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Vol.10-06 鳩山首相の辞任 それまでの政治状況 , サッカー日本初勝利
鳩山さんの退陣
「 あっとおどろく為五郎・・・・ 」ではありませんが、寸前まで普天間基地の問題で沖縄に行ったりし、口蹄疫の問題で宮崎県にいったりして問題解決に目まぐるしく動いていた鳩山さんが、一夜明けたら辞任表明の両院議員総会の壇上に立っていました。自分だけでなく、責任を取って小沢幹事長も辞任して欲しいと申し上げて、小沢さんに 「わかった」 と云わしめたと一方的に発表したのです。道ずれにした「無理心中」 とでも言いましょうか。事を、はっきり清算して潔さを感じました.
民主党鳩山政権の成果は、自民党からの政権を奪回したと言う事そのものであり、加えて、事業仕分けで見せた税金の無駄使いを大胆、明白な手法で国民の前に白日のもとに示してくれたことでしょう。そして、今回, 「 政治とかね 」の温床のドンとして悪名をほしいままに、いつまでも政治不信の源流であった小沢さんを伴ずれにして、役職から切り捨てたことでしょう。鳩山さんは実にこの難解な、大事業を国民の前にやってのけてくれました。見事であり、あっ晴れであります。小沢さんは、ほぼ天下を手中に収めながら政治家として最大の欠点である権力志向、利権志向から抜け出すことが出来なかった惜しい人物でありました。一名、壊しやの異名を持って行動をほしいままにし、常に陰の人物として国民の目に映ってきました。残念で、厳しいかもしれませんが学問と、志の欠如であります。
政権与党内とは言いながら、小沢さんに媚びへつらう、へっぴり腰の代議士連中も所詮、廊下とんびの箸にも棒にもかからぬ三文役者に過ぎません。努力せず、勉強せず、親亀こければ小亀もこけるとは言いますが、子分につく代議士は一説によると、150名とも言われています。金と利権になびく連中ですから、喰はば皿までで、ピラニアの如く貪欲そのものです。なかなかしぶとい連中です。しかし権力闘争にばかり志向するようでは国民のためになりません。小沢さんは、コーチャンから五億円をもらった田中角栄親分の背中を見て育ってきたのですから、そもそもが古いタイプの政治家です。その轍を踏まぬよう努力すべきですが、孔子謂うところの「徳と仁」を己ながらに身につけ得なかったことは惜しまれます。
民主党の鳩山さんの辞任は、大した理由なき人気の低落によるものでした。307議席を獲得して大政党として登壇した政権にしてはうら寂しき限りですが、そもそも社民党などを相手にした連立の立ち上げが馬鹿げていたのです。未だ8ヶ月しか経過していません。上品に育ってきた鳩山さんですから、苦労なし、修行なしといってしまえばそれまでで、人のよさが災いした面も無きにしも非ずです。感じのよさは信頼度が高く、しかし、政治の世界となると話は別です。社民党、国民新党などに揺さぶられすぎました。しかし短期間のうちにも、良くぞ頑張ってきました。謝ってばかりいましたが、秤にかけてみたら、大きな成果があります。鳩山さんは長期政権で、どう転んでも4年間はもつと誰しもが思っていました。しかし、その場をつくろうことが出来ず、政策の実行は後手後手に回ってしまいました。右顧左眄のきらいがあるともされました。世論調査の結果は、人気凋落の一途でありました。宇宙人は所詮、地球人にはなれなかったのであります。獅子身中の虫、に煩わされた結果と云うしかありません。このことは、歴史が説明することでしょう。
企業で言えば売上の大幅減少、収益大幅減、業績悪化、約束手形の不渡り、銀行取引の停止、倒産、破産、企業整理に入って、膿を出し切って復活を目した手法でしょう。マーケットが追放を突きつけたのと一緒です。但し、民間企業には民事再生とか、会社更生法とか、当該企業の関連した先を考慮して、救済し打つ手が色々とあります。経済をストップさせるわけには行かないことも現実です。
同様、民主党は素早く、次の代表者を選出する準備に取り掛からなければなりません。清新にして実行力のある優秀な人を選んでもらいたいと念願しています。 6月2日
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 快挙、福島大臣の罷免
ここ一週間の間、政治の世界は目まぐるしく変わっております。鳩山政権が迷走する中、国民は比較的落ち着いてその動向を見守っています。きっと何とかするだろうと、大らかに楽観しているのです。失礼ですが、騒ぎ立ててはしゃいでいるのが社民党の福島代表であって、手が付けられません。それと何とかしなければなりませんが、長い歴史の犠牲におかれてきている沖縄県民です。国民は日本の安全保障が、沖縄の人たちの大きな負担の上にのっかて来ていることも知っています。
日本の安全の確保は、日米安保条約を基軸に一億二千万人の生命と財産を死守する目的と役目を荷っているのは厳然たる事実です。そのための米軍基地の存在は大事なことは衆目の一致するところです。時代の波によって、動きと変化によって、兼ね合いが難しいところで、穏健に賢者の如く、政治がこれを解決していくべきでしょう。さりとて社民党のような言論を以てしては、日本は無責任な風評に漂流していかざるを得ません。明日の生命に関わることで、決して看過することのできないもので試練と忍耐が必要です。
鳩山さんは普手間基地の問題で閣議決定の署名を拒否した福島さんを罷免しました。社民党を支持する方には恐縮ですが、今まで、きょろきょろ、ふらふらしていた鳩山さんが、決然として福島さんを罷免したことは天晴れで、良くぞやってくれたと、正直のところ胸のうちがすっきりしました。悪妻に絡まれたヤサオトコで可哀想でたまりませんでした。当面はこれで行くしかありません。男らしく、やるべきときはやらねばなりません。連立政権から社民党を追放した宇宙人は、と激励したくなりました。
次の文はその一週間前に書いたものですが、多忙の身と、あまりにも政局がざわついているので、その機会を逸していました。ここでそれを掲載し、改めて政治の一寸先は闇とは言いながら、でも未だ何ともいえませんが、自信がありませんが、日本の政治に活力を与え、せめてもの希望と期待を持って、リスクを以て載せることにしました。立場が、攻守ところを変えれば見方も考え方も違ってくるのは致し方ありません。ふつつかながら信念堅持を以て諸説紛々のなか、これまた小職の愚見かもしれませんが、ましてや忙中の中、二大政党の時代到来を期して、国民も自民党と民主党の間を、行ったりきたりしていくことでしょう。え今回、歴史的政権交代を果たした民主党ではありませんか、鳩山政権の正しい政治の運営を期待して、これから先、獅子奮迅の努力を払って言って欲しいと思います。 5月28日記
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国民からのお願い
国民の大きな期待を以て船出した民主党政権でしたが、鳩山首相の偽装献金問題や、小沢幹事長の政治資金規正法違反容疑で思わぬ波乱を呼んで、出鼻をくじかれた思いで国民は落胆しています。折角の政権交代が、まるで昔日の、自民党政権時代に逆戻りしてしまったような印象で、実に嘆かわしい限りであります。
かといって、只今の国民の心情としては、このことを以て直ちに民主党政権に引導を渡す心境にもありません。国民は狭間 (はざま)に立って、困ったものだと戸惑っているのが実情です。今の国民には、国会や政界の状況がどう変わろうと、なす知恵もなければ、なす術も知りません。どうしたらいいか全くわからないといった状況です。実質的な国会審議がスムースに始まって、切れ目なく予算の執行が行われて、景気回復が支障なく進んで、国民生活に貢献できるよう努力してもらいたいと願うばかりです。
なんとか政治の混乱を回避して、与党、野党の区別なく、小異を捨てて大同につく雅量を持ってもらいたいと願うばかりです。それが国民のためになる政治であります。民主、自民にどう有利に展開するか、どちらに贔屓(ひいき)するかは、選挙が終って新しい政権交代が成就された今、それ自体意味がありません。今の国民にとって全く無関心事であり、問題外なことであろうとおもわれます。むしろ今は、民主党政権が混乱することは、野党である自民党にとっても不利益であります。いたずらに政治を混乱させたというイメージしか残りません。
政権交代が実現された意義をもう一度考えて理解し、事態が打解されて、正常な国会運営に戻ることを祈るばかりです。 5月18日記
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賢者の狂言
先月、連休明けに日本を始め世界の金融市場を震撼させたギリシャの財政危機は、予想以上に深刻さを印象づけたものとなりました。
安閑としてゴールデンウイークをむさぼっていた私には、その後における日本と国際市場の動向に神経をとがらして注視するような毎日でありましたので、世の投資家諸兄にとっては時によって深刻な打撃を蒙ったのではないかと危惧しております。ましてや株式のみならず、激しく上下する為替相場についてはユーロに標準をあてて世界の投機マネーが、ここぞとばかり勝機をねらって奔流してきている連日の様相は、目を見張るものがあります。先月末からようやく落ち着きを戻してきましたが、いまだ不安定な動きに終始している状況です。
五月のニューヨーク・ダウ平均は八七一円の下落となり、七・八%という下落率は二〇〇九年二月以来の大きさです。日経平均株価も・十一・七%の下落率で、先進国では最大の下げ幅となっています。下落率は、危機の震源地であるEU諸国以上の結果となってギリシャの財政危機は日本の株式市場を直撃するという、今までにも想像しえなかったような結果となりました。世界経済の変容する構造と、ぜい弱を露呈する日本の態様をまざまざと見せつけられる思いであります。
因みにEU各国の株価の下落率を列挙すると、ドイツが三・一%、英国が六・六%、フランスが七・九%であります。然るに日本は十一・七%。これは一体何たることでしょうか。いい加減にしろ! 賢者は怒り出しました。賢者がのたまうことは、現状分析が的確で論法は非凡のきわみであります。奇想天外なところがありますが、いずれ本欄にてご披露いたしましょう。 6月1日記
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菅内閣の発足
民主党菅内閣が政権交代後の約八ヶ月を反省しつつ、新たに改革躍進へ向けて力強く発足しました。政権交代を果した鳩山内閣は、本来あるべき民主党政治の謂はば準備内閣と言うべきでしょう。車で云えば慣らし運転中で、古き自民党から奪回した民主党の本格的政権は、これからの菅内閣からであります。
そして自らを「奇兵隊内閣」と称した管内閣は、自民党に代って新しき時代に沿った清新にして発らつたる内閣の発足と捉えるべきであります。そうすれば国民の英知と決断によって半世紀にわたる自民党独裁政権から、民主党政権へと、政権交代を実現させて、よって管新内閣を発足せしめた意義が判ります。戦後政治史の上でも、五〇年振りに誕生した新内閣ですから、それまでの自民党政権からの脱却には困難を極める改革への障壁があります。また、積年を経て老朽化した官僚制度の改革と、きな臭いしがらみを断つには、幾多の熟練期間が必要であります。それを鳩山内閣がつとめて、本格的政権の前段階、準備期間を設けました。と云う意味に解釈して民主党の管内閣を支持していかなければ、政権交代を果たした意味がありません。国民の付託に応えるのに、そうした心構えと姿勢が必要であります。
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民主党菅内閣が政権交代後の約八ヶ月を反省しつつ、新たに改革躍進へ向けて力強く発足しました。政権交代を果した鳩山内閣は、本来あるべき民主党政治の謂はば準備内閣と言うべきでしょう。車で云えば慣らし運転中で、古き自民党から奪回した民主党の本格的政権は、これからの菅内閣からであります。
そして自らを「奇兵隊内閣」と称した管内閣は、自民党に代って新しき時代に沿った清新にして発らつたる内閣の発足と捉えるべきであります。そうすれば国民の英知と決断によって半世紀にわたる自民党独裁政権から、民主党政権へと、政権交代を実現させて、よって管新内閣を発足せしめた意義が判ります。戦後政治史の上でも、五〇年振りに誕生した新内閣ですから、それまでの自民党政権からの脱却には困難を究める障害があります。同時に、積年を経て老朽化した官僚制度の改革と、きな臭いしがらみを断つには、幾多の熟練期間が必要であります。それを鳩山内閣がつとめて、本格的政権の前段階、準備期間を設けましたと好意的に解釈して政権交代の意義を理解せしめることも必要であります。国民の付託に応えるのに、そうした心構えと姿勢が必要でありました。今回新しく誕生した菅政権は、そうした考えと決意のもとで行われることになりました。この際、大局的見地に立って、国民との合意に調印しようではないでしょうか。
こうした判断は、国民の大譲的精神、友愛精神の発揮であります。衆議院選挙で三○七議席を獲得した民主党政権は、国民の付記に応えて、これからの政権運営を果敢に行ってゆくべきであります。それには強力なリーダーシップが必要です。国民的支持を得た菅氏は、今までの首相になく、その特異な力量と才覚と経歴をもった人物であるが故に、敢えてかような判断をしてよいのではないでしょうか。
たまたま連立与党政権に組み込まれて、はね上がった行動を取ってきた社民党、国民新党をあてにする必要もありません。今度は独自の路線を貫いてゆくべきです。小沢幹事長の首をはね、社民党の福島大臣の首をはねた鳩山さんは、国民新党の亀井大臣の首もはねるべきでした。残念です。以前にも、少数政党の社民と、国民新党は、おのずから自制して謙虚な立場をもつべきであると主張してきましたが、思い上がりもはなはだしく、傲慢な振る舞いに終始してきました。国民は辟易とした思いに時を過ごしてきました。
政治と金、普天間基地の問題で、最後は瓦解しましたが、しかし鳩山内閣は二つの少数政党に引導を渡し、引継ぎ者にすっきりした形で引き渡すことが出来ました。鳩山さんは情緒的に短期間の行動で民主党の地ならしを行ってきました。総裁選挙で引き継いだ菅さんについては、清新な内閣を組閣し、一転して現実路線を力強く打ち出してゆく思考と視線がうかがえて力強いものを感じます。組閣の陣営は清新にして発らつとしており、十一日に行われた所信表明演説も発らつとしており、力がこもって、従来の首相とは違った持ち味を出していて好感度、信頼度は高いものがあります。参院選に向けて独自の政策、マニフェストを掲げ、政権政党としてのゆるぎなき信念で国民に訴えてもらいたいと思います。
菅さんの所信表明で、私が思いに触れたことがあります。冒頭、鳩山内閣の失政を反省し、歴史にとどめた政権交代の意義を踏まえ、初心を貫く決意を表明しました。国民の大譲的精神にのっとり、これからが、本来の民主党の政治が始まるとの認識であります。総選挙で、三百七議席を取った結果を無にすることは出来ません。国民は今も政権交代を果たした熱い思いを持ち続けています。私も同感を禁じえないところです。トップリーダーがこれに答えていけるかどうかが問題であります。
菅氏は、自分の生いたちを述べ、来し方を振り返って今に至った心境を述べていました。資産家に生まれたわけではなく、政治家の家に生まれたわけでなく、平凡なサラリーマンの家庭に生まれ育った一庶民にすぎないことを率直にのべて、政治が大衆の意識に根ざしたものでなければならないことを、自らの苦難と努力の道を歩んで、切磋琢磨の人生から実践活動を通じて自ずと政治理念を築き上げて今日まで来たことを披瀝しました。この言葉と姿勢が、歴代の首相にない謙虚さと、力強さと、粘り強さに魅力を感じたのが率直な気持ちです。
国会での所信表明は、菅氏の希望、情熱、信念、政策を率直に述べたものですが、その全文が翌日の朝日新聞の七ページ全面に掲載されました。私が、歴代首相の所信表明の演説の全文を読んだのはこれが始めてです。多くはその要旨を読んで済ませていましたが、今回は自分で書いたものであって、官僚の書いたものでないことが判ったからです。自民党総裁の谷垣氏は官僚の書いた草稿を棒読みしているに過ぎないと批評していましたが、私は違うと思ったのです。ですから土曜日の朝、全文に目を通して内容を詳しく吟味して読み通しました。
「国民の皆さま、国会議員の皆さま 菅直人です。」と率直に呼びかける言葉が印象的で、菅さんの人柄がでています。「政権を引き継ぐ私に果せられた最大の責務、それは歴史的政権交代の原点に立ち返って、この挫折を乗り越え国民の皆さまの信頼を回復することです」と心情を吐露しています。反省の弁を以て、もはや余りこだわる必要はありません。先に述べたとおりで、謙虚になって、長期政権に臨む訓練期間と捉えてみれば、自ずと国民の期待も推察、理解できるはずであります。
生い立ちを述べた菅さんは師事した政治学者、松下圭一氏の「市民自治の思想」を思いを起し、「日本は国会内閣制」の政治主導の国政であり、今までの官僚指導の行政の過ちを是正、改革にに邁進しなければいけないと、その政治哲学を訴えました。そして菅さんは新内閣の政策課題を三つの大網とし、詳しく説明して実行と決意を述べています。
一つは戦後行政の大掃除を断行することです。それは事業仕分けや、国家公務員制度の改革を果敢にすすめ、税金の使用の明確化と節約を期すること、そしてK歩区民の税金を有効に使うことであります。菅さんは薬害エイズ問題を解決し、行政の透明性と情報公開の重要性を体験しました。問題は行政全般に及ぶ特異性であり、これを一掃することが急務です。
今日の日本は、グローバル化に立ち遅れて、国際競争力の低下がきわだっています。日本はバブル崩壊後の失われた二十年間を苦渋に満ちて、その辛酸をなめてきています。その間、他国は躍進を歩むなかで大きく国力を伸し、地位向上に努めてきています。その差は拡大しつつあります。公私共に遅れをとった私どもが焦操の念を以て、日常の活動に実感として憂慮して止まぬところです。この閉塞感を打破して、脱却する道筋を描かねばなりません。菅さんは経済と財政再建と社会保障を一体化して、同時にこれを遂行することを宣言しています。
日本経済の低僀は二十有余年に続きましたが、これらは全て政治と行政の政策の拙劣さからくるものです。バブル崩壊の長引く原因は、二〇〇二年の過去の総量規制を放置したまま、いたずらに時を費し、傷手を深めて治療不能に陥れた官僚主導の責に帰するものです。結果、財政のたれ流しで既得権と利権に群がる政治と行政機構の拡大を許しました。努力して生むことを怠り、ただ安易に借金にたよる体質と性格に、日本と日本人を引きずり込んでいきました。
結果、国債発行残高は八六〇兆円に及び、ギリシャ発金融危機を論ずる資格はなく、放置すれば、その二の舞いを演じないとも限りません。国債の消化の多くが国内で消化されるからと云う理由だけで安閑としていられません。国際金融が瞬時に変化する今日、旧態然の思想は安易に堕し危険であります。
日本の財政再建は待ったなしの段階です。これを以て、行政機構の大刷新、公務員制度の改革、民間経済の活性化の為の法人税引き下げ、大幅な規制緩和、雇用促進、研究開発の促進を以て、まず、かいより始めで、国会議員の削減なども要望すべきところです。強い経済は、民間企業の総体的、総合的潜在力の活用と活性化にあることを銘記して、そこへの政策立案、推進に心すべきであります。
強い経済に次ぐ強い財政に関連し、抜本的税制改革に触れて、消費税の値上げに含みをもたせました。消費税は大衆課税で万遍なく微収できるもので安直に触れたがるものですが、消費低迷とデフレ傾向、雇用状態の悪化の現在、実行するには幾大の難関があります。焦らず、まず景気回復を果たし、失業をなくし、家計を潤すことを優先すべきでしょう。同時に賛否両論の少子手当の支給、農家への戸別補助手当ての支給など、再検討し、税金を、予算を以てより有効需要を喚気する道への転用をはかる必要があります。
強い社会保障を念頭に、これを成長路線に直結せしめることは理想的ですが、必ずしも実行可能とは言いがたきものがあります。限界があります。社会保障、介護医療の政策には一般企業、株会社制度と違って厚生経済の領域であって、利益追求理念が薄く、基本的に競争原理が普及しにくい点があります。経済、財政、社会保障の一本立ての微妙な難しさを感じる気がします。この組み合わせが、内閣のアキレス腱とならないよう臨機応変の対応が必要であります。
又、責任感に立脚した外交と、安全保障政策の協調は、菅さんの現実的な政治感覚を明確にした点で納得がいきます。只今の、世界情勢を直視する時、日米安保体制を基軸にして、中国の抬頭を念頭に、アジア諸国との連携を構築してゆくことは現実的です。政権政党に社民党の如き単略的思想を排除すべきことは肝要であります。非現実的手法に、国民の生命財産を付託することはできません。
議論と提案は枚挙にいとまがありません。ことの始めを提起した菅さんの所信表明は、スタートラインに立った姿勢です。これを推進するかどうかは、小沢さんの権力集中を排除して再起させた政調会の復活に見られる通りです。透明性、実行性、責任性を表示した支援策を、新たな若々しい布陣を以て、国民の期待に応えてゆくべきではないでしょうか。今日、只今からが、歴史的政権交代を果たした民主党の始動であり、その指導者は以て管直人氏であると信じて、来る参議院選挙には大勝を果たし、奢ることなく、国民の期待に沿って活躍されんことを切望します。
(六月十一日)
第十九回ワールドカップ
サッカーの第十九回W杯が十一日南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開催されました。本大会には日本を始め三十二チームが出場し、多くの強豪を熱戦を相手に繰り広げます。
岡田監督率いる日本チームは総勢二十四名の選手で攻撃、守備で対戦チームに激突します。どうゆう試合展開になるか、次第に興奮の胸騒ぎがして参りました。日本チームの善戦を祈るばかりでおりますが、先日の夜、世界を制覇して、喜びに躍る日本チーム選手らの姿を夢見たのです。正夢であって欲しいと思っております。
昭和経済に「わが回想記」を連載している堀江忠男教授は、早稲田大学が誇る経済学者ですが、一九三六年のベルリン・オリンピックにサッカー日本代表選手として出場、大活躍をしました。日本チームの岡田監督は、堀江教授の愛弟子です。難解といわれた堀江ゼミを履修し、真面目で優秀な学生でした。岡田監督は、恩師、堀江教授のサッカー手法を体得して、切磋琢磨の末、今日まで成功してきました。
折しも六月三日、堀江教授の未亡人、堀江玲子さんから、新しく出版された歌集「緑の庭」が送られてきました。歌集のうち、項目の「共に生きる」の中のページには、カラー写真が載っています。
「ベルリン・オリンピック(一九三六年)サッカー日本代表として夫、忠男が持っていたトランク」
と添え書きがしてあります。私はそのトランクを見てしばし懐古の情を以て、感懐深く、熱き思いに耽っていました。
そして歌集には、病床に臥す堀江先生を介護する、玲子夫人の詠まれた歌があります。
夕空の雲の動きを病む夫に語りつつ今日のカーテンを引く
大学へ講義に行くと立たんとし諦めて眠るベッドに夫は
サッカーのユニフォーム着ればきりりとし麻痺したる手にボール持ち上ぐ
サッカーのオリンピック選手たりし足あえて骨のみ目立つを丹念に拭く
書くことを喜びとして仕事せし夫は病みてペン持たんとす
晩年の先生は、経済学の研究と、サッカー選手の指導、教育に情熱を傾注し、生涯を全うされました。日本サッカーの今日あるは、在りし日の早稲田大学名誉教授、堀江先生の尽力と功績によるものです。「文武両道」を極めてゆかれた堀江忠男先生のためにも、日本選手の活躍を祈って止みません。
(六月五日)
菅内閣
「最小不幸社会」を作ることが政治の大目標であるとして「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体化を目指した菅・奇兵隊内閣は、六月九日華々しく組閣を終えました。
鳩山前内閣は、政権交代を果たした民主党の準備内閣、助走内閣と把えて、民主党はこれからすっきりと本格始動の道を進んでもらいたいものです。福島大臣の首をはね、小沢一郎と道づれ心中をはかったあと、亀井大臣を追い払ったのですから幸運です。
今度は連立など姑息な手法をとらずに、正々堂々と、民主党単独過半数を参院選でも獲得して、国民に判りやすい政治を行ってもらいたいものです。右顧左眄せず、マニフェストで自分の首を絞めず、菅色を打ち出したらどうでしょう。掲げた政策目標はしごく最もなもので納得できます。所信表明も明快で具体的なテーマを掲げ、共感を覚えます。
凡人の中から、非凡の業を示すことが大衆政治家の理念でなければなりません。従来の首相と違った政治歴、人生経験を持った味を大胆に出して下さい。苦労人ゆえに策士は当然、取り巻き、腹心にスーパーマンを配してフル回転で行動することが肝要です。おごれるもの久しからず、惰眠をむさぼった二十年間の競争力、生存力、推進力、潜在力の低下を克えて、中国のダイナミズムに負けない使命感をもって具体的行動を起すべきでしょう。美辞麗句、その場凌ぎの政策を排し、現実的政治家に相応しい、指針と行動を示すことを期待します。述べ伝えた「林業の整備促進」は今までになかったことで、奇抜であり斬新な発想です。波及効果を検証、以て啓発すべきことがらです。6月11日。
中国の所得倍増
報道によると中国が「所得倍増計画」を発表したと伝えました。リーマン・ショックで揺らぐ世界経済のなか、いち早く日本円にして五十三兆に及ぶ公共事業の発動で、中国経済の停滞を喰い止めました。その内需拡大策は中国ばかりでなく、世界経済に大なる貢献を果しました。拡大する経済をバブルと称し、羨望的観測を常にたれ流す風評に動じず、適切果敢に打ち出す経済・金融政策は優れており、中国のダイナミズムは注目すべきところです。
その中国が、更に所得倍増政策を打ち出し、更なる刺激策をとろうとしているのですから、他の先進国はど肝を抜かれる思いでしょう。日本でも一九六〇年代に、所得倍増政策を打ち出した池田内閣当時を想起します。中国の平均労働賃銀は二〇〇八年、二万九〇〇〇元(約三十九万円)です。この平均賃銀を毎年十五%以上のペースで増やしてゆけば、五年で倍になります。中国は次の五ヵ年計画に、これを盛り込む方針です。中国経済の規模からすると、その潜在力は如実であり、世界経済に及ぼす影響は、多少の紆余曲折はあっても、これから先膨脹、拡大の道であります。
三十年前、社会主義経済からようやく脱却して市場経済へ移行しようとする頃、わが昭和経済会は経済使節団を組んで、中国北京政府を訪問しました。そして時の中国政府要人と経済的交流の促進について要談した記憶が未だに鮮明に残っています。
思えば更にその二十年前には、松村謙三氏らが、日中友好促進に懸命の努力を払っていました。私は、訪中期間の間、発展する日本経済のなかに負の遺産が日々、堆積している悲惨な現実を説明し、当時のおびただしい環境汚染と、その深刻な悪影響についてためらうことなく説明し、産業汚染の解決をも同時に進めてゆくことを参考的に述べました。経済発展の影に、悪の汚染の蓄積放置を排除すべきことを力説した記憶があります。
目ざましい経済発展を遂げる中国、その他の新興国に自覚と注意を促す所以です。
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七月十一日投票 参議院議員選挙の公示
24日に参議院選挙実施が公示されました。各党とも一斉に選挙活動のため党首が街頭に繰り出しました。梅雨の間の暑いさなか、帰途の途中の有楽町の駅の前では、既に聞きなれた声の党首が声を張り上げて街頭演説に立って独自の政策を訴えていました。
南アフリカのヨハネスブルクでも、今サッカーW杯の熱戦が繰り広げられておりますが、日本チームの期待と善戦で同じように日本国内が沸き立っているところです。今朝は日本時間の3時30分、キックオフで始まった、日本対オランダ戦を観戦していまだ興奮冷めやらぬ心境です。華麗な試合を見て終始感動しつつ、見事、日本が3対1で、強豪オランダを撃破しました。天晴れ岡田ジャパン。快挙であります。今日はいささか寝不足で疲れ気味ですが、僻地に遠征している岡田ジャパンのこと、選手たちのことを思えば、そんなことをいっている場合ではありません。難関を突破してこれから選手一丸となって、尚突進していかなければならない選手たち一人ひとりの、心身の強健を祈って止みません。
対オランダ戦では岡田ジャパンの手に汗を握る奮闘振りに、もしかして真夜中のメロデイーではありませんが、夢かと錯覚する気持ちで夜を明かしました。気持ちのよい鮮やかなシーンが、よみがえってきます。激闘を重ねながらも、組織的な構図を組み立てながら、頭脳を駆使して巧みな技をフィールドに展開して、尚無意識のうちに反応していく選手の雄たけびの様子が如実にうかがえました。私にとってサッカーが、強靭な肉体の練磨と、組織的頭脳的スポーツであることを理解せしめるものでした。それは先の恩師、早稲田大学名誉教授、堀江忠男先生の教え伝えるものでもあります。
日本にとっては、この試合は一勝一敗で迎えた第三戦です。試合開始後17分フリーキックを手にした絶好のチャンスです。距離のある球を左足を使った本田選手が、目にも鮮やかに豪快なキックをもってゴールに球を突き刺しました。30分後、今度は遠藤選手がフリーキックで正面の絶好の位置から、右足でゴール右手に球をねじ込み、追加得点をあげて、相手の戦意をねじ伏せる展開となりました。
後半戦では気勢に載った岡田ジャパンは幾度となくオランダチームの体制を崩しながら、間断ない波状攻撃を仕掛け、相手チームを圧倒する展開となりました。守勢からさらに積極的攻勢に転じた日本は40分後、本田のパスを受けた岡崎が、これを見事にゴールに決めてさらに3点目をゲット、ほぼ勝利を手にしました。修行を経て戦術を変えてきた本田選手の活躍と成長が目立ちました。岡田ジャパンの白熱した試合展開に、日本のみならずこれを観戦している世界中の人たちを興奮の渦に巻き込んだことでしょう。歴史に残る名試合でありました。
国民にとって、国民の民主政治にとって大切な参議院選挙の公示と、国民の政治参加の意義について書こうと思って書き始めましたが、つい手遅れになってしまいました。決して国政選挙に関心が薄いわけではありません。物事には、順序があるからといって、決しておざなりにするわけではありません。 サッカーの熱戦と勝利への道は、国民の一体感を示すものです。その正しいスポーツ精神の高揚を図ることは、国民参加の政治と民主主義の堅持につながって行くものだと確信しています。
これから、選挙活動を通じて各政党の政策、思想が明らかになっていくことでしょう。激しい論戦が繰り広げられていくことでしょう。そうしたなかで何が国民にとって正しいか、公正と正義につながっているかを判断するきっかけを作るものであると理解して止みません。 サッカーの試合と同様、厳しい選挙戦を経て、公明正大、厳粛な審判を、国民が下さなければなりません。蒸し暑いさなかの健闘ですが。候補者の健康を祈って止みません。 6月25日記
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今、何故、消費税値上げですか?
華々しく参議院選挙が始まりました。各候補者が街頭に繰り出し、市民に政策を訴えて支持を求めています。自民党を出て、独自の政策集団を結成し、政党として助成金を得、九党の政党が乱立して選挙戦に臨んでいます。民主党には、従って自民党を初め、他に七つの少数政党が対峙していることになり、喧々諤々の様相です。同時に、政治とかねの問題を初め、発足八ヶ月の民主党の政策についても、民主党は選挙の洗礼を受けなければなりません。
早くも厳しい試練に立っておりますが、発足後未だその成果を発揮し得ないままでの評価を受けることになり、菅首相の直面する難しい問題です。鳩山内閣の退陣後、20パーセントを割り込んだ内閣支持率は、菅内閣になって急激に回復して60パーセント台までに回復してきております。追い風に乗った感じで、好調な出足であります。国会の衆参のねじれ現象が解消されて、国民のための議会政治が円滑に行くような状況を期待しています。
ところが最近、菅さんの口から意外な言葉が、発言がしきりに出てくることで、唐突な感じがしてきております。大衆政治家であり、庶民感覚を持って国民の支持を得ているはずなのに、その人の口から、ついぞ聞いたこともない消費税の値上げであります。財政再建が重要なことは、国民は百も承知しています。しかし今に始まったことではありません。自民党に代わって、政権交代を果たした民主党の時代的意義がまさしく、そこにあると云わなければなりません。増税無き財政再建であります。
長きに渡る国民の閉塞感から、経済のデフレ状況から脱却し、景気回復へ強力な足がかりをつかまなければなりません。安易な増税論を振りかざすようなことが、民主党にあってはなりません。先ず景気回復であります。企業減税と経済の成長路線を貫く政策を進めることでしょう。そして企業の活性化を図るために、大幅な規制緩和を図ることでしょう。
今、日本の企業が、日本を離れて、活動しやすい外国に移っていく件数が激増して、地方では空洞化が進んでいます。雇用が進まず、過疎化が進むばかりです。優秀な企業の外部への流出を防ぐような魅力ある制度が必要です。優遇策とまでは行かないまでも、各種の規制緩和が重要であります。予算のばら撒きは、所詮、ばら撒きで霧散してしまいます。農家への個別補償制度や、学資の一律補助金支給など人気取りでしかありません。
今のこのとき、時代に逆行する、菅首相の唐突な感じのする消費税値上げなど、きっとこれが本心だとすれば、国民はだまし討ちにあったとして、戸惑い、選挙戦は果ては民主党にとって逆風となってしまうかも知れません。菅さんの真意をただしたいと思います。 6月30日。
平成22年6月4日
社団法人 昭和経済会
理事長