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公益社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

VOL.24.10


   10月は神無月

秋がぐっと近くなってきた。つい4.5日前までは猛暑が続き、日々殺人的な暑さだと云いながら、ふと気づいてみてば、荒れくさんも小さな花が咲いて秋の訪れを告げているから、ましてや黄金の稲穂をたわわに就けて実りの秋を伝えてくれる田舎の風情は言わずもがなだと思っている。昨年、尾山台駅近くの花屋さんで買った鉢植えのハイビスカスの朱い花が、今年も見事に咲いて部屋の中を明るくしてくれている。やさしい気ごころの花である。一つずつ咲いては三日ばかりすると大人しくなって花びらを閉じてしまうのが如何にもあはれに感じているが、次のつぼみが又、ほころび始めて真っ赤な花を思う存分に開かせてくれるので、木の先端に五つ、六つの蕾をつけているので、勘定をすればあと幾日花が持つかがわかるというものである。花の造形美を見つめていると吸い込まれそうになってしまうが、この美しさは神様でないと作れない気がして、そっと花びらに手を触れて感触を味わいながら祈っているのである。
  ひめぐりのカレンダーを見ると10月は私どもの周辺から神様がいなくなるという月である。古事記のよると10月は大和の全国にいらっしゃる八百萬の神々が出雲の国の大社に集まってしまうということである。そしていろいろな祭事に加わって五穀豊穣、祖国安寧などを祈ったあと国へ持ち帰るということらしい。
  兼好法師の徒然草の第十一段には、神無月の頃と題して洒脱な隋筆が載っている。一読をお勧めしたい。     10月1日

鉢植えのいつどこにでも美しく咲くハイビスカスの紅きその花

知らぬまにひらく真紅のハイビスカス折りたたみつつとじる命よ

燃えさかる真紅一色に染め抜きて情念の恋告ぐるその人

いっときの命を刻み恋の花惜しみて絶えるあはれその日の

眺めれば三日三晩の命にて燃えつきてゆく花の命よ

さまざまな思ひ出よぎる女(ひと)の影ハイビスカスの花と過す夜

紅(くれなひ)のハイビスカスに若き日の激しき恋のときめきて在り

花ひらく真紅(しんく)の色に情熱のハイビスカスの恋の息づき

我に声かけて親しき紅(九れない)のハイビスカスの恋の花かな

紅(くれない)のハイビスカスに若き日のこころのうちの今に生きよと

よく見れば血のしたたりとも思へかしハイビスカスの情念の内

踊り子の口唇赤き息づきの花のはかなき命にも似て

モンマルトル・ムーランルージュの情熱の夜のさなかに咲くハイビスカスは

大胆に且つおおらかに踊る子のハイビスカスの花をかざして

ハイビスカス真っ赤に咲いた夜の闇怪しく燃えて居眠る能はず

そそのかす我が内に在る欲情の久しく深く染めて消えゆく

ハイビスカス真紅にひらく昼の間は慎ましきに清楚なりしか

火のごとく花を開きて音もなく身を包み逝くハイビスカスよ

さわやかな秋を迎えて咲く花のハイビスカスのいとほしきかな

いずくよりくれない燃ゆる情熱の色を湛えて散り逝かんとす

一木の小さき枝に付く花の真紅の色の情念の色

情念を広げて明かす華の意を解して息をのむも怪しき

いと熱くもゆる情念の夜を明かし朝にすがしき汝れがひとみよ

十日まえ咲くハイビスカスの散りしあと笠又開く新しき花

新しき花のたもとにつぼみ持つハイビスカスのほむらにじませ

今朝開く花の命の短くも次に待ち待つ子らの居まして

我が宅の煉瓦のテラスに置く花のハイビスカスの朱きその花

秋雨の新たな雨にあたらむとハイビスカスの鉢を地に置く

ある時は食卓に又ある時は床の間に置くハイビスカスの活ける趣き


    向かい風の船出 石破新政権

  圧倒的だと思っていた国民的人気のある石破さんの国会における首班指名だが、さっそく野党の立憲民主党の野田さんをはじめ、野党諸君が嚙みついて厳しい非難を浴びせているところである。現実の政治はしたたかであり、首相就任前に国会解散を口にしたり、またぞろ出てきた裏金問題と、統一教会との接点など、旧自民党の傷口をえぐられるような蒸し返しに苦慮している。それを象徴するようなコメントが、今度総務相に就任した村上誠一郎氏がいみじく発言している。石破茂内閣の印象について記者団に問われ、前任者の『負の遺産』をどう解消しながらやっていくのか、非常に難しいと心配している心境と述べた。つまり、自民党派閥と裏金事件や、旧統一教会問題などを挙げていたのである。
  自民党総裁選に勝利したとたんに、東京株式市場では2000円を超す株の急落に張り手を食らった感じである。株価の乱高下にしても、急激な円安についても、市場の反応は石破内閣の不透明な経済政策の部分を懸念しており、残念ながらアベノミクスの、ある意味では負の遺産の解消である。そういうものに対応しながらやっていくのは非常に厳しいと云うわけである。実際に内閣が発足して具体的な政策の発表が行われない限り、石破内閣を一方的に決めつけて攻撃することは、間違っている。10月9日国会解散、同27日投開票は既定の路線である。準備期間は少ないが、いずれにしても国会が解散して選挙運動に入ることは確実だから、その前のかぎられた時間で、石破内閣の所信表明を聞き、野党の代表質問を聞き、その問答を有権者がどう判断するかで投票場に出向き、その結果を見るしかないだろう。
  現実の政権運営には党内の意向もあるし、石破さん独自の政策を打ち出すのは難しいが、余り大衆向けする政策を打ち出したりすると、例えば所得格差の是正を以て消費税の補填を図り、法人税の引き上げなどするとなると一遍に景気の減速を招いていたずらの混乱をきたすことになるので、健全となりつつある賃上げも帳消しになりかねない。急激な変化に対応できない多くの経済的側面があるし、穏健な政策の継続が求められる。その上で革新的な政策遂行の道を選んでいってもらいたい。光栄にも、我が昭和経済会の講演会では、石破さんのお話を親しく伺ったことがあり、いろいろな側面からそれを意義深く思いだすのである。
  波乱含みの自民党の命運を背負って登壇した石破さんの、これは天命である、人格、見識はもとより、貫禄ある風貌と受け答えが少しでも生かされるよう大いに期待している。幸いにして今日まで日本は官民の政策よろしきを得て、経済発展と成長路線は好調に推移してきた経緯がある。これを継続させていくべきである。
  総裁選出の決選投票となった高市さんを僅差であるが、大逆転で勝利をした石破さんに多くの国民が安堵したことは、自民党内にくすぶっていた極右思想をの芽を摘まんだことであった。EUなど、ともすると世界的な右傾化が顕在してきている昨今、日本にとっても非常に危惧すべき傾向である。日本では、極右派を象徴する靖国神社参拝を云い続け、これに固執した対立候補の高市氏、彼女が敗北を期したことは大いに安堵すべきことであった。小生が臆病者かもしれないが、戦前の軍国主義的独裁政治を経験している人たちも数少なくなってきているし、政治家のなかにも多くいて、無節操な主義主張を繰り返す政治家も多く散見される時世である。子供心に覚えているが、街中を憲兵が馬に乗って闊歩するさまや、日の丸日の丸を振って出征軍人を送っていく町内の様子、戦地で名誉の戦死を成し遂げて旗を振って遺骨を抱いた葬儀を見たりするとき、B29が編隊を組んで銀翼を輝かせて飛んでいくとき、連日のごとく焼夷弾攻撃にさらされて夜中の煙火の街を逃げ惑うとき、沖合から艦砲射撃を食らったとき、焼夷弾で焼けつくされた街なかと横たわる焼死体、火炎と熱風で山となった言問橋や吾妻橋の焼死体、熱さのあまり隅田川に飛び込んだ死体、そして一面を埋め尽くした累々とした人間の亡骸、多くの人が食べる飯も底をつきひもじい経験をしている時、思い出すことは沢山あって、心配なことは尽きない感じがする。そして想像するに今以て恐怖におびえる原爆の投下である。あの瞬時に受けた恐怖の地獄絵図は、物申す術が分からないほどの心境に突き落とされるである。
  皇軍を名乗って戦死した若者たちを思うと、慰霊とは言いながら、空しく命を絶っていった多くの軍人たちを思うと、賛美し奉るような心情にはなれないのである。そうした行事に参加する人たちは、もはや戦争を体験したものは皆無である。だからと言ってうんぬんするわけではないが、懐古趣味に陥って心酔するなど軽薄に過ぎ、まことに以て無責任な気がしてくる。しかし日本を取り巻く安全保障に関して軍事費の増額を示唆する辺りは、無定見に進んだりすると周辺諸国の反発を招きかねないので、国内はもとより、連携する諸国に対しても「納得と共感」のいく説明が必要になってくる。息苦しい体制を組んで自らの体力を消耗しないよう、何らかの息抜きが必要である。
  ただ極端かもしれないが、村上氏のへ発言は歯にきぬ着せぬことで知られ、安倍晋三政権下で当時の安倍首相への批判を繰り返して波紋を呼んでいた経緯がある。しかしながら石破首相にとって国内情勢ばかりでなく、複雑な国際情勢のなか、難しいかじ取りを迫られる状況が早くも台頭していることに留意しなければならない。石破内閣の発足に対し世論調査の支持率51パーセントは低調な出だしだが、船出は厳しい見方をされても、船は舵の取り次第で、待てば海路の日和ありで、政治的にも基本的姿勢を堅持して、人間的にも落ち着いた重厚味を醸し出していけば、石破さん独自の政治を打ち出し、国民に目を向けた「納得と共感」のいく政治が長く行われていくはずである。
  石破内閣の発足とともに何はともあれ石破首相のご健康を祈り、安定した政策運営がなされていくことを切望し、国の栄えと、我々国民の経済的安寧と、平和と発展を切に期待するところである。    10月2日

紺碧にかがやく大空

澄み切った秋の空が、青くさわやかに輝いている。眺めていると自ずから胸が大きく開いて、精神は溌剌として気概が壮大に広がっていく感じである。10月4日は小生にとって特別な日である。先ず父と母に感謝したい。正午過ぎ、勇躍して会社に赴いたところ、間もなくしてM社のH氏が颯爽として訪ねてこられた。仕事のことで一緒に協力し合い、二十年前にお世話になったことは忘れられないが、その後ニューヨーク支店に赴任し大役を務め、今年の人事異動でつつがなく帰国して会うのはこれで二度目である。K大学時代にラクビーの選手だっただけに根っからの好青年であるが、今日の好日に見えてく下さったのは、これも良しとする不思議な縁である。オフィスで歓談のあと、お茶を飲みに近くのノワールの喫茶店に誘った。
  帰国して間もないH氏が都会の変貌ぶりに驚くくらいだから無理もないが、目前にあった富士屋ホテルが無くなってしまい、今は八重洲の目抜き通りの再開発の波に沈んでしまって、昔の面影は見るべくもない。富士屋ホテルの二階にあったレストランで、ビーフを何枚もかっ食らったことなど話し合って爆笑してしまった。仕事を通じて、今日の石破さんではないが、昔のこと、関係者全てが「納得と共感」を得てウィンウィンの形で大きな事業を成し遂げた思い出は、Hさんを前にして話していると昨日のことのように思われてくる。しかし数えてみると20年以上も昔の話に遡るのである。腹蔵なく話し合っていると、よどみなくくみ上げて見る井戸の水のごとく滾々と、まるで生気を取り戻すような気持になって青春がよみがえってきた。   
  又、普段お世話になっている八重洲内科の長尾先生からは祝賀の言葉を頂戴し、贈り物まで届けて下さり感謝の念でいっぱいである。祝意の文言は誠に綺麗で類まれなる詩歌のように思われるので、下記に掲載する次第である。
 「太陽の輝きが安らぎを増し、自然に従順に、慎ましやかにそよぐ木の葉は、色鮮やかに変身して舞い散る日を辛抱強く待っています。私たちも自分という色に染まって生きている身を真の意味で愛おしみ、自然の想像の賜物として、誇りを持って過ごしたいものである。 辛い時も悲しい時もなお、宇宙の一露のような存在の自分に注がれる恩恵に感謝しつつ、自分を愛するように他人も愛し、赦し、秋の日差しのように心豊かに生きてまいりましょう」  と記されたあった。先生から贈っていただいたこの文言は、私の人生訓として胸に刻んでいくつもりである。                 10月4日

 

 

     自民党の公認問題

  今夕、先ほどテレビニュースで知ったが、なかなか下せない決断だが、石破さんは自民党公認問題で自らの信念をよくぞ守り通したと高く評価したい。裏金問題で疑惑をそのまま残して自民党の懲罰を受けた議員に対して、一定枠を設けて自民党の公認を排除することにきめた。つまり次に該当する場合は公認しないとするものである。
  1〉党から「選挙での非公認」より、重い処分を受けた議員  〈2〉「非公認」より軽い処分でも、現時点で引き続き処分が継続しており、政治倫理審査会で説明責任を果たしていない議員  〈3〉説明責任を十分果たさず、地元での理解が進んでいないと判断される議員――を挙げたのである。
  国民に信を問う大事な総選挙に際して、玉石混合の、無茶苦茶を避けることが出来、自民党支持の有権者は取り敢えず、自信を以て投票所に赴くことが出来るだろう。だからと言ってこれで裏金と派閥と、金と政治の根深い自民党の背負う問題が解決されたわけではない。賛否両論はあるが、一線を画すことは有権者に対して、自民党が正直で明朗な雰囲気を作ることで、最低限必要なことである。改革に取り組む姿勢は、依然として問われている。立憲民主党の野田さんたちの、野党諸君らの攻撃は止むことはない。それでもなお自民党の当面の障壁、難問を解いたことは、瞬時をついて歓迎すべき石破さんの英断であった。

  石破さんは又、「選挙は民主主義の根幹そのものである。有権者一人ひとりに 真摯 に向き合い、説明を尽くし、党として国民の皆さんの「納得と共感」を求めたいと語った。納得と共感は、石破さんの政治姿勢を貫く原点である。疑心暗鬼になっていた国民の心情に迫るもので、限られた時間であるが、うやむやにしないで毅然とした結論にこぎつけたことは、苦渋の決断は良識の勝利であり立派であった。党勢が減ずるか増すかは議論されようが、難破の危険に晒されて揺れ動いていた自民党号という船が、安全確保の復元力を取り戻した感じである。
                             10月7日 

公益社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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