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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.08-04 春分の日

      春分の日、朝から終日、しとしとと雨が降り続きました。休日をあてこんで行楽に出ようと計画していた人にとっては、出鼻をくじかれた格好となってしまいました。行楽に出た人も楽しみが半減して、当てがはずれたに違いありません。花の季節に見舞われ勝ちな、天候のいたずらでもあります。
      世の中を見わたすと、当欄にて深刻な問題として繰り返し論評してきておりますように、米国発のサブプライム問題が世界に飛び火して、世界経済を混乱させて既に八ヶ月間が経過しています。 FRBを初め金融当局が懸命の対策を矢継ぎ早に打ち出しておりますが、現状の進行がそれよりも早く、打ち出された政策が後手後手に廻ってしまっていることは否めません。一刻も早く金融市場を正常化させようと、当局も懸命の対応を以って臨んでいますが、決め手を欠いているのが実情です。とりわけアメリカの金融市場と株式市場が落ち着かないでいると、世界経済が、もろに荒波を受けてきて、この先、更に暗雲立ち込める様相です。不退転の決意を持って事態の打開に努力してもらいたいと思います。やはり公的資金の出動も要請されることとなりましょう。やるとすれば早いに越したことはありません。
     金融商品のバブルがはじけて、銀行や証券会社の破綻が現実の問題となった以上、打つ手はせばまれてきております。かつての日本経済のバブルの終焉と崩壊、その後の長きにわたった経済の停滞の映像は、直ちに同様の道のアメリカ版となりつつある感じがいたします。あの時は、日本一国の問題として世界経済に波及するといったことではありませんでしたし、しかも当初打ち出さたれた金融機関からの貸し出し総量規制が、その後もそのまま野放図に放置されたままに、改善のタイミングを失い、いたずらに経済破壊を続けたきた当局の怠惰な政策の、最も拙劣、忌むべき結果をもたらし、謂うところの「失われた十年」とまで国家、国民を自戒、自虐、揶揄して謂われたのであります。
     けだし、今日のように経済のグローバル化、フラット化が進んで、ましてや経済超大国のアメリカからの発信ということになれば、状況と、与える影響は世界に及び、事態は甚大、且つ深刻であります。日本がかって経験した時の状況と今とでは、格段の相違であります。その影響は一国にとどまらず、直ちに世界に波及してきております。    
     しかしながら今のアメリカ経済の状況が、かっての日本が踏んできた経済状況の内容と酷似している以上、打つべき手は用意されているものと認識すべきであります。対策の出動はより迅速であることが求められます。今は、現実の悪への流動化が加速しているので、世界経済がビッグバンになって収拾がつかなくなる場合も無きにしも非ずの状況です。明確な政策の意志決定はもとより、実行が急務であります。かつて日本が行った公的資金の導入も素早く行って救済対策とし、傷手をこれ以上深めないことが重要であります。傷口に膏薬をはってる時はすでに過ぎてしまったとものと判断すべきです。対策の実行は一国だけでなく、多国間の一致した協力体制を敷き、増幅する不安心理を一挙に払拭すべきであります。経済の振れは、将来の予見に対する心理的要素が大きく左右させるからであります。
     過去八ヶ月に及び、株式市場は事態の深刻さを織り込みながら、激しい上下の振幅を繰り返し来ているので、株価水準も全般に、かなりこねれて固まってきております。これ以上の下げは、事態の劇的急変でもない限り暗黒の事態は回避できるのではないでしょうか。過度の楽観は禁物ですが、過度の悲観も慎重であるべきと思います。ここまで来てかなり鍛錬された相場ですが、打ち返すときの力は相当なものがあろうと推測されます。アブダビの王様や、支援に出ている世界の政府系投資ファンドなどは、大きな儲けを出すのではないでしょうか。
     謂うまでもなく、アメリカに見るバブル崩壊の兆しは、住宅市場の価格急落に原因しています。住宅購入に生じた消費者の多額の債権は、これが証券化されて銀行、証券会社、各種ファンドを初めとして巨大な金融市場に購入され、運用されています。今回、土地を含めて住宅市場の価格急落は、こうした債権価格の急落を招き、各社とも巨大な損失を受けた結果、惹起されたものであります。証券化されたサブプライム・ローンの債権は、国際金融市場に捕捉できないほどに超大量に流通していましたが、これらが全て無価値に等しい状況となっていく様相であるので、事態の深刻さが判ります。大量の赤字を抱えたベアースターンズが破綻寸前に買収されましたが、50ドルの株価は、一夜にしてタダ同然の2ドルでJPモルガン・チェイスに買い取られバンクラプトを免れました。こうした金融不安と混乱は、アメリカの、住宅市場の回復する兆しがない限り根本的な解決には繋がらないものと判断されます。予断は許されませんが、焦眉の点は、中古住宅の在庫減少と、新規住宅着工件数の上向き傾向の兆しを確認できるかどうかにかかっているものと思われます。それもこれから打ち出される住宅市場へのてこ入れ如何にかかっていますが、根本的な救済の道を有効ならしめる決定打が望まれます。原因が分かっているので日本と違って迅速且つ賢明、大胆なアメリカの当局のこと、早晩回復の道は、そう遠くはないでしょう。希望を持って大局を掴むことが必要であります。

     翻って、日本の現状はどうでしょうか。世界がこうした緊迫した状況にもかかわらず、日本の政治はもぬけのカラ同様の状態であることは誠に遺憾なことです。今さら衆参ねじれ国会だからでは理由になりません。参院は選挙の結果、民意が政治に反映されたもので、その意思決定は尊重されなければなりません。政治が変革の道を着実に歩んでいる証拠であります。変革にはある種の混乱も生じることは止むを得ないことです。それを克服していくことが政治に望まれます。その認識の欠如が今の国会、特に自民党の旧態然とした姿勢に覗えて仕方がありません。そのことが原因で、政治が本来の機能を果し得ず、日銀総裁も決まらぬままに時間切れとなり、席は空白のままとは何たることでしょうか.
道路特定財源の一般財源への切り換えもなしえず、これも時間切れの様相であります。これも大幅に見直すか、若しくは廃止すべきものでしょう。ねじれ国会での混乱が続きますが、これも変革の途上での痛みであります。改革と前進へ真剣になって政治の努力がなされていればいいのですが、自民党諸君も愚鈍で、国会の大変化が進んでいることに気付かずに、衆参で多数を占めていたときの習癖から脱出できずに惰性に安住し、未だに事態の変化を認識しえずにいるのです。
     世界がドンドン変わっていくのに、知恵と発想の転換に欠けた政治が、こうして未だに続いている現状は嘆かわしき限りであります。日銀総裁が不在であることによって日本の威信低下は甚しく、これからの国際社会での行動範囲も、狭められてきて発言の権威は著しく低下していまうでしょう。。誠に以って醜態であります。福田内閣の政策遂行の拙劣さと、無能さをまざまざと見せつけられ、慙愧に耐えません。

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春分の日、拙宅では近所に巡回してきた廃品回収業者に頼んで、二階に置いてあるリコーの業務用の大型コピー機を、一万四千円を支払って引き取ってもらいました。業者は仲間の助っ人を呼んで持ち出してくれましたが、私は、その後のガラクタを整理、撤去して、自分の胸に秘めていた三十年来の模様替えの達成に、思わぬ喜びを味わったのであります。この部屋は二十畳程で寝室を兼ねておりますが、半分がリコー機周辺の設備で占拠れていました。古いので故障が度々でついに使用不能となってしまいました。私にとっては長い間役立たずのしろもので、そこに置かれて在ること自体が限りなく憂鬱でありました。
     普請した当時から北側に大きな窓があって、ここからの眺めは筆致をしのぐ豊かさと、美しさと、静けさがありましたので、この景観を塞いでいる厄介ものの大きな荷物を早く取り払い、私が自由に使いたいと思っていたのです。農業と造園を営む裏隣りの小池さん、鈴木さん宅の南には広い庭があり、四季を通じて素晴しい変化を見せてくれ、拙宅の北窓から折々の風情を楽しむことが出来ます。外の景色は、まるで軽井沢にいるようだと、満足して悦に入っています。昔から、この場所を私自身のスペースとして所持したかったのですが、今回ようやく長年の念願を果たすことが出来ました。些細なことですが、考察、と判断と、実行が、それぞれ見事にタイミングが合って満足しております。長かった思惑の時間、しかしタイミングを掴んで取った判断と、素早い実行がみのって、今日一日の業蹟は顕著なもので満足しております。
     もともと三枚の畳が敷いてあり、段違えの床の間まで備えた開け放しの部屋でしたので、このたびの処置で茶室のような雰囲気すら感じてきました。長い年月が過ぎて色あせて、古びた畳と壁は、そのまま侘び、寂びをかもして、茶道の道にも通じるものだと、ひとり合点しております。庭に面した南のカーテンと、北のカーテンを掛けると、このほの暗い間取りから、北窓の外に揺らぐ光と、空と、樹木の陰影が尚味わい深く、目にも気持ち良く映ります。畳表を替え、壁を張り替えたらという妻の提言を、私はあえて退けました。広々とした裏の庭の様子を、北窓から少しばかり離れてみていると、心の世界が又大きく広がっていくような、なんともいえぬ快感を覚えてきました。
     整理をしていたとき時、妻がアルバムの中から分厚い一冊を持ち出してきました。何年ぶりかに見る、子供たちの小さい頃の写真であります。拙宅の庭の桜が満開に咲いている下で、母も子供たちの仲間に入っています。私のふるさとの浅草三社祭で、お神輿をみんなと担ぐ父もいました。楽しい思い出のアルバムを見ていて飽きなかったこの日、父と母の若かりし頃の写真を見て、ふりかえり偲ぶことができたのは、お彼岸の中日にあたり、とうの昔にこの世を去ってしまった勇ましい父と、やさしい母の供養にもつながるものなのかも知れないと、そんな不思議な思いがしたのであります。

平成20年3月24日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾

vol1.8-03 注目!三原淳雄氏の講演

                                                                    

三寒四温、そして春一番、日増しに空の光が明るくなってきました。サブプライム・ローン問題で、株式・金融マーケットは、激震のあとの余震に見舞われ連日のように乱高下を繰り返しています。当局による迅速な対応が打ち出されていますが、はっきりとした決め手を欠き困惑の色を隠せません。中には世界恐慌に突入するのではないかと憂慮するものも出てきております。今までに打ち出されてきた各種の金融対策が、時間と共にその効果が出てくるものと思われますが、現実の混乱が先行して行ってしまうと、打ち出した対策が結果において,後手後手に廻ってしまう危惧すらあります。
       アメリカ経済の減速と、景気後退は、直ちに全世界にその影響が及びます。世界経済の停滞を回避するためにも、緊密な国際協調が必要であります。景気回復を目指すFRBの金利の引き下げが、ドル安をもたらし、投機資金の原油高に拍車を掛け、ひいては物価高につながり、消費マインドを冷やしてさらに景気を後退させるという悪循環にある今の経済状態に、ジレンマを感じて舵取りが難しい状況ですが、賢明で素早い大胆な対策を打ち出すことによって、マーケットを覆う不信の念を払拭する必要があります。投機的な資金の狼藉を排除するためにも、場合によっては、公的資金の導入も、その視野に含まれてくることも考えられます。
      マーケットもこうした状況に次第に冷静さを取り戻し、平常な状態に立ち返り、市場価格も次第に徐々に、こなれて行って、この先穏やかな動きに収まって行くことを期待しています。そして、一般の人々も、投資家も、暗澹とした不安心理から脱却して、経済が正常なルートに立ち直ってくれることを切望します。さすれば投機的原油高も需給関係に結びついた価格に近ずいていくものと期待しております。
       4月8日には、穏健のなかにも炯眼をもって、時代の流れを見つめる経済評論家の三原淳雄氏をお招きして、下記の演題にてお話を聞くことに決まりました。荒れ狂う世界の金融・株式の重大な時局を迎えておりますが、慧眼を持って知られる、三原淳雄氏のお話から、内外経済の状況の洞察と、将来を心眼し、以って状況を的確に克服して、将来への道筋を得るべく期待しております。
      三原氏は、長年にわたり沢山の著書を執筆、発刊されてきていますが、最近、鋭い言葉を以って正直に 「金持ちいじめは国を滅ぼす」 という本を講談社からお出しになりました。正鵠を得て、至極最もなお話しですが、この当たり前なことが、なかなかと判ってもらえないのが世の中の常であります。正直に、率直に、現実をありのままに、そして真実を説明し、本質に肉迫し、これを喝破する勇気ある評論家がいません。おしなべて、都合の悪いことは言いたがらず、綺麗ごとに終始し、人の気を惹いて付和雷同の類が多いのが世の中であります。
       政治家、官僚、そしてもしかすると消費者自身たちが然り、反省する立場かも知れません。お金は貯まるところにたまり、集まるところに集まり、のち、巡りめぐって自然に自分達のところに帰ってくるという理屈と、仕組み、それを確りと理解し認識することこそが大切です。
     当日は、大胆なご発言と、ご提言、そして私たちの意識改革と行動について、お話をしていただきます。直言居士の三原氏は、「金持ち 反対」 なんて寝言は地獄への道、とはっきりとずばり云い切っておられます。私も、そうそうお金は持ち合わせませんが、それはそれとして、考え方、思慮に於いて全く同感で、大賛成です。一様にグローバル化といってはいますが、日本はその現実に遅れをとっているのが実情で、世界の流れにについていけないで汲々としています。改革から逆戻りしかねない、旧態然とした日本の現状は嘆かわしきものです。真理は単純にして平凡である、の謂わんとするところであります。
    講演会でのお話は題して 、「大転換期の発想法」 、「変わる世界・変れぬ日本」 です。

平成20年3月11日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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