにわれら皆ひとしく愛と恵み受くべし
       万軍の兵を率いて目覚む朝いづくゆ歓喜のとどろきを聞く             はるさめの寒くおぼへて夕べより目覚めてながむ今朝の雪かな
       あほぞらのくまなく澄みて立つ春の昼のひざしに光るわが庵
       結婚のうたげに臨み祝福の和歌をたのしく詠みて贈りぬ


                        2月5日

*************************************************************************

          *
    逆も又真なり

私は下記の原稿を披露宴が過ぎて二日後の火曜日、帰宅して夕飯を済まし、祝辞の文としては長すぎたことを反省して、自分でいったことを思い浮かべてそのまま書き記したのである。書いた文を読んで時間を図れば、一体自分がどれほどの時間を会場で費やしてしまい、出世席されている方々に迷惑をかけたのではないかと案じていたからである。新郎の父君であるF社長から前以て案内があれば話しやすいのだが、ほとんど資料を用意されていなかったし、新郎についてはお目にかかったこともないし、ただF社長から電話で最低限の知識を教えてもらったのである。開会の辞で、幸い賢明な司会者が新郎の学歴とその後の身の振り方を説明して今に至っている経過を正しく説明してくれたので大分助かった。
その時主賓に呼んでいる招待客が事情で出席できないことが判明したので、予定に組んでいた時間が余ってしまうので、ゆとりを以て話してくださいと耳打ちしてくれたので分かりましたと云って、予め考えていたことに何か即興で付け足していけばいいと考えていた。そもそも挨拶する時は原稿を用意して,それを見てしゃべるということは殆どしていないので,その場で思っていることを話すことが多い。話していると次から次へと話すことが湧いてくるので、聞く人にとっては臨場感があって面白い場合がある。だからと云っていつまでも喋っているわけにはいかない。それでもどこかで止めなければいけない。それでも挨拶は短くということが鉄則だから、それも予定の中に組んでいかなければならない。会場の雰囲気を見定めて行けばいいと思って上記のような内容になってしまったのである。
自分でいったことはよく覚えているし、どんなことを云ったかも改めて書いていくとほぼ間違いなく書きとどめることができる。そうすると祝辞を述べるのにどんな時間を要したかがおのずと分かってくる。いくら内容が良くても時間のかかりすぎでは相殺勘定になってしまい、発言者としては思わぬ失墜と云うことである。とっさの事情を汲んでやった結果だとしても、会場の人たちはそこまで事情を知っていないわけだから痛し痒しと云うところである。
秘書の中村君が小生の執筆した乱暴な下書きを活字に打ちながら、下書きを打ってこれを原稿の棒読みのために使うのが普通だけど、理事長のは逆で、云ってしまったことを後になって原稿にするというのも可笑しなもんだと云っているのも、さもありなんことだと思って大笑いになった。しかし後で考えてみたら、結婚の祝賀の宴たけなわとなって、近寄ってきてワインをついでくれた何人かの好意的紳士諸君が、立派なあいさつで感動しました、いいお話で勉強になりましたと言って下さったので、ほっとしながらも汗顔の至りに思ったのである。
人の話を聞きながら白河夜船を決め込んでいる人もいるし、イライラしている人もいるだろうし、熱心に聞き入っている人もいてさまざまだが、国会の質疑答弁のようにあらかじめ予定された原稿が関係者に配られてそれにのっとって演出しているのも馬鹿馬鹿しい気がしてくる。官僚の作文の棒読みだとたたかれている政治家が多い。即興で当意即妙の話術となると、とんでもない失言を演じて物議を交わすことにもなるから、それはそれで致し方ないことではある。国会が始まると議場や委員会で議論を戦わしあっているときに居眠りしている閣僚がいる。注意されて答弁に立ったが、質問の要旨を聞いていないので頓珍漢な答弁で失笑を買っている場面があった。聞いていても田中防衛大臣のような答弁をすることもあるから何とも言えないのである。愛嬌で処理されているが。まあ人間臭くていいのではないか。それくらいにしか重要視されていないということかもしれないが、それでは国の安全と主権を任せている国民は困るのである。そこでまた任命責任だ、なんだといったことにこじれて来てしまい、そうしたことで野田さんの頭の毛もだんだんと薄くなってきてしまう。
   ところで興味のあった私の祝辞に、その時どんなことを申し上げたのか自分で辿ってみようとペンを置いていたのである。そしてこの原稿を今日の昼休みにパソコン打っていたら、F社長が突然お見えになって、大変いい祝辞を頂いて有難くお礼に伺った次第と、わざわざお見えになったのである。恐縮したのと、感謝の弁を受けたようなことで私は胸をなでおろして安堵したのである。それにしても長い祝辞になってしまっているのではないかと思いつつ、この喜びを改めてかみしめて、これを昭和経済の後記随想にのせて、皆さんと一緒にお祝いと、喜びと、感謝の念を分かち合いたいと願った次第である。

+

  結婚披露宴での祝辞

   新郎新婦ご結婚おめでとうございます。心からお慶び申し上げます。先程司会者から新郎新婦の結婚の儀が日枝神社で厳かに恙く済まされたとのご報告を聞き、重ねてお祝い申し上げます。
   私は只今司会者から紹介頂きました社団法人昭和経済会の理事長をつとめております佐々木誠吾と申します。昭和経済会は一九三四年、昭和九年に創立されました。財務省、旧大蔵省の許可による由緒ある社団法人組織で、歴史的、伝統的且つ革新的な経営者団体であります。公私経済の発展と促進を目的に、会員相互の理解と協力、啓蒙に軸足を置き、七十八年の永きに亘り活発な活動を繰り広げて現在に至っております。
   新郎の厳父、F社長は平成六年に会員として当会にお迎えし、爾来、陰に陽にご支援ご鞭撻を頂いてきております。赤坂に地下一階、地上九階の赤坂プラザビルを牙城とし周辺地域にビル事業を展開して大なる成功をおさめ、立志伝中の方であります。堅実且つ積極的経営方針を貫き盤石の基礎のもと、会社経営に日夜研鑽努力され、今日の繁栄を築いてこられました。人柄は温厚誠実に面倒見よく、当会に於いても社長の積極明快な経営姿勢と共に、明るく人情豊かな人柄に多大な魅力と尊敬の念を以ってご交誼頂いてきております。
   司会者のご紹介にありましたが、新郎は幼少の頃から向学心に燃え、高校卒業後渡米してニューヨーク大学経営学部で勉学、学位を取得し帰国後はホテル経営を習得すべく小田急不動産・山のホテルに就職、ホテル事業を習得し実践修業の道に励んできました。そもそも厳父のF社長の事業家としての卓越した手腕質素と、人格的教養を目のあたりに、新郎は既に現場での実践に徹してきており、正に鬼に金棒であります。新郎には前途洋々たる道が開かれ、尚且つ厳父同様に、日韓経済、文化交流を更に拡大促進され、社会的に将来を大きく嘱望された好青年であります。新家庭の建設とともに将来の活躍と飛躍を願って止まぬ次第であります。
   夏目漱石の小説「草枕」の冒頭には「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ、とかくこの世は住みにくい」と云っております。古今東西いづこに於いても共通した世相であります。渡る世間に鬼はないどころか、敷居をまたげば七人の敵でありまして、渡る世間は鬼ばかりと云う裏返しのことばも通して、なかなか道理が通らぬものでございます。しかしながら私たちはこれを世間の荒波と称して、これを乗り越えて行くべく日常、切磋琢磨して我が身のため、人のため努力邁進してゆく日々に立ち向かっております。
   一昨日フェイスブックがアメリカのニューヨーク証券取引所に上場を申請しました。実現されますと、時価総額は七兆六〇〇〇億円ともいわており、IT産業の業界は莫大なインパクトに見舞われて良くも悪くも戦々恐々の様相であります。フェイスブック、Iフォーン、エックスプロアー検索と情報通信機器の会社は目白押しです。斯様に情報多過の渦の中に私どもの生活は置かれており、瞬時たりと目を離すことができません。情報はグローバルで広範囲に、しかも迅速に目に映り、耳に入ってきますし、昨日であったことは、今日でないと誠に眩惑するばかりであります。そうした中で私たちは適格な判断を以って、真理と正確を求めて誤りなき道を模索して進んでいかなければなりません。競争以前に、自分自身の確立と強化が求められます。
   日本は幕末、明治維新に傑出した人物が多く輩出されて、封建時代から近代国家への足がかりを作り上げました。自由民権運動の中江兆民、勝海舟、坂本龍馬、西郷隆盛、福澤諭吉、大隈重信、岩崎弥太郎…と枚挙にいとまがありません。理念は各人各様ではあっても、そこで共通することは人生の偉業を成し遂げてゆくには人間は第一に健康でなければならないと云うことであります。そこで強固な意志、高邁な志、難攻不落な城にも似たゆるぎなき信念を持つには、基本的に健康の二文字に徹し、率先してこれを実現してゆかねばなりません。
   明治の元勲大隈重信は人生の目的を貫いてゆくには肉体的健康と、精神的健康の確立と貫徹が重要であると強調し、わけても精神的健康法の実践こそが重大な馬力であると云っています。そして精神的健康法第五条なるものを自から案出して、これを自分の日常生活の実行、実践に心掛けたとしています。
 第一に、おこるな、であります。短気を起こさず、人との争いをしないこと。
 第二に過去を顧みるな、と云うことです。昔を振り返って、無益なこだわりを避けよ と云うことであります。
 第三に愚痴をこぼすな、と云うことであります。
 第四に将来に望みを抱け、と云うこと。
 そして最後に、人のためによきことを成せ、ということであります。
  極めて単純明快で簡単な事柄でありますが、云うべくしてなかなかできかねる難問かも知れません。しかし大隈侯はこの五ヶ条を常日頃念頭において実践することが、人間のスケールを限りなく大きく育んでいくものだと喝破しております。
  人生を実のあるものとし、悔いを残さぬための修業は、実践してゆくと誠に妙にして深みのあることに気がつきます。新郎はそのお手本を厳父のF社長の後ろ姿を凝視して、ただ邁進してゆくのみではないでしょうか。汗を流して努力してゆく道は、知らずのうちに厳父、社長の人生遍歴と努力研鑽をご自分のものと習得し、大樹を仰ぎつつ、更にこれを飛び越えて躍進してゆくものと信じて疑いありません。
  今日私は、昭和経済会の機関誌、昭和経済の一月号を持って参りました。それと私が主宰する短歌同人誌淵の一月号を持ってきました。短歌同人誌の淵は、書を書かせて日本一、歌を詠ませて日本一と自他ともに認める大歌人の会津八一の系譜を継ぐもので、五〇年余の歴史があります。萬葉集の調べで香り高い内容のものと自負しております。私は自ら平成の大歌人を自認しております。
  昭和経済の一月号の表紙絵は二見ヶ浦の夫婦岩と同じ、伊豆舞鶴半島の三ツ石海岸の沖合にある夫婦岩ですが、男岩、女岩に太いしめ縄が張られ、今しも初日の出を眺めんとする瞬間を目に収めて描かれており、まことに新春にふさわしく希望あふれる情景であります。これにちなんで、一句詠み上げて、これを新郎新婦にお祝いとしてささげます。又、淵を代表して平成の大歌人の私が二首、お祝いと喜びの和歌を詠み上げて記し、これを花婿花嫁にお祝いとして差し上げる所存でございます。
      *
   夫婦岩くぐりてきたり宝船
      *
   寿ぎて新郎新婦に幸あれと祈る門出に仰ぐ富士の嶺(ね)

   つれそひて喜び祝ふ人生の夢と希望の王道をゆく

 ご結婚、おめでとうございます。

   2012年2月5日
               ザ・キャピトル・トウキョウ・東急にて


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

日銀の物価政策、1パーセントのインフレ率目標設定

日銀は十四日の金融政策決定会合で、デフレ脱却のための一歩踏み込んだ追加緩和策を決めました。「消費者物価上昇率を一%を目指し、その様相が確実視されるまで強力に緩和策を推し進める」と日銀白川総裁の弁であります。
  日銀は今まで景気や市況の悪化に受け身に終始して来たきりがありましたが、状況が好転しないままに袋小路に入り、望ましい決定打をうてにくい状況が続いていました。今年一月にアメリカの連邦準備制度理事会のバーナンキ議長が、インフル目標値を年二%に設定したことで、日本もようやく重い腰をあげ、具体的にインフレ目標値を設定し、これの実現に着手したということであります。受け身の姿勢から一転、攻めの金融緩和に一歩踏み出し、日銀としては勇気ある画期的決断であります。
   デフレ状況は、日本の少子高齢化社会の状況も、その大きな要因の一つであります。少子高齢化の社会は成熟しきった経済社会の裏返しでもあります。現在のこの特殊的、傾向的現象であるデフレスパイラルから依然と脱け出せないでいると、経済成長どころか、経済の収縮に拍車をかけ、世界経済の成長路線を模索し駆け上がろうとしている潮流から取り残される憂き目にあうこと必定です。成熟社会の軌道修正のきっかけは、たまたま東北大震災と符合するもので、将来の飛躍に備え体質改善、日本経済構造の画期的構造改革を行うチャンスでもあります。これは最近の予想しない超円高の特徴を示すもので、対GNP/国内総生産の二・四倍もの国債残高を持つ国にとってはいろいろな理由はあったにしても、国家破綻の数字であります。にも拘らず外国がひたすら円を買って出ている理由の一つには、構造改革を断行して将来をにらんだ日本経済の将来的姿、その在り方を織り込んでいく期待性であり、短期的には復興需要の内需拡大を買ってきているものでしょう。しかしこうし状況がいつまでも保障されているわけではありません。かっては三六〇円だったこともあります。
   現下の情勢を見るに、期待性が過剰に反映したことが次第に分かってきて、いつ反転して円安に振れていくとも限りません。76円台でしばらくもんでいるドル円相場ですが、ここまで来た円を売ってドルに切り替えていくことを今年になってから姿勢を改めていくよう促して、私は本欄でも云ってきております。2月に入って日本でも円売りドル買いの果敢な為替介入を実施しました。日本の株式投資についてもろうばい売りを避けて素人としての見解ですが、なんぴん買下がりでいいのではないかと、例えば一〇〇円そこそこのみずほ銀行を勧めてきましたが、今日の値付きは何と一二五円台にまで戻ってきています。アメリカ経済の底堅い回復を受けて、さらにEUの信用不安も次第に鍛錬されてくれば、さらにここにきて日銀のインフレ目標地の設定と一歩踏み込んだ画期的政策の発表で経済全体が明るい兆しを示してきているので、ドル円の為替相場も反転し、株式相場もようやく良好に回転していくでしょう。
  顧て、極論すれば、今までの様なデフレスパイラルを予想する国や、社会や、地域構成体は、概ね必然的に防備縮小に志向し、攻撃拡大の経済戦略を練ることが出来ないのです。このような社会では、子供を持つことに期待が持てずに家族単位も縮小を余儀なくされがちです。将来の所得に不安を抱える家計では、結婚はおろか結婚しても子供の養育に自信が持てないということで出産率の低下は当然の数値となってきます。将来の所得の増大の希望が満たされれば、家計に占める子供の養育費の支出が相対的に少なくなります。よって少子化に歯止めがかかり人口増加につながって活性化された社会構造に転換するきっかけをつかむことができるでしょう。即ち若年層の人口増加は生産力の増加に結び付く以前に消費を刺激し、結果、生産力の増加に寄与する好循環となります。人の成功のもとは運、根、鈍です。世の中も同じです。最後の鈍に注目して世渡りをこころえて行きましょう。余り利口過ぎてもいけません。常識にのっとった生活行動が肝心要で、先ずは 隗より始めよで、自らの率先実行が不可欠です。
   高度な国家的判断がいとも簡単な初歩的な理解と分析で全体が大きく動き出すこの真理を、大きな組織、高度な見地から何年たっても実行し得ないもどかしさを、いとも簡単に喝破できるこの矛盾は一体なんなのでしょうか。世の中を常識的に処理していきさえすれば、何の軋轢も生じないという理屈を理解できない未熟者が多いということでしょう。たとえばたかが人間の社会であります。常識を基準にすべての社会行動を律していくことが自然体のもたらす均衡点に到達できるはずです。調和のとれた均衡点であり時点であります。たとえば、不動産鑑定士が特定された不動産の鑑定を依頼されますが、如何に適正な鑑定価格を引き出すかに大きな労力を費やして、結果得られるのはその特定された不動産価格について一つの値段を引き出すことにあります。それを基準に不動産価格が決定され、売買取引が完了するわけであります。往々にして鑑定士はその結論が正しいか間違っているかを地元の不動産やに確認のため訪ねていきます。不動産屋は相場を、通常盛んに取引される事例に従って、大方の相場をはじき出して答えるでしょう。不動産屋には価格を決定させるための専門的な知識は持ち合わせていません。周辺の客観的な調査、分析を以て理論的組み立てを進めていく手立ては持ちえません。しかしその価格はおおむね売主、買主が合意して成立したもので正しいということができます。つまり常識が決定的な要因を果たすことがわかります。政治の世界でも経済の世界でも常識が通じないような環境に於いては立派な作業を果たしていくことができません。日銀は常識の世界に身を置いて考えるようになったのでしょう。政策遂行には常識が優先します。常識を度外視していたでは民意をくむこともできないし、民意を反映した作業はできません。即ち市場を理解しない結果となってしまいます。世の中では物事の正誤、善悪の決定はこれを常識を以て処理していけば波風立てず障害もなく、最大公約数を以て世の中を自然体で処理していくことができ、特に政治の世界では公明正大を以て、目線を国民に合わせていくことが大事であります。価値判断の基準は別に難しいことではなく口角泡を飛ばしながら喧々諤々、大言壮語して引き出すものでもなく、平々凡々ありきたりな常識で事を成し遂げていくことが肝要であります。仮に複雑な議論や理論を展開していったにしても価値観とか処世感からして平穏な常識に落ち着き収れんされていくものと思われます。而して人間社会にとって一番大切なことは、常識が生かされてしかも多様性を発揮していけるような社会が必要であります。
   物価の安定と貨幣価値の維持を務める日銀の役割は大事ですが、役所仕事同様、決断までの時間と手法はあまりにも遅々として機を逸することが多すぎます。何にもしないで静観することが信頼性につながると錯覚しているきらいがあります。いかにも威厳ぶって構えているのですが結局何もしないで生きているとしか思えません。日銀にかかわらず一般的に言って、庶民のために国民の公僕に反して、何もしない役人が増えてきては社会的機能は停滞麻痺し、その上国民の血税は無駄になり、世の中の改革改善、前進のために少しも役立たない結果となってしまいます。
   インフレ目標地を設定することの是非は二十年前から言われてきたことです。伝統的、閉鎖的な威厳維持のための体裁にうつつを抜かしている場合ではありません。激変する経済社会の変動に機動力を発揮する体制が必要でしょう。日銀の中立性を維持する手立てはいくらでもありますので、時に政府日銀一体となって強力な陣容を組むことも必要であります。日銀法の改正も含めて新しき時代にふさわしい運営の在り方を検討すべきではないでしょうか。やかましい議論ばかりでなく迅速を旨とするならばここでも常識の威力を発揮する余地は大きく残されています。枝葉の部分、枝葉末節はともかく、行き着く核心的選択は一つしかありません。
  EUの信用不安は依然として予断を許しませんが、ひところの収集不能を脱し事態の推移を見ながらギリシャへの支援策を実行しデフォルトの回避に向けた協議が功を奏することと思います。昨日の日銀の明確な政策の決断を見て今日の東京株式市場は久しぶりに活況を呈し二〇〇円以上の値上げりとなりました。若干円安に振れたのを好感し輸出関連株に買い戻しの注文が入ったようです。金融株にもようやく底打ちの気配が出てきました。昨年来、一〇〇円すれすれのみずほ銀行を安全資産として私は聞かれると奨めておりました。かっては三,四〇〇〇円していた金融株ですが、つい三年前も一万円、つまりその後の額面変更で一〇〇〇円していた株が最近ではなんと一〇〇円すれすれの十分の一の値段に落ちてしまっています。海外で活躍した居る格付け会社ではありませんが、それに振り回されている昨今の金融市場ですが、投資家にとってはこれも次第に不感症気味になってきており、国も株価も鍛錬されてきて、反騰する機会をうかがっているのではないでしょうか。格付け自体が人為的行為の所産であってみれば当たり前なことですが、市場経済に逆らった風評と云われかねない点もあることに注意して、一喜一憂してイライラせずおおらかに大目に見て、無視していくことの賢明さもあっていいのではないでしょうか。
  物価の安定がお題目の日銀が、インフレ率一パーセントを目標に今後の金融政策を強力かつ持続的に推進していくと宣言し、経済の活性化を目指して本格的に動き出したことは明るいニュースであり、政官財一丸となって国難を脱すべく努力し、我々も一企業家として協力して不景気の元凶であるデフレの悪夢から逃れ、早い時期に成長路線に搭乗し大空に向かって雲を突き、天空に飛翔したいものであります。   2月15日。


     ****************************

    天皇陛下の冠動脈手術の成功を祝す

   天皇陛下が18日東大病院にて心臓の冠動脈の手術を受けられ無事手術を終え、成功を収めることが出来ました。喜ばしき限りであります。順天堂大学と東京大学の連携による医師団によって高度の手術を受けられた陛下は術後の回復もよく、強靭な身体と意思を以て自らの回復を良好に促すことができたしるしであります。皇后もさぞご心配なことだったと、結果に安堵のことと推察しております。しばらくは安静に務めらて完全なご回復を念じてやみません。

      +

    すめらぎの胸の手術の間にそひていかばかりなる皇后のうち
    天皇の血みちの狭き心の臓手術をうけてつつがなきかな
    すめらぎの神技に近き外科手術うくる安きによろこびあへり
    血のすじの狭きをふさぎバイパスに置きかへいやすすめらぎの技
    すめらぎのこのくにたみの行くすゑをあんじたまへりあさなゆふなに
    被災地をみまへる旅につからかす天皇皇后の身とこころなる
                           
                     2月20日

   ++++++++++++++++++++++++++++++++++++

      陛下のその後

   陛下の心臓冠動脈の狭窄を防ぐため、バイパスを形成する手術はさる18日大成功を収めました。4時間に及ぶ大手術でしたが、78歳という高齢にもかかわらず、陛下の驚くべき強靭な心身の力に改めて感動を覚えています。
   術後の良好な経過と体力の回復も、快調に進んでいるものと推察しております。陛下のその後のご様子については公表や報道は伝わってきておりませんが、「たよりなきは良き報せなり」と申すように陛下の体調は順調なものと思い喜びにたえません。若干控えめな世間の動きに合わせ小生もこの欄にて通常の論陣を避け、激動する内外の経済、政治、社会一般のことに口角泡を飛ばすことも控え、専ら静かに世間の動静をうかがっていると、むしろ本当の事柄と姿が投影されてきて「休むも相場なり」の俗諺ながら、こころの平静さの大切なことも勉強する機会を得る結果となりました。月改まってまた拙見を披露して、市井からの,否、大所高所から正鵠を得た意見、警鐘、主張を発信していきます。
   先ずは、陛下の健康回復を一途に、尚、世の太平を祈る次第です。
                    
         2月29日。

 
     

平成24年2月6日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


copyright (c) Showa Economic Study Association サイトマップ プライバシーポリシー お問合せ