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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.16.06


S 先輩からの便り

   5月の13日から始まった浅草三社祭は、初夏を告げる江戸の風物詩である。浅草界隈はこの三日間のお祭りに湧きたっている。薫風そよぐ快晴の日和に恵まれて、明日の最終日には浅草神社の三基の大神輿が担ぎ出される。神輿はそれぞれ町内の氏子の肩に担がれて、豪快且つ華麗な一大絵巻となってくりひろげられて、江戸の下町を祀り気分に横溢していく。その中日の今日、名古屋市瑞穂区に在住の写真家のS 先輩から書状の郵便物が届いた。S 先輩は古くから古都の奈良の都をこよなく愛し、お寺や仏像や、風景を撮った叙情豊かな写真の名作を沢山残されている。さらに先輩は会津八一の和歌をこよなく愛し、私は、S氏は感性において歌人、会津八一の最大の理解者であると思っている。頂いた書状は、流れるようにきれいに書かれた毛筆の巻紙である。いつも畳んで入っている。それを広げて読んでいると、身近に起きた内容が書かれていて心に触れるものであり、そのまま表装して飾っておきたい気持ちになる。専門に撮られた写真の作品も一緒に入っていて、封書は文字通り美術品の入った玉手箱のようなものである。開けてみるのが楽しみである。いつも野暮用に追われているので、私は、お手紙と写真を頂いた旨のはがきを出すように心がけている。律儀と礼儀のお手本である書状に、私は満面の感謝をこめて返事をしたためているつもりであるが、本懐までに至っていない。S先輩の手にかかったものは皆芸術品である。
   私はかって妻と一緒であったが、古都の香り豊かないかるがの里を訪れたことがあった。その時に詠んだ歌や、その後に追想して詠んだ和歌が昭和経済か、短歌同人誌 淵に発表された中に「猿沢の池」にふれたうたがあった。S 先輩はそのことに触れて「猿沢の池と興福寺の塔」を写された作品に、私の和歌を載せて下さるとのとのことで、私はありがたくそのお申し越しを受けた。私は大変感謝して幾つかを詠むんでいくうちに、興ずること際立ち始めた次第に、詠んだ和歌は、三十首以上になってしまったようである。猿沢の池と興福寺、近くには東大寺もある。この地は流離うにふさわしいいかるがの里の、古典的な、歴史的遺産の宝庫である。その時の印象は心のうちに奥深く刻まれているので、S先輩に歌詠みのお誘いを受けた時には、何ら躊躇するところがなかった。厚かましく二、三首を詠み始めたら、思い出の旅の流れが止まらなくなってしまった。筆の進むままに詠んでいった次第を、消えぬうちにと雑記して紙に書きとどめて置いた次第である。

猿澤の池
みほとけもあそびけるかなさるさわのいけのほとりのはるのつきのよ
みほとけも遊びけるかな猿澤の池のほとりの春の月の夜
願はくば今宵の月のあきらけくあらめほとけの時のすごす間
さよふけて月の冴えたる松が枝にとまるかしこきふくらふの影
猿澤の池もに映つる興福のたう美しき春の宵かな
ひとり立ち物思ひにけり猿澤の水のほとりの月の影にて
いかるがの里の一夜によろづ世のさまをめぐりて物思ひけむ
古き世をさまよひ居れば夢路にも女(め)の子いでまし遊びけるなり
いざ行かむ狩りのつとめに男(を)の子(こ)らは家を守りて女(め)のこ居(を)るまに
鹿を射る狩りはご法度に兔追ふ男の子のそれを十匹(とひき)下げ来ぬ
むくどりの声やかましく騒ぎ立て我れが昼寝をさまたげ居りし
猿澤のさぎり消(け)むかと待ちをればふりしく白き雨に変りぬ
さるさわの池面(いけも)にうつる初なつの月こそあはれゆるる小夜なか
わが妹子をともなひ月の小夜なかにきく松の間のふくろふの声
猿さわの池面(も)にそそぐ初なつのこさめにながむ興福のたう
猿さわの水のほとりにひとり立ち悲しくあらむなれどゆへなき
興福のたうをながめてさまよへば月のぼり来ぬ松の枝のまに
さるさわの池をめぐりてこうふくの松の枝のまに淡き月かげ
いくたびそ訪(と)ふこの池のいとほしく思ひつめぐる夕映へのころ
猿澤の池のほとりの青柳(あほやぎ)に初なつの風すぎてさやめく
興福の宝物館のガラス越し立つ広目天のまなこけはしき
朝もやのかすむ鄙路の宿をたちめぐる水辺にあやま咲くなり
猿澤の池にほどよき宿にいて地酒をのみつ歌を詠みしに
ほとけらの憩ひしあとに我も立ちのどかに覚ゆ猿澤の池
猿さわの池のふちゆくみほとけの憩ひしあとに我もすぐさむ
歌ひつつ妙なる巫女のあとにつき我もひかれて共にすごさむ
いづくより現はれてゆく四天王猛き姿のいでたちやよき
みほとけを守りて構ふ四天王猛きかしこき遠きまなざし
荒れ狂ふ荒野の風を振り分けて脇侍のまなこきらめく
わが妹と誘ひてゆけば猿澤の池のほとりにあやめ咲き立つ
                                      以下四十五首

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    いかるがの里を訪ねて

さすらひの旅こそよけれいかるがのほとけのみ手に招かれしゆく
初なつの光かがやくやまかはの旅ゆく先に興福のたう
天つ日にみどりみなぎる猿澤の池面に遊ぶ水鳥のかげ
いかるがの里こそよけれいにしへの妙につやめく巫女に逢へしに
ゐかるがの里にうくひすそこここにひながのどかに鳴きあかしけむ
猿沢の池のほとりにひとりたちほがらかに眺む興福のたう
まろやかな風を小指にとどめをきほとけの告げてなつは来にけり
みほとめのふしめ安らぎ我ともに物思ひふかくあらまほしきよ
初なつの光輝やくなかぞらに高くそびゆくる興福のたう
みほとけのひとりさびしくたちをはす世の衆生をあはれ思ひつ
慈悲深きほとけの立ちてここにます興福のとう望むなかぞら
矢車の音からからと鳴る空に色あざやかにのぼり立つ見ゆ
いかるがの里を訪ねてさはやかに風にそよぎて幟り立つかな


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猿沢の池の秘話

野の花の咲きそふあした宿を出でいかるがの道たのしみてゆく
緑蔭の小道を行けば猿沢の池の岸べにあやめ咲き立つ
安らぎの憩ひの水の流れ入る古き都の猿沢の池
いにしへの天つ乙女の美しき舞ひを夢みぬ猿沢の池
この里のみどり草むすそよ風のかげの池面を渡る朝かな
いかるがの優しき風にふれてゆく霧の晴れたる猿沢の池
清らかな池の水面に早乙女の白き小指のふれてさざなむ
猿沢の池面に映つるやうらくのながぞら高き興福のたう
梅の香の甘き匂ひに宿を出でさまよふ先に猿澤の池
猿沢の池面に我れが立つ影に気付き緋鯉のあまた寄りてく
あざやかな鯉の化身と思へけりおのづと熱きなさけ湧きしも
昔より悲しき恋のものがたりひめてしづもる猿沢の池
美しき影をおとして猿沢の池面にうつる興福寺のたう
ころも掛け柳と云はる采女ゆへに枝のしだれに匂ひこめたり
猿沢の池面に黒き影近く真鯉の来れば背を向けにけり
昔より歌ふなさけの片瀬波はかなく消えて乙女かなしき
つかのまの恋とは知らで燃ゆる身のうぬめはなかき定めなるかな
清らかな姫に燃えたる恋ゆへに悩み苦しむ身こそあはれに


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         消費税引き上げの再延期

安倍首相は5月30日自民党幹部並びに公明党の幹部と会談して、来年4月に決定していた消費税10パーセントの引き上げを実施する件について、これを2年6か月延期して平成19年10月に行う旨決定したと発表した。麻生財務大臣など再延期は不適当であると繰り返し主張したが、大勢は安倍さんの意見に傾いた。現下の情勢を大観すれば、安倍さんの適宜を得た決断で、発表は遅きに逸した感がある。麻生さんと話し合いがついて、政治的解決を得たことは良かった。増税を延期するについては、安倍さんの苦渋の決断だった。慎重に対応して、今まで各方面の識者の意見を聞いたりして、いろいろと周到に準備をしてきたところである。景気回復が思うようにいかない現状からすれば、延期は当然の決定である。ここで増税の実施を決めれば、ただでさえ落ち込んでいる消費の低迷に拍車をかけて、さらなる景気悪化を招き、過去のデフレ状態に逆戻りしかねない。そうした結果になることは明らかである。与党内にも再延期に反対する意見もあるが、野党の諸君は当然のこととして、これを以てアベノミクスが破たんしたと云うことは簡単だが、現状を見る限り国民としても斯様な見方を以て胆略的に結論を出すわけにもいかない。又、来たる参議院選挙にも、衆参同日選挙が取り沙汰されていたが、同日選挙は行わないことも発表した。これも戦略的には賢明な判断であった。経済に底割れリスクがあると云われているし、加えて九州の地震災害の影響も無視できない。東北大震災からの復興も、道半ばである。国民の力を分散させなければ閉塞してしまうという状況でもない。今回の参議院議員選挙は極めて微妙且つ重要な要素を含んでいる。自民公明に三分の二以上の議席を与えるかどうかである。憲法改正の発議を許すかどうかである。国民の日本国の将来を見据えた賢明な判断が要諦である。私は戦争の愚かで悲惨な状況を見てきている。信条は心のそこで揺らいでいる。又現実を見る限り、衆参ダブル選挙は云うべくして困難である。そしてなお、増税は底割れリスクがあって、自民・公明にとっては危険な状況かも知れない。

伊勢志摩サミットでは、議長を務める安倍さんがしきりと世界経済の下振れリスクについて危機感を表明していた。むしろサミットの結束を強化する意味から、逆に論法を展開した方がよかったように思う。何かしら違和感を禁じ得ないところがあって、賛同しえないことであった。リーマンショックの時に似たような兆候があると、危機感をあおったものの、状況の認識が外れていたために無用の憶測を招いて効を奏しなかった。緩やかな回復基調にあると云った見解を述べる首脳もいたりして、G7でも不協和音があったことはいがめない。見解は、安倍さんの勇み足で、議長職を務める立場としては拙劣であった。むしろ議事進行に不安を感じさせたくらいだ。頭脳明晰な安倍さんにとって、猿も木から落ちると云った結果ともなったが、サミットの場を活用して国内向けに消費増税の延期の理由づけとしたかったのかもしれない。その必要はなかったのではないか。聊か唐突気味であった。リーマンショックを今更持ち出す雰囲気でもないが、消費税の引き上げの延期については、もっと単純に国内の景気動向や、九州熊本、大分の地震災害のことを盛り込んだ方が現実味があり、むしろ説得力があった。根回しの舞台を広げすぎたかもしれない。

いずれにしても消費税の引き上げが延期されたことで、経済に無用の波乱を呼び起こさずに済んだことは幸いであった。勿論、社会保障の充実、財政再建も急務な事案であるが、ここにきてアベノミクスの根幹に触れる問題に水を差す結果になっては元も子もない。景気回復を一時的に反映して家計の支出も若干ながら増加傾向にあり、企業業績も顕著に回復し、雇用状況も堅調だし、税収も上がって、一時期と比べたら異論をはさむこともない。足踏み状態が続く状態だが、アベノミクスの景気政策は一時の不況時代よりも格段の改善、向上を示していることはあきらかである。今は、この持続性をいかに維持していくかが問われている。それは今後の政策如何にかかっている。効果的な財政出動も然り、消費税の取り扱いは今後も大きな問題である。言うなれば全てはそれぞれが関連した政策運営のその一部である。従ってまじかに迫った消費税の延期は是か否かについて、速やかに判断をはっきりさせる必要があった。公約違反云々はあるかもしれないが、緊急避難的措置と思えば、国民は納得する。安倍さんが再延期を決定したことで消費の落ち込みを回避することが出来るとして産業界、金融業界はもとより、一般消費者、大衆が安堵している。消費税から上がる税収のカバーに、景気回復による税収の増大を期待した方が、現状から見る限り、遥かに良い結果を齎すだろう。
世界経済がかってのリーマンショックに近い危機的状況だと指摘した安倍さんは、各国が足並みを揃えて国際的な財政出動に出て、大規模な需要を喚起すべきと訴えた。しかし伝統的に財政の均衡を保つドイツや、イギリスの反対があって認められなかった。そもそも世界経済がリーマンショックに近い危機的な状況にあるという安倍さんの認識とは大きなずれがあって、必ずしもそうではないと主張する首脳もいた。しかし会議の大義を重んじて、各国は大筋において共通した認識を持ちながら、財政出動についてはおおむね各国の判断に委ねるということに落ち着いた。安倍さんの最大の懸案だった消費税の引き上げについては、サミットでも理解を得た形で再延期することになった。国によって置かれている経済事情が異なることゆえ、国内政策上、微妙なニュアンスの相違は致し方ない。最近の原油価格の値下がりも底をつき、反転して50ドルを目指すまでに回復してきている。資源価格が正常な水準を目指して来れば世界経済に広く良好な影響を齎すことになる。原油価格の過剰な下落が世界経済の動向の混乱要因だっただけに、安堵の思いが広がってきている。

消費、生産の統計を見てもアメリカ経済は順調な軌道を進んでいるようだし、そうしたことを踏まえてFRBも近い将来利上げに踏み切ることが濃厚な情勢となってきた。日本はデフレ脱却をどうにか果たし、雇用の改善は顕著な数字を示し、かってのような危機感から解きはなれた状況にある。今、景気は踊り場に出ている感じである。だからと云って安易に増税ということになれば、家計、企業に対する心理的影響は不透明な感じを齎すことになる。成長戦略を考慮すれば、ここでの増税は不都合である。当面は、緩やかな回復基調にある。逆の政策のかじ取りを強いられている。いつまで変則的なゼロ金利政策をとっていられるか、逆金利と云った異次元政策を持続的に出すと云われても、常識の線を越すようだと、黒田さんの一刀流とは云いながら、常識外の滅茶苦茶な経済になって行っても困るのである。経済的な効果が出るまでは、偏向的であっても、とことん想定外、奇想天外なこともやってのけるということになると、聊か羽目を外してまでと云った感じで、我々正常な感覚の庶民にとっては不安なことにもなってくる。経済を支えているのは、多くの常識的な一般市民であることを忘れてはいけない。早く正常な経済の環境に持ち込んで、常識的な政策を以て、臨んでもらいたい。思い切った規制緩和、構造改革はもとよりの課題である。同時に第三の矢は、新たな成長産業の開拓に 、例えばロボット開発とか、最先端の医療技術の拡張的応用、宇宙開発の拡大と云った方面での技術革新投資を促していくことも時代的要請であって、経済に対するインパクトは大きいはずである。経済の、「量から質へ」の転換である。   6月1日


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英国のEU離脱問題     戦争再発の危機を回避するために

  英国自身がEUに留まるか、離脱するかの国民投票が6月23日に行われる。結果いかんによっては、その影響は英国自身に留まらない。EUはもとより重大な影響を将来にもたらすだろう。成熟過程にあるEUの経済圏と世界経済の観点からも、長短の混乱は避けられない。EUは中国にとって最大の輸出国である。EUに混乱が生じれば、中国に及ぶ。中国に及ぶ影響は、直ちに日本にも及ぶ。文字通り、東南アジア・新興国を取り込んで、世界経済に影響を及ぼすことになる。中国然り、アメリカも同様である。
   そもそもEUの結成の目的は、第二志世界大戦のあと、欧州に再び戦争が起きないように、お互いの連携を強化、結束することにあった。そして一つの国家として、これの存在を確認していくという壮大な実験であり、現在も続いている歴史的現実である。経済的連携を、政治的団結に誘導し、確立させることに意味があった。EU成立の結果、欧州に一大経済圏を形成した。EUの統一通貨も誕生した。経済的市場の拡大が、顕著にもたらされた。勿論、矛盾や軋みが生じたが、統合の目的完遂の為には、予想される問題であり克服しなければならない課題であった。自国の都合主義を主張すれば、お互いが持つ矛盾を露呈する結果になる。ギリシャの債務問題が、その事例である。EUの突きつける厳しい融資条件を呑んで、ギリシャはEUに留まることが出来た。前進のためには致し方ない忍耐である。EUも又、ギリシャをEUにとどめることが出来た。仲間外れを出さずに済んだ。ギリシャの離脱はEUの今後の発展を大きく阻害するところであった。EUとアメリカの世界経済のGDPに占める比率は、50パーセントに行かくなってきている。小さな火種が大きく拡散して、それが加速していった時の混乱は計り知れない。
   EUの国家間の能力の相違と格差は、予想外であった。EUの構想は、ドイツの独走を阻止して、将来の戦争の芽を断ち切る目的であった。しかし蓋を開けてみると、意外にドイツ経済と他の諸国との間に力の差があった。競争力と、輸出力に力を付けたドイツの好調な経済が際立ってきた。勤勉を旨とする国民性によるところも大きかった。それは底流にある科学的技術と力である。ギリシャと比べてみると、面白いくらいに歴然である。経済格差は開くばかりであって、この調整が課題である。同時に今回はデフォルトに直面したギリシャの時の、かのEU離脱の問題とは全く次元の違う問題である。規模と内容について軽々しく論ずることはできない。混乱の火種は奥深く、将来に禍根を残し、かつ複雑を極めてくることは間違いない。小異を捨てて大同につく寛容さが望まれる。
イギリスがEUを離脱すれば、第二次大戦後の英知と決断を以て進められてきたヨーロッパ統合の大きな亀裂となる。歴史から貴重な教を得た戦争回避というEUの目的を考えれば、その亀裂は世界平和に対する亀裂にもなる可能性がある。EU,特にフランスに起きた連続テロの発生を見ても分かる通り、EUの亀裂を衝いてイスラム原理主義の台頭をさらに許すことになっていく。欧州の混乱に飛び火していく可能性がある。第二次大戦の,歴史に教訓を得た戦争の戦術は変わってきた。戦争に代わってISのような、テロを戦術の主体にした構想に代わって来ており、拡散するテロに対するるリスクは増大するばかりである。EUに限らず、アメリカにも起きているし、ISと距離を置く日本も微妙な関係に立っていること自体が不安である。嫌がらせが昂じて、日本までが標的とならないとも限らない。諸国間の結束と連携は、益々増大していく必然性がある。テロの蔓延は、世界を混乱に導いていく原因である。貧困を撲滅して、地上に平和をもたらす使命がEUの結束に課せられている。それが、これからの国際社会の規律と秩序を生み出していくことになる   
    戦時中から英国女王に即位しているエリザベス女王は、「EUの分裂は危険で、警戒しなければならない」と云う発言をした。英国では政治的発言が禁ぜられている皇室にとって、異例である。さすがに英国のEUからの離脱と具体的には云わなかったが、EUからの離脱を、EUの危機と置き換えて云っている。それはEU分裂を意味するからである。英国には北アイルランドの独立運動の難問題も抱えている。EUの離脱の是非を問う国民投票についても、キャメロン首相をはじめ英国民にとって、リスクに直面した苦渋の色が窺える。エリザベス女王のこういう文脈で見れば分かる通り、、イギリスのEUからの離脱はイギリスだけの問題ではなく、長期的には世界中の政治や経済に影響する大きな問題なのである。初心に帰りEUの崇高な目的を堅持してもらいたい。秩序と繁栄を熱望し、イギリス国民の賢明な選択を切に望むところである。 6月10日


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舛添都知事が辞職

  週刊雑誌で、政治資金の私的使用を衝かれた舛添東京都知事が今日、辞任に追い込まれた。政治資金の活用について公私混同の疑惑がなされて以来、厳しい世論に耐えながら、ひたすら弁明に努めてきた都知事だが、あいまいな答弁に終始し、核心に触れて自らの責任説明がないまま無為な日にちが過ぎて行った。そして開かれた都議会でも態度は頑なに過ぎ、無為に過ぎて行った。業を煮やした都議会では7会派が一致して不信任案を提出した今日、不信任案は可決する見通しを見越した知事は、都議会議長に辞表を提出した。聞くところによると、苦学をしながら世に出、志を高く掲げて今日まで苦労してきたが、顛末は自ら自爆の道に追い込まれて、手にした都知事を辞任した。信念堅持、民衆のために志を高く掲げて努力してきたにもかかわらず、期待に反する結果に終わってしまった。民衆の賛同を得てトップにまで上り詰めたが、なんというあっけない凋落の結果だったか。政治家としての、都知事としての責任追及に対して、懸命に抵抗する本人を見て哀れにも思い、気の毒にも思ったのである。単純で、当たり前なことをわきまえないことが原因で、それまでの努力は全て水泡に帰してしまった。自らの単純で当たり前のことが出来ない人に、巨大で複雑な都政を任せることはできない。人間としても品格に係わるものであり、都民を代表する都知事としての資質を問われるものである。民衆の怒りは爆発した。都議会も、特に最大与党の自公民が民意を汲んで最終的に動き出したのである。うろたえて核心に触れず、舛添氏の答弁は終始、全ての人に、ただ知事席にしがみつく延命にしか映らなかった。
    前の都知事の猪瀬氏も期待に反し、下らない騒動を起こして落馬した。金の問題で都議会の百条委員会で醜態をさらけ出して辞任したばかりである。あの時は5000万の札束が持参のバッグに入るかどうか実演する場面まであった。今回は少額な資金をせこい考え方で使って行った感じであったが、知事は、それを解釈の違いと反論していた。最初に申し訳なかったと陳謝してしまえばよかったような気もするが、それが出来なかったところに、都民の信用をますます失っていくことになってしまったのかもしれない。がしかしいずれにしても感覚を疑られて適切を欠くことは間違いない。知事と云う要職に就く人のことゆえに、基本的に問題があるということである。クリントン氏だって国務長官時代に電話の使用について公務と私用を混同して非難の標的にされているくらいである。公人は、公私を区別をまきまえないことがいかに拙劣かと云うことである。相変わらず金と政治で醜態を演じ恥ずかしい思いをし、国民は何ともやるせない気持ちである。
    権力の座につくと、それまでの信念が失われて傲慢な振る舞いを演じて憚らなくなるところは、やはり人間としての修業が足りない結果かもしれない。そうしたところを見抜けずに知事として選んだわれわれ都民にも、政治の責任がある。図らずも、選挙の時はいずれもトップ当選を果たした人物であった。成功者はそれまでには、いずれも苦労を重ね、世間的には秀才の道を歩んできた人物である。結局、学者とかインテリにありがちな常識不足の世間知らず、人間としての修業不足の点は歪めない。残念である。公を忘れて私にしがみつく政治家は、もともと政治家になる資格がないことを肝に銘じるべきである。歴史は繰り返すでは情けない。悪しきことを繰り返すことがあってはならない。金と権力に執着し、人間的な温かみのない人は、トップに立つ資格はない。
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   東京都知事の進退を嘆く

期待さる東京都知事の舛添氏秀才を襲う逆境の波

艱難と辛苦の末に手にしたる都知事の職を追われける身に

執拗に抵抗しなほ嘆願すされど信任を得るに至らず

執拗に抵抗すればするほどにこれを称して蟻地獄とも

選ばれた身を自覚せず私に戻り公を忘れた愚かなるさま

東京都職員たちよ奮起せよ公僕として職に仕へよ

己が身の利得に走り民衆の福祉と栄えを忘る政治や

都知事らの二代に渡り公金に手を付け隠し金を手にせん

外国の報道による舛添のせこい勘定で首を切らると

公金の何たる意味も理解せず公職に就くしかもトップに

日本の恥だと文芸春秋が舛添都知事を指して論じぬ

成功の道を収めて些細なるミスを犯して身を落としけり

常ながら政治とカネのつながりの恥部を晒して堕ちる政治家

灰皿と金はたまれば溜まるほど汚くなると諺にあり

権力の座にしがみつく執着さあきれて尚も寒気覚へし

哀れなりああ哀れなり東京都舛添知事の辞任するさま

猪瀬氏に続き舛添氏も落馬せり政治とカネの罠にはまりて      6月15日

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参議院選公示    240万人の若者たちの新たな政治参加

  6月22日に参議院の議員選挙が公示されて、投票日が7月10日に決まった。今回の選挙では、有権者が20歳から18歳までに引き下げられて、新たに240万人の若者たちが有権者に参加することになった。正しい、正確な政治意識を持って投票に参加してもらいたい。謂うまでもなく、日本の未来は、力強い諸君たちの双肩にかかっている。内外の厳しい環境と状況を踏まえて、日本の進路を決定する貴重な一票の行使に、溌剌と参加してもらいたい。そして、この国の安寧と繁栄のために、謂うなれば確たる社会意識と、政治意識を踏まえた君の人生の第一歩を記してもらいたいと希望している。
   思うに悲観論を述べるつもりはないが、日本の政治的、経済的情勢も複雑的に及んで好ましいものではない。そうした日本を取り巻く世界情勢も混とんとして、予想を立てることも難しい状況である。何故だかわからないほどに混とんとしている。アメリカの大統領選挙の状況を見ても、異様な感じである。劇的な流れが、アメリカ社会に起きているかもしれないが、それにしても将来の指針がつかめない。大統領選挙は今年11月に行われるが、民主党のヒラリークリントンと、共和党のトランプとの一騎打ちは激しさをまし、意見は極端に対立している。むしろ今までにない魅力に欠けた選挙と云える。避難、誹謗の打ちあいで、内容が幼稚で浅薄である。激しいから、刺激的だから良いというものではない。的を絞って政策を論じ、保守主義にならずグローバルで、国際感覚に満ちたものであってほしい。
   又中国の政治、外交、経済の方向性も定まらず、世界情勢に何かと影響を及ぼしている。38年前に我々は経済使節団を組んで、時の中国北京を訪問して大歓迎を受けた。私が一行の団長を務めた。席上、中国高官らも出席して、北京の大会堂で多くの中国高官を交え、有意義な交歓会を開き、日中合弁企業の機運を拓いて、画期的な成果を上げてきた。今の中国の経済的大発展を見ると、当時と比べて格段の差、まさに天と地との隔たりを感じるほどに、その成長は驚異的である。それだけに中国の変化と、中央政府の一挙手一投足は常に世界を揺るがすほどに重要性を帯びている。あの時は、昭和経済会の顧問だった参議院議長の安井謙さんの親書を携え、「忍」と記した墨書に色紙を携えて、お土産として贈ったのである。交歓会場の模様を写した一枚の写真が思い出深く、今も昭和経済会の部屋の壁に貼ってある。ちなみにあのころの中国の人口は9憶7オ大万だった。現在は13億を越える人口構成で、4億の人口が増えている。経済規模も日本を越して、世界第二位に君臨している。その中国は、例えば海洋進出を国策として、南海諸島や、日本の尖閣諸島周辺に対し、力による現状変更を試みて、東南アジアに軍事的圧力を行ったりしている。これは中国に対する不信を高め、緊張を齎している。
   EUにおいても、加盟諸国間の経済的実力の差も露呈されて、底流に微妙な対立が生じてきている。EUの成立の成果は、第二次大戦の教訓を受けて意味深く発足したものである。ヨーロッパ統合を目指した大経済圏の結成に成功した、輝かしい、壮大な実験とまで言われた。経済的統合の暁には、政治的統合を目指す壮大なドラマであり、それは広く世界に及ぶ人類の悲願でもある。ギリシャのデフフォルトや、イギリスのEU離脱が取りざたされる始末に不安を禁じ得ないが、難問を切り抜けて平和と繁栄への道筋を付けて行ってもらいたいと念願している。くどいようだが、それは人類の悲願の突破口である。
   シリアをはじめとして、未だに止まぬ経済的理由と政治的混乱で、不幸にして益々増大する悲惨な難民の続出である。シリアはアラブの春以来、中近東に大きく流れた改革のあらしで、次から次へと専制君主政治が打倒されていった後遺症の一部として残っている残骸と混乱である。良し悪しはあるものの、自由、民主を叫んで打倒された専制国家のあとの混乱の方が、マイナスとしての影響が大きいのである。統治なき後の政治的秩序は破壊され、治安と人心は乱れ、経済は混乱し、取る成果は何もなかったと云っていいかもしれない。シリアはその後の米・露の代理戦争の場となって、多くの民衆は犠牲者となって、かろうじて助かった人々は、悲惨な難民となって放り出されたのである。今もそうした悲劇は続いているままである。
   そうした混乱に乗じて、テロの続発である。私の記憶に鮮明に残っている光景がある。アフガニスタンに侵攻した時のアメリカのブッシュ大統領の演説である。テロの首謀者オサマビンラディンの引き渡しを拒否したアフガニスタンのアルカイダを先ず侵攻してこれを撃破したが、その後のイラクのフセインをテロの根源と断じて攻撃を開始した件では、国連決議をえないままアメリカ単独で大々的な軍事作戦に出た時の話である。ブッシュはニューヨークの国際貿易センターを襲ったアルカイダ一派をかくまって援助しているのが、イラクのフセインだと断じて、疾風怒濤の如き攻撃を展開し、国連の決議を得ずに単独の軍事攻撃に出た。これには今もって疑念を持っており、訝しい行動だと思っている。智慧のないフセインもフセインだったが、それが最初の誤りであり、アメリカの大きな歴史的誤算であった。このことを契機に、世界を暗黒のテロ誘発の源流となっているのである。この源流を少しでも食い止めなければならない。現状は、シリアの内戦状態を、アサドの取り扱いを、世界が真剣になって考えるべきである。 そして世界から、この地上から貧困と飢餓と暴力を、撲滅していかなければならない。
    斯様に世界の状況を一見しただけでも、難問山積である。而して日本国内を大観するに、大きな内政問題は二つ、 アベノミクスの真価を問われるのと、安全保障関連法案の問題の是非をめぐっての問題である。安保法案については、政府与党は議会の三分の二の議席を確保して、憲法改正の発議を得ようとし、野党は一致してこれを阻止しようと連携して選挙戦に臨んでいる。最大野党の民進党は、共産党を含む野党連合を結集して、自公民に対抗しようとしている。国民の意思決定の重要性を考える選挙であるがゆえに、若い諸君たちの賢明な判断が、日本の将来の方向を決定する大きな転機となる。 有権者の数は、新規に240万人の若者たちを加えて熱気を帯びている。道半ばのアベノミクスの持続と成功も大事だし、憲法改正の発議の是非を問うかもしれない重大な岐路に立つ選挙である。日本の自由と民主、平和と安全と、繁栄を裏図けてきた70余の歴史は誇りであり、世界に範たる事実である。いずれにしても国民の平和と安寧を以て、この国を治めて行くことが大切であり、世界がこれを以て範となし、政治の道を歩んでいくことが望まれる。そうした世界に国際社会が、一日でも早く達することが出来ることが最善、最良の道であることは言うまでもない。今回の参院選挙では意思決定を問われる私自身も、一国民としての自覚に立った一票を厳粛に行使したいと思っている。 6月22日  続


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イギリスのEU決定

   23日に行われたEUの残留か離脱かを巡る国民投票は、離脱票が残留票を上回り、英国のEUからの脱退が決まった。EUの歴史的な転換点となった今回の決定は,まさかの展開に、世界の各方面に衝撃を与えている。1993年に発足したEUは、その後の加盟国の参加によって経済的拡大を続けてきたが、離脱する国が出たのは初めてである。しかも中心的加盟国の英国の離脱問題は大きく、離脱がもたらす影響は大きく計り知れない。経済的な混乱はもとよりだが、世界政治の動向を左右する大きな要因となる。ポンド・ユーロの急落にもみられるとおり、日本円も一時100円を割り込んだ。株式も日経平均で1000円以上も急落して、金融市場に不安が広がっている。今夜ひらかれる、ニューヨーク株式市場の動きが気になるところである。
   世界の秩序の確立と、平和的統合を標榜していく未来に対し、まさかの結果に、英国民の、独善的な意思決定と国民性に唖然とするばかりである。 EUの発足は第二次世界大戦の反省から生まれた。国際的な協調のもと、画期的ですぐれた経済、政治体制を目指す世界的機構であった。指導的立場にある英国が、責任あるものの大局を身誤る判断には困ったものである。 何かある重要な問題が生じた都度、国論を二分するような国民投票に訴えるという手段にも、大いに疑問がある。時のすぐれた指導者は、そうした国民の動きや対立を冷静になって収めて行くようでなければ、何が何でもそうした手段に訴えるということであれば、民主主義のはきちがいであり、国民への無責任な丸投げと称されても仕方がない。政治的な指導的立場にあるものは、そうした意見の対立を是正して国論を正しい方向へ導くことに大きな責務を負っている。安易な道を選び民意を問うという美名に隠れてスル、国民投票という手段に出ることは、政治家の使命放棄であり、重大な責任回避も甚だしい。ヨーロッパ共同体の様に、連携を無視して自国の利益のみを意主張したりするところは、如何にも利己的であり、孤立化を招きかねないし、混乱の原因を作るようなものである。世界の指導者たちは、こうした事態に冷静になって対応を考えるべきである。
   英国は昔の大英帝国を夢見ようとする、国民の妄想に陥っている。うぬぼれと妄想である。今回の投票結果についても、真剣に考えて投票した国民は少ないに違いない。EUが課している成約なり取り決めについて多少の不満を持っている人が、政府に多少お灸をすえてやろうという軽い思いで離脱派に投票したのが、大きな束となってしまい、結果に表れてしまったと云えそうである。しかしその結果は、大きな痛手になってしまうことを恐れるのである。人間の努力には紆余曲折がある。艱難辛苦に耐える根性と忍耐が必要である。共同体の形成過程にも同じことが言える。好き勝手なことを云っていたのでは、皆の主張が統一されない。離脱は、賢明な決断ではない。利己的主張を優先して、国益中心を露骨に押し出したものである。国際的協調主義を破棄するようでは、EUの理想と、世界の潮流に逆らうものとなってしまう。経済の国際的統合をめざし、然るのち政治的統合へと進めるべき壮大な人類のドラマをくじくようなことをしてはならない。残り27カ国が結束してEUの体制を守り、各国が協調して、ドイツ、フランス、イタリアが、EUのみならず世界の秩序の確保のために賢明な指導力を発揮していくべきである。
   英国が離脱を決めて以上、これ以上の混乱は許されない。去る鳥あとを濁さず、ということわざがある。少なくとも離脱の責任を果たすためにも、早く離脱の手続きに着手し、EUに迷惑をかけないことである。それが英国紳士型を見せる、良い反省的機会となろう。体裁のいい英国紳士なんて言う文言そのものが歴史から消えて、そうした台詞は過去の妄想かも知れない。今回の騒動を見ても実に狡猾であり、信用がならない。義務を負わずに、特権のみを要求することはありえない。二年間の交渉期間があるとは云いながら、離脱通知を行ってからであり、英国は速やかに離脱通知をEUに対して行って、交渉に入るべきだ。そして他国に迷惑をかけずに、早い段階で、世界的経済の混乱の収束を図り、結束して次の解決策に邁進していかなければならない。英国民の多くはまさか、今回の国民投票で、EUの離脱が本心から決まるとは思っていなかったという人が沢山いる。少々の不満を述べてやろうと云った程度の者が離脱組に一票を投じたと思われるが、みんながそう軽薄に思って投票すれば数が重なって勝敗を決しないとも限らない。今更うかつだったとは言えない。何とも救いようのない反省の弁あり、「覆水盆に戻らず」とはこのことである。今や英国の勇み足とかなんとか言っていられない状況である。むしろEUへの参加を希望する国が増えて行くような体制と、環境作りに27か国の各国が結束して努めるべきであし、国際的な支援も必要である。。                                     6月24日 

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 ドフロ会の開催

   
  6月25、26日と二日続いて休みだったが、25日の土曜日には11時半から某会社の株主総会が霞が関ビルであった後、同霞が関会館で昼食会があった。小職が、同会社の監査役を務めている関係上、その責任を果たさなければならない。総会が終わったのが、3時過ぎになってしまった。明けて今日の日曜日は午後一時から、高等学院時代の同窓会の一つである、ドフロ会が新橋の新橋亭で開かれた。15名程度の諸君が元気よく出席した。出席した諸君たちは、むろん達者であったが、中には往時の痕跡を留めぬほどに変貌を遂げて貫録付いた人もいたが、殆どの友人については懐かしく鮮明に昔のことを思い出すことが出来た。久しぶりに酒が入って歓談した席だったので、詳しくは覚えていない。皆の様子は、省く結果になってしまうかもしれない。
  加えて還暦だ、喜寿だ、傘寿だと自分なりに決めつけていることも痛快である。人によっては生涯現役主義でいるので、高齢に従って、若く見られるのはいいけれど、年を聞かれるほど嫌なことはないと私は思っている。 雇用関係に立つ仕事から離れることはあっても、自分でやるべき仕事を必ず持っている筈ある。それは以前から持ち添えてきている趣味であったり、またこれから新たに探し求めて行くものであってもいい。頭を使い体を動かして、目的に向かって進むことである。私は従来の生計の糧を、これからも持ち続けるつもりでいる。いつまでも働いていると老害と云われるようだが、幸いなことに仕事についていて人様に迷惑をかけるような立場にはいないので、それに意外と若作りな面相と体つきなので、謂うなれば生来の得をしているので感謝して、それを日常の仕事の現場で十二分に生かしている次第である。どこの社会にも定年制度と云うものがある。それはそれでしっかりとした理由があってのことで、時期が来ればやめなければならないことになっている。
   私の場合は自営業なので定年制がない。辞めたいときは自分の意志で決定することになる。そのためにも年相応は致し方ないが、出来る限り若者を相手にし、若い人たちから新しい知識とエネルギーを頂戴すべく努めている。
   ところで席上にいた柴田君は千円床屋のパイオニアだが、全国に千軒の店を出すと張り切っていた。柴田君も同様、定年は自分で決めると云っていたが、驚くことに百歳までやるつもりだという。小生は、年齢に制限なく生きている間は、自分を頼りに生きて行くと云って、打ちかえしたのである。
人間は夢を失わず、人に迷惑をかけずに、趣味に、仕事に頑張る努力が必要である。酒がたっぷり入ったせいか、山口君と柴田君との丁々発止のやり取りが痛快であった。柴田君の舌鋒は切れ味が鋭く、天真爛漫なと所があって愉快である。長寿と現役を目指す日野原聖路加病院長は、現場主義で今も働いている生き字引である。二十年前に、ナザレン尾山台教会で親しく話し合ったことがある。日野原先生は大きな組織の中にありながら、ご自身の信念を持って現場に臨んでおられるから敬服している。

   新橋新橋亭は有名な中華料理の老舗である。幹事の桜庭君が以前から準備していたもので、万障繰り合わせて参加した。それと云うのも当初から些少の連絡と都合を聞かれたりしていた関係で、この日のために他の仕事関係は全て避けるようにしてきたからである。この日は家内に自由が丘駅まで車で送ってもらい、久しぶりに大井町線に乗ってJRの大井町駅に行き、そこから京浜東北線に乗って、田町駅で山手線に乗り換えて新橋駅についた。久しぶりに乗り継ぎながら行ったラインだったので、沿線の街並みの変容ぶりを目にして行くことが出来た。普段は、地下鉄日比谷線を利用して地下に潜ったまま銀座に出てしまうので、今日の沿線の地上の様子を見るのは大変な収穫となった。
   新橋駅とその周辺は、戦後早い時期から繁えてきただけに、ここから田村町にかけての界隈はあまり変化していない。駅の野暮ったさも旧態依然を含めて、新旧混濁している地域である。昔のポン引きを思い出しているのではないかと疑われやすいが、この辺りは、無秩序な盛り場の、昔も今も新宿二丁目界隈に似たところがある。横町に入ったりすると、荒っぽい粋人でない限りその雰囲気にはなかなか馴染めそうにもない。
   私は比較的明るい表通りを通って目的地に向かったが、老舗だった何軒かの店が、当世はやりのコンビニになっていたり大衆コーヒー店に代わっていたり、競争激烈な外食産業の店になっていたり、いずれの地域でも見られる威勢のいい店舗進出の現象である。町の変化の激しいことをうかがわせている。老舗のあった場所だけに、新規進出企業は目だった表通りに贅沢に出店しているのも特徴である。その代わり情緒もへったくりもない。金儲け優先だからけばけばしいし、人目につくべく集客力に注目している。古くからある陶器店の堀商店の建物が、唯一古色蒼然としているのが目についた。


     皆の話を聞いて即興に詠んだ披歴した歌
      
植田師の亡きあともなほ教え子の集い相和しめでたかりけり
子弟らのめでたく開くドフロ会今年達者に喜寿?還暦?傘寿?を迎へり
朋友とまみゆ我らがドフロ会新橋新疆亭にて語り楽しむ
この先も紆余曲折の人生を行くはリスクに富みて勇まし
卒業の色紙に恩師の教訓に己れながらに生きてゆくべし 

   会津八一を語りながら  
        中宮寺・半跏思惟像を前に

足を組み前にかがみてみほとけのじてまなこととじて物思ひけむ

みほとけのかすかな笑みに慰めを得てこの寺をたづねけるなり

この寺に静かにおはすみほとけの姿にひかれしばし通へり

物思ひにおはすほとけのみ姿にひかれてけふも訪ひにけるかも

みほとけの指さすほほのつやめきてほのかに笑みてなにを思ひし

宗教的思索にありし瞑想のほとけのかほの安らけきかな

彫りふかき妙なる人に相まみえ深き思ひに触れし我が身よ

      6月26日


     


     

     

   


2016.06.01

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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