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Vol.11-01 謹賀新年
謹賀新年
国境なき経済成長のときこそ、足もとの実力の強化に努めましょう。
二〇一一年の年頭に当たり、益々のご健勝を祈念し、今年も宜しくお願い申し上げます。
初春のまさおの空にそびえたつ富士やま高く仰ぐ今朝かな
経営に知性と感性、徳性をいかし豊かな人となりしに
元旦
*
経済のグローバル化が一段と加速されつつあります。今年一年を通じて、その波は大きく且つ地球の隅々までに及んでいくはずであります。インターネットや携帯電話の爆発的な普及によって、情報の交換は、人々の間を障壁なく瞬時に伝播し往きわたります。それによって経済行為は、生産と消費の相互作用を通じながら、より正確に、より迅速に行われて、膨大な市場が形成されていくでしょう。この奔流を止める術を、人々も国家も持っていません。資源のない、少子高齢化の日本は、この流れに法(のっと)って身を賭(と)していく以外に道筋が拓けないのではないでしょうか。
即ち、当然の帰結として日本のやるべきことは高度な知と技を発揮して、加えるに潤沢な資本を生かして外国に門戸を解放し、同時に国際化のうねりに乗って積極的に海外に活路を見出し、そのための競争力を研磨していかなければなりません。大事なことは、国も、社会も、企業も、個人も、すべからく足もとの力を付けていくことです。特に、個人の資産形成を磐石なものとし、手堅い生き方を以て臨むべきであります。安易に頼りがちな借金依存の体質から脱却し自立すべきであります。利潤獲得のためのポジティーブな借金は別として、借金はあくまでマイナス要因として働くでしょう。
国も世界もリーマンショックを経て漸く回復の兆しが見えてきました。満を侍して経済の発進と拡大に努めたいところですが、生産も消費も、財務内容を吟味して、いたずらに借金に依存することのないように、自らを律して参加しなければなりません。借金依存の体質から脱却して、慎重に計画を立て、資金の必要順位を決めながら当意即妙の、機動性をもった経済運営に志すことではないでしょうか。
贅沢な話かもしれませんが、借金のない企業、借金のない家計に志して、よしんば計画性の乏しい借金は、末は夜逃げ同様の顛末になることを肝に銘じ、此処で改めて警鐘乱打して思い起こして見なければなりません。 元旦。
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中国の歳入百兆円台 ( 円換算)
二〇一〇年度は、中国を取り巻く話題が満載でした。今年もそれらを引き継いで問題解決に努力する情勢となりつつあります。世界経済もアメリカの景気回復が鮮明になってきたことで一縷の望みをかけた動きですが、一方、中国の経済の拡大路線に一喜一憂する状況であることには変りはありません。脚光を浴びる新興国の動きに期待を寄せる向きもありますが、依然として米・中巨大経済、軍事大国の動向によって大きく影響を受ける世界経済の一年となりそうであります。アメリカ経済の回復と、EUの諸国の一部金融不安の解消がと安定が、今年度の経済の動向を占うものとして注目されるところでしょう。
こうしたなかで日本経済も徐々に回復路線にのって、起死回生の年となるべく更なる躍進を期したいところであります。半年前から企業業績に回復基調が鮮明になってきており、少しでも内需拡大に結びついていくような、税収回復に寄与する情勢になってくれば、幸いであります。
昨年暮れに発表された中国の二〇一〇年度の全国財政収入、即ち歳入が、円換算で百兆円を突破する見通しであります。日本の歳入四十兆円に比べほぼ二倍の規模であります。税収が過去最大を挙げたことで、経済の拡大政策はさらに自信を持って進んでいくものと思われます。過熱をいかに食い止めていくかが当局の課題となりそうです。
中国では、日本の消費税に似た「増値税」、嗜好品などに課す「国内消費税」と云った間接税が、税収の全体の三分の一を占めています。日本の所得税、法人税の直接税とは違って、間接税の色合いが濃いものです。一九九四年の税制改正で、現在の増値税を取り入れました。所得税や法人税は、一般に所得の把握が難しいことが指摘されています。これに対し、企業の売り上げに応じて課税する間接税の方が微収しやすいというのが通説であります。いずれにしても中国の歳入規模が百兆円台に載せたことは、中国の経済発展に大きな自信と、更なる拡大に繋がっていくものと思われます。景気回復によって税収の増加を見込み、財政再建に繋がっていく一例として、大いに参考となる点であります。
加えて活発化する海外資源の権益獲得も見逃せません。既に四兆円を超えて、前年の三倍もの規模に拡大しています。今年も中国のこうした勢いはさらに加速されて行くに違いありません。だとすると石油、天然ガス、石炭、鉄鋼石を初めとして、世界の資源価格に大きな影響を与えていくことでしょう。穀物価格の高騰も始まっております。
遅れを取っている日本ですが、こうした世界の情勢に対応した一刻も早く独自の戦略を、政、官、民が一体となって、強力に打ち立てていく必要があります。 1月10日
正月雑感
目覚むれば都の空の澄みわたり時に初日の輝きて出ず
明け空のくまなくすみて一筋の飛行機雲のまろく曳きゆく
劇的に初日の昇るあとさきに目覚めし我の良き兆しかも
ひろびろと飛行機雲の曳く空に光る初日の昇りくるなり
恒例の箱根駅伝に勝負賭け選手ら闘志をむきだしにけり
ラクビーの早明戦の激突すチームの華麗な戦ひを見ぬ
若草の山を照らして昇りくる月煌々と空のまなかに
このとしの兆し良きかな初夢のめでたき事のあまた写りく
1月10日
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・ 白寿の森社長
当会会員で名門の近三商事株式会社の森社長が、昼すぎ風の如く、しかもさわやかな春風の如く、飄然とお見えになった。森社長は、こうした具合で時々お見えになることがある。ビジネス上お預りしている仕事の事もあるので、そのことでこられたのかと思うとそうではない。仕事には一切触れず、それはそれで又の機会にといった按配である。お見えになると、いつも楽しそうに世間話をされて、お帰りになるのが常である。
そうしたなかで小学生時代から恐らく中・高時代の,青春の横溢した時の思い出話に及んでくると、目が少年のようにかがやいてくる。更には、若い時の経験した苦労話にも、それとなく花をそえて尽きないものがある。名高い近江のご出身だけに、苦労といっても我々が考えるような、関東風のがさつい、江戸っぽい類のものではないかもしれない。語り口調も穏やかで、ゆったりしていて品がある。基本的に、白寿の社長は今以って、人から受けた恩義といったものを忘れずにおられることは、流石だなあと、その人となりに感銘を覚えずにはいられない。この世の人の縁と関わりを不思議に受け止めて、時に、ご自分の人生の越し方に触れて話されるような気がする。
若い時の思い出話は苦労があったにしても、今の若い人たちの苦労とは時に比較にならないものだと申される。しかしその片鱗すら窺い知れない程に、楽しく回想されるのである。豊富な人生体験にはずっしりとした重みがあって私の胸にひびくものだ。それは例えばサンセット・モームの短篇小説に似て軽妙洒脱であり、爽やかさである。
勿論、断片的にしか話されないが、つなげていったらさぞかし天衣無縫の躍如とした回想録が、勝れた長篇小説として執筆できるものかも知れない。そう思った私は尾崎士郎の「人生劇場」ではないが、明治、大正、昭和、平成と四世代にわたる波乱万丈の近代史と共に生きてきた生涯が、大作としていみじく世に出されるかも知れないと、森社長に申し上げたのである。社長は微笑みながらうなづいていらした。そしてお互いの会話がおわると靜かに席を立って、又風の如く帰られた。
森社長は三月七日生れである。しかも明治四十五年の生まれである。「ももせ」の前の「白寿」を迎えられた。ちなみに暦をめくって確かめてみた。再に事務局の中村君、そして友人の伊藤さんにも聞いてみた。すると明治四十五年は一九一二年である。今年は二〇一一年、文字通り百歳の一つ手前の九十九歳、目出度き「白寿」の年である。
光る肌のつや、上品な白髪、小柄ながら背すじのすっきり伸びた姿勢、杖をお持ちだが、使うこともなく、単なるアクセサリーである。「剛直にして、巧言令色、鮮きかな仁」の雰囲気で、例えは古いが「センスは英国的紳士」を偲ばせるに充分である。再に思うことは、「白寿」という字の穏健にして清冽な名にふさわしく、まさに不二の冨嶽をほうふつとさせるものがあって、慎ましやかな風情は云わずして圧倒されそうな威厳さが漂っている。ここまで人生を生き抜かれてこられると、年齢を飛び越えて、人間性そのものの姿を目の当たりにする感じである。静かな笑いは、凡人の和することのできないほどに魅力があり、豊かな心から出るほとばしりである。森社長の達者な様子を畏敬の念を以て話すと、妻は私に「お手本になっていいですね」と言うのである。その通りである。
わたしは、森社長がこれから先、日を追い、月をすぎ、歳を重ねるに、不思議とますます若返っていかれることを信じ、何かにつけて、お世話になりたいと願っている。
*
颯爽と白寿の森氏が見えたまふ背すじを伸ばしわれがオフィスに
1月17日
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加速する情報化時代
現在は情報化時代である。しかも大量、迅速が特徴である。この流れに遅れをとると生きてゆけない。ビジネスの現場や最先端を追う職場では、日々、寸時を追って新しい情報の収集に躍起となっている。日常化したIT検索で状況は刻々変り、人々は新しい瞬時の情報の収集に躍起である。ネットに向きあって動物のような目つきで、その人は顔つきまで変貌してくる感じである。勿論のこと頭の中は目まぐるしく働いている。情報に執りつかれたような毎日の行動で、考えようでは勘心の自分の命を酷使し、寿命を縮めているようで本末転倒の様相である。思い切ってこの情報化社会から一胆離れて、冷静になってみることも大切である。個人的には、自分自身を見つめて、自分を確かめてみる必要がある。それからでも遅くはない。
例えば、経済、経営社会においては、新技術、新商品の開発は、そのこと事態はもとより、即その会社の株価に影響し、お金の流れを変え、さらには世の中に大きなインパクトを与える。それと同じように世界の出来事はネットで瞬時に広がって、人々の行動を促す。経済、科学の分野に止まらず広く一般的な分野に、近くにはチュニジアに起きた政治的変化のように、巷の片隅に起きた一個人の抗議行動がデモにつながり、国民の日頃抱いていた不満がいっきに膨れ上がって暴動にまで発展し、政府の転覆に繋がった。そして、その影響は同じような国体を抱える独裁政権の国にまで影響を及ぼしている。
数日前に起きたエジプトの暴動も、タイミングはその影響によるもので、三十年続いたムバラク政権を揺さぶっている。目下のところ、退陣による収束しか解決の見込みがない。無理をすると国論を二分して、勢力争いは直ちに内乱にまで発展していってしまうだろう。同じような事例で体制の改善を見ないまま安易に過ぎて、今まで利益を貪ってきた周辺の独裁政治の国々は戦々兢々である。
独裁政治は箍が一旦緩むと、瓦解は激しい。長年かけて築いてきた体制は、一部の有産階級と、大多数の貧困層の社会構造であり、前者と結託した軍部の引き締めで維持されてきている。相互は利権で硬く結ばれている。力のない民衆は体制に立ち向かうことは出来ない。長いこと続いてきている強権政治で民衆は無知蒙昧化されて飼いならされてきているため、覚醒に乏しい状況であり環境である。しかしこれとて限界がある。地球を取り巻くインターネットの普及で、無知蒙昧な民衆は、高度な教育知識を瞬時に伝授され、等しく権利を有する機会を与えられ、之を行使する状況におかれてきている。
技術は日進月歩であり、経済は益々範囲を広げて生活様式を遅々としてでも変えていくのが時間的経過であり歴史である。ましてや近年ネットによる情報化も手伝って、閉塞を強いられている地域や国々の人々にも覚醒の機会を与えられてくる。人々は自分の権利と自由をカミから付与されたものと自覚し、愛国心の何たるかを求めると同じように、個人の自由な表現と行動を以て社会生活に臨もうとするであろう。良識あるものは、こうした動向を熱烈に支持していかなければ、これからの未来に希望はない。
独裁と専制をむさぼり、国民を搾取して止まない為政者、国体は、今戦々兢々の心境に違いない。権勢のほしいままにある時は、権力と欲望が如何に虚しいものであるかがわからないでいる。その末路は、悲惨であり、絶望である。近くにはルーマニアの独裁者のチャウチェスクの末路を見ることができる。
チュニジアに起きた一人の抗議が小さなデモの発端となり、ネットを通じて大きな抗議デモに発展した。民衆が日頃抱いていた不満が爆発して、独裁政治の転覆に繋がっていった過程には、暴力や武力ではなく、くまなく行き渡って制御不能となった、民衆の情報収集のネット化が大きな原動力となっていることに気がつくのである。時代の大きなうねりである。
チュニジアの大統領の失脚す民衆の蜂起に末の逃亡
強権の独裁政治に泣く民の貧しきゆへに従ひていく
民衆を力と富とで抑へしも独裁の身の末路あはれに
チュニジアの独裁政権の崩壊す動きにおびゆおなじ国々
民衆の自由と権利の獲得に立つジャスミンの風のそよぐ日
弾圧に屈せず自由を手におさむ市民のソフトの武器を楯とし
ジャスミンの改革と呼ぶチュニジアに民に栄えの先にあれかし
1月25日
平成23年1月5日
社団法人 昭和経済会
理事長