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Vol.06-14 高木新二郎氏(産業再生機構・委員長)のお話
日本経済に未曽有の混乱と不況をもたらしたバブル経済の崩壊は、十五年の歳月を経てようやく大胆な構造改革の成果を通じて経済回復の曙光を得るにいたりました。即ち、デフレ経済から脱却を試みて経済の再生と景気回復へ向かいつつあります。
その間の企業の倒産、不良債権の発生は、多くの国民の苦渋を強いり、悪しき経済の状況は有史以来のものでした。国民経済の損失は測り知れません。
10兆円の企業再生の資金を以って企業、事業の再生と経済の回復に挑んだ高木氏は、その第一線に立って英知と、辣腕を振い、日本経済の再生をはかる象徴的役割を果たしてきました。謂うなれば、日本経済を混乱と不況から救出した立役者です。
その高木氏が、渾身こめて、世の中の変化と、これからの企業の勝敗と進路を見通してお話をして下さいます。題して 「バブルの前と後で世の中はどう変わったか」 です。
平成18年8月24日
社団法人 昭和経済会
理事長
Vol.06-13 企業の敵対的買収
最近のM&A(企業の買収・合併)について、就中、「敵対的買収」について優劣、是非の議論が盛んであります。
日本企業の保守的、伝統的な考え方からすると、「敵対的買収」は、ともすると忌避される傾向があります。しかしながら、よくよく考えて見ますと、次のような結論が引き出されると思われます。即ち、それがたとえ「敵対的買収」だろうと、「好意的買収」であろうとM&Aの意義は、
(1)企業間の熾烈な競争市場においては、企業統治を高めるものであること
(2)グローバル化の時代では、外国からの日本企業に対する敵対的買収を仕掛けられる可能性は、ますます高まってきている
ということであります。
こうした現実の動向を見る限り、M&Aを、単に日本的な狭隘な視点から見ていると、大きな過ちを犯しかねません。それはわが国の国益に反することにもなります。
米国における1980年代の敵対的買収は、概ね企業価値を高めるのに大きくプラスしました。即ち、成熟産業の非効率企業のリストラクチャリングを大きく促して、経済社会の活性化に大きく役立ったのであります。
M&Aについて最も魅力的なのは、例えば次のような事例において実現可能であります。対象企業が保有する資産を有効に活用したり、また規制に保護されて安住し、企業の持つ能力を充分に発揮し得ないでいる企業、経営者の堕落と怠慢で企業のガバナンスが欠落して、企業の発展を阻害しているもの、又優秀な技術、設備を保有しながら、生産工程で非効率的な運用を行っている企業などであります。このような企業に対し、資金を使ってこれを実質支配し、改革、改善を図り、企業価値をよりいっそう目的に沿って、高めていくことが出来ることであります。即ち、M&Aは、こうした企業の覚醒を促し、又、M&Aを成功させることによって経営規模を拡大して、効率化を狙う点に魅力が生まれてきます。
今回の王子製紙の例に見るように、北越製紙にかけたTOBは敵対的買収の顕著なものであります。
しかしこのこと自体は余り問題ではありません。将来を大観してM&Aに相乗効果があるのか、結果、企業の効率改善に資するのか、買収効果が株主に有利に働いて、その後の企業の実態的価値にどのように寄与し、反映されるのかが重要であります。今の株式市場においても、こうした動きに対応したハード面とソフト面との両面から、適正且つ効率的な改善策を講じるべきであります。
たまたま打ち出された王子製紙の敵対的な買収に気付いて、北越製紙の幹部に緊張感が走りました。時と場合によっては、企業家の脇の甘さも指摘され、無能な経営者の交替も余儀なくされること必定であります。目先の防衛策に走った経営者は、大きく見れば市場の世界的展開について判断を見誤ったと言えることも出来ましょう。大きく業界再編成を惹起せしめる、きっかけでもあるからです。これは株主にとって、看過できえない事態にもなります。これからは予想もしない大型の企業買収も可能となってきます。これは時代的潮流と見なければなりません。世界的に大量な資金の流通で、例えば、新日鉄や東京電力も、その例外ではありません。
敵対的買収か、友好的買収かは、単なる情緒的発想であります。株主は冷静に事態を見て判断し、自らの企業価値を有利に形成していかねばなりません。これこそが均衡ある、私たち市民社会の公正、且つ効率的な経済社会構造の構築に欠かせないものであります。
平成18年8月15日
社団法人 昭和経済会
理事長
Vol.06-12 日銀の弾力的な金利政策を
今年三月に、日銀による金融の量的緩和が5年ぶりに解除された後、7月にはゼロ金利政策が解除されました。
金融政策は「金利のある正常な市場」に戻ってきました。理想的な金利水準は、常に中立的な水準が望ましいことはいうまでもないことであります。
そこで理想的な、中立的な金利水準とは、どんな意味合いを持っているのでしょうか。例えば、それは平穏でバランスの取れた経済機構を維持する金利だと位置付けてもいいでしょう。それは、経済が過熱にもならず、停滞にもならず、良好な経済状況を維持し、誘導する金利水準であります。
一国の潜在成長率が仮に2パーセントとし、望ましいインフレ率を0・5パーセントとすると、2・5パーセントが、経済全体を正常化させて、発展させていく数値であると定義つけられます。経済実態に見合った適正な金利水準を維持することは、即、持続的な経済成長を期待する上で大切な条件であります。
今、日本経済はバラツキはあるものの、、ようやくデフレから脱却して、正常な経済への力強い回復軌道に乗りつつあります。このように、国内経済が正常化へ進んでいく先には、将来的に日銀の金利政策は利上げに動いていく可能性があります。しかしながら、日本経済の改善が著しいといっても、長期停滞からの病み上がりの状態であることに留意すべきであります。
同時に、日本経済の動向も、問題は今後の世界経済の動向にかかっています。今の世界経済を大きく牽引していく役割を果たしているのは、アメリカ経済です。その好調な企業業績に裏付けられているアメリカ経済の動向は、後半の減速が懸念されてきています。即ち、一つは最近の原油価格の高騰と、二つには、二年に及ぶ連銀の金利の利上げの影響が、徐々にボディーブローとなってきていることです。この際立った二つの理由で、好調なアメリカ国内の企業業績が、頭打ちになるのではないかと言うことが懸念されてきております。インフレ下での景気停滞が心配であります。
又日を追って激化するイスラエルとレバノンとの交戦で、さらに中東情勢に暗雲が立ち込めてきております。これらが世界経済に与える影響は無視できません。
ゼロ金利解除を宣言した日銀の金利政策は、これからは益々その舵取りが重要であります。単に功を急いで、このまま利上げ視野に偏重するようなことはあってはなりません。回復軌道に乗った日本経済を、持続的に発展させるためには、機を見るに敏、金利政策は弾力的に運営していかねばならず、時には後退の判断と決意も必要であります。
平成18年8月2日
社団法人 昭和経済会
理事長
Vol.06-11 ホームページリニューアルに際して
人間社会は今日まで幾多の歴史的試練を経てその存続を得てきました。
その間、私達は経済社会の中で、自然科学への洞察は驚きをもってこれに望み、文化科学への触発は閃きを以って推移してきています。科学技術の進歩と開発は人間の英知をもってこれに臨み、文化科学の振興は人間の情操をもって限りなく高めてゆかねばなりません。
いかなる歴史の発展過程においても、常に人間の尊厳をうたいあげ、自由と平和が約束される豊かな人間社会が私達の理想であり、実践であります。
平成16年に創立70周年を迎えた昭和経済会は、伝統を重んじ、時代の変化に敏感に対処しつつ、この普遍的な理想のもとに、日常の企業経営と経済活動を通じて、さらに公私経済の発展と推移に役立つ啓発、協力、親睦の団体として、未来永劫に亙り、その使命を果たしていく所存であります。
平成18年8月1日
社団法人 昭和経済会
理事長