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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.8-02 アメリカFF0.75利下げ

  米国でサブプライム問題が発生した昨年8月、私はすぐさま事態の緊迫性を感じて発信し、これをきっかけとして世界的な金融不安が拡大し、世界不況の到来の兆しがあると即座に論評し、各位に警告を発しました。
      昭和経済、九月一日発行の巻頭言に於いても警戒の手をゆるめないよう注意を促し、そして次の和歌を詠んで会員各位に印象づけたつもりでありました。
      
        問題のにわかに浮ぶサブプライム・ローンは起す金融の危機

        米国発金融市場に荒波の立ち恐慌のきざし走りぬ

    グローバル化の経済下で、昨年8月の当日、世界の株式市場はニューヨーク発株式暴落に始まり、繰り返す荒い乱高下に見舞われ、その後の株式市場の低迷は、経済悪化の連鎖反応を暗示するものでありました。ちなみに今日のニューヨーク・ダウは高値から二OOOドル強の下げ幅を演じて15パーセントの下落率となっています。世界から外されて凋落一途の東京株式も論外ではなく、今までのだらしない動きの上に、なんと六,000円近くも暴落して追随しております。下落率30パーセントというものです。改革を怠り、無為無策の日本は、この点についても悪名高く世界一でしょう。
    世界は今、ニューヨーク発の世界同時・株暴落の連鎖反応に見舞われております。これが今後の実体経済に及ぼす影響は無視できず、大きな懸念材料であります。各国当局は、それなりの対策を以って協調し、金融市場の混乱と、世界経済の後退を防ぐ姿勢を取ってきておりますが、もとより楽観は許されず、只今現在、100パーセント確信を以ってこれを防ぐ政策は見当たりません。目下のところ試行錯誤を試みて、その効果の反応を見るしかありませんが、過剰な不安人気を増幅せしめることは絶対にこれを回避しなければなりません。
      昨日(22日)、米連邦準備理事会は緊急理事会を開き、FF金利を0・75パーセント引下げました。先手を打ったとは云え、事態の深刻さをまざまざと見せつけるものであります。
   ① 米経済の見通しが悪化し、景気の下振れのリスクが高まった。
   ② 金融市場の悪化。
   ③ 住宅市場の長期低迷と、雇用の悪化
などが主な理由で、これが経済全体に及ぼす懸念が大であることを指摘しています。状況次第では、新たな追加措置を講ずると云っておりますが、既に問題発生以来、日、米、欧の株価の急落は著しく、不安な将来を見通して予断は許されません。米国経済の後退は、直ちに全世界に波及することは勿論のことであります。新興国の経済発展の力がこれをカバーすると云う楽観論も以前からかなりありますが、現実的な見解とは程遠いものであり、事態はもっと深刻であります。
    巨大なアメリカ経済の動向次第では、元気の良い中国、インドなどひとたまりもなく、その巨大な波に直ちに呑みこまれてしまうことは必定です。今後とも大きな注意が必要です。米連邦準備理事会の緊急且つ大幅な利下げ決定は、遅きに逸した感もいがめませんが、これを効果ならしめるには更なる追加措置が求められます。アメリカが景気後退に入って、それが引き金となって、世界が不況へ突入しようとしているのに対し、水際で懸命に阻止しようとしているFRBの姿が浮かんで参ります。
    政府による大型の景気対策も必要となるでしょう。世界の各国が足並みをそろえて、これに協調、追随して、有効な景気刺激措置を迅速にとることによって行き過ぎた不安心理を払拭し、世界的株式の連鎖的暴落を防ぐ必要があります。          1月22日。

平成20年1月23日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾

Vol.8-01 謹賀新年



      謹賀新年
 
まほろばの富士の高嶺の白雪の輝きそむる初春の朝
 
     世界が目まぐるしく動く中、昨年はサブプライム問題で経済が激しく揺れ動きました。加えて、石油価格の高騰であります。そして、大きく政治問題化になった深刻な地球温暖化であります。これらの課題は新年にもちこされた案件であり、迅速、具体的に解決しなければなりませんが、いづれも複雑にからみあって難解な問題であります。しかし人間の、弛まぬ英知の発揚と実施によって問題の解決を見、収束させなければなりません。幸い各国が連携、連帯して国際的な動きに出て来ていることは幸いであります。
     ちなみにオイルマネーとして、金がたまっては余り好ましくない国々に莫大な金が集中してしまい、その使い道に各種のファンドが選ばれ、それが投資資金として世界のマーケットに奔流し、経済がバランスを失ってしまっているのです。何事もバランスを失った先は、惨めであります。そうならないように世界が一体となって、問題解決に対処しなければなりません。
     国内での地域の対立抗争、国家間の対立抗争、宗教間の対立抗争もそうであります。小異を捨てて大同に就く、おおらかな考えをもった指導者の集まりと、話し合いを通じた相互理解が欠かせません。古今東西、同じようなことを飽きずに繰り返してきた人類ですが、近時、我々を取り巻く状況は、過去にその例を見ないほどに、全てに於いて大変化を起こしつつあります。地球温暖化が云われてから既に久しく、我々を取り巻く自然環境が、我々の手で制御し得ないような状況に至ってからでは、もはや手遅れなのであります。改善のために残された時間は、そう多くは無いように思われます。我々の敏速な思考と行動を以って、自らの大変革を決心しなければならない時に来ております。

      初(そ)め書きに一の一字を太く書きこころおもひを貫きゆかん

     これは以前に、新年を寿ぎ迎える一年に臨んで、自分の心構えを短歌に記して詠んだものですが、今でも私にとって好きな一首であります。書き初めは、古くからお正月に書く習わしがあって、昔は家庭でも家族揃って書くことがお正月の楽しい行事の一つでもありました。文房四宝(すずり、墨、筆、和紙)を取り出して、墨をすって筆にたっぷりと浸み込ませ、勢いにまかせて太く、一の字を書いてみます。すると気宇壮大な気概に溢れてきます。いつも新年を迎える時に、この和歌を思い出しては、その感慨にふけることは些細(ささい)なことですが、私自身幸せな証拠だと感謝しています。勿論、このホームページをご覧の皆さんにとっても、内容はそれぞれ豊かにお持ちのことですが、同じように新たな希望に満ちた心境を以って、新しき年に臨もうではありませんか。希望を抱き、計画を描いて、初志貫徹とでも云いたいところであります。

      掛軸に上より太く書きおろし春をことほぐ那智の滝かな

     これも書き初めにちなんで詠んだ、何十首かのうちの一首です。いろいろな筆を使って心のままに墨書をたしなむことも、精神修養の一つとして大切なことでしょう。文房四宝のたしなみは、単に懐古趣味に耽るというのではなく、慌しい現代生活のなかで、日常的に高尚な趣味至芸に身を置いて修養の道に励むことも、生き甲斐の一つと覚えることでしょう。
     拙宅では、お正月の家の床の間には、毎年決まった掛け軸をかけることにしています。それは秋竹道人、会津八一が詠んだ和歌の揮毫の掛け軸であります。

      おほらかにもろてのゆびをひらかせておほきほとけはあまたらしたり

何と荘厳な一首でありましょう。

     四十年前のことになりますが、当時の日本橋白木屋デパートで催された「会津八一没後十年」を追悼して、八一の作品の展示会が初めて中央公論社の主催でありました。約50点ほどの傑出した作品が展覧されて圧巻でありました。同時に会場では、即売会がありました。「おほらかに…  」の和歌は、そのときに私が求めた一幅の掛け軸であります。八一が、奈良東大寺の大仏を詠んだ一首で、優雅な筆に書き置いたもので、八一の代表的な作品となっています。
      親愛なる各位に置かれましても、毎年、あらたまの春を迎えて心機一転、色々な希望や計画を持って、この一年を過していこうと気概に燃えていることと存じます。先ずは健康第一として、日頃の努力研鑽に勤めていただき、実り豊かな年とならんことを、切に念願いたしております。

       精神と肉体を強く堅持して世の荒波を超えていく日々

       心身の健康を武器に前進す先に希望と夢を抱きつ
 
                                  平成二十年元旦             

平成20年1月9日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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