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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.10-10 支離滅裂な世の中

支離滅裂な世の中・・・でも

このごろ内外の政治、経済、社会のことがらが余りにも目まぐるしく動き、しかも変な兆候なので、どこに視点をおいて、どこに軸足をおいて物を考え、物を書いていいのか判らないくらいである。迂闊にトライすると、飛んでもないところで揚げ足を取られて、自分の身に火の粉が振りかかってこないとも限らない。それは慎重にしすぎて、自らリスクを負って突撃するチャレンジ精神の欠如と云われてしまえばそれまでだが、(それと年齢的に次第にそうした指向性を帯びてくるといってしまえば、身も蓋もない話になってしまうが) チャレンジしようとする対象に対して、筆のきっかけと内容は全ては勘である。だからといって軽率に扱うものではなく、出筆は一点突破の真剣勝負である。思うに、人の解釈や、見方がそれぞれにあって、一つの事柄にそれぞれに違った考え方や行動を採り、そこに対立や、妥協が生まれてきて即ち、試行錯誤があってのちに、結論を出すわけである。
   しかし、一ヶ月が経過して考えてみると、私の静観しているのはそれで正しいような気がした。正解だったと判断している。つまり弥次郎兵衛のようにふらふらしている世間一般の様相だと、この一ヶ月近く論評しても、視点も定かでないし、軸足も定まらず、確たるものでないがゆえに、それを見事に反映して、世の中の現象も支離滅裂で、よく言えば全て試行錯誤の繰り返しであり、その過程であった。ジャブの応酬であり、決定打となるような物はなかった。そうした時には、現象に目を奪われないで、古典的な物証に心することが肝要だと思って、私の好きな短歌や俳句に心を配り、くだらない事象に惑わされずに、専ら遊行の世界を逍遥したことになり、心の陶治につとめることができた。視点を確たるものとするには、自分の感情の動揺や、偏見、先入観を鎮め、軌道修正を図ることも大切であるからである。予断を持って臨むことは危険がある。
   周囲の現象で、政権政党の民主党でも代表は菅だ、小沢だの問題があったり、村木元局長のデッチ上げ事件があったり、尖閣諸島での日中の緊迫的対立があったり、北朝鮮の後継者に家督相続の問題がでてきたり、そのうちに円高が進んで83円台になったりして、記録的猛暑の夏で本邦の時が過ぎたりしていった。身近には知人の相談を受けて立った案件で、話し合いが出来ず裁判沙汰になって、一審の全面勝訴で喜んだのも束の間、高裁での逆転敗訴になったり、これには驚いて自分の耳を疑った。検察の牙城が揺らいでいるところに、まさか裁判所までがとはいいたくない。よくあることで正しい判断を得るための方法だが、いざこれが身近に発生すると野次馬根性でなくなって真剣になってくる。しかし、よく考えてみると、こんな極端な判断がどうして出るのだろうか。こうしてみると三年もかけてきた一審の裁判官は、二審の裁判官からするとみんな変なのだろうか。つまり白い紙を見せて、一審では赤い色だというし、二審では黒い色だというのと、胆略かもしれないが素人目にはどうしてもそう映ってしまうのである。手品にかかったみたいで、笑いごとではないなあと思ったのである。
    
    今、日本の国内では依然としてデフレ脱却が重要課題である。一つには地価の下落が続いていることである。同時に株価の下落であり、上昇が期待できず、証券会社の閉鎖が水面下で続いていて由々しき問題である。この二つが上昇に転じない限り、日本の経済の回復は不可能である。規制緩和と税制を含めた、抜本的な解決策を実行すべきである。小生の知人が勤務先の証券会社が解散して、失業の身となった。資本・金融大国、技術大国を以て任ずるわが国でこの有様である。根本的に考え直さないといけない。
    平成二年に行われた総量規制で、その後の緩急を欠いた政策で野放図にこれを放置し、結果、日本経済をガタガタにしてしまった。特にバブルの過剰な流言で、土地を持つことが罪悪視すらされて暴落して奈落の底に落ちてしまったきりである。自然治癒の限界を越え、需給関係の市場原理が作用せず、回復不能が続いて二十年余がたつが、今以って駄目である。土地の流動性について何ら改善策が打たれてきていない。ここに基本的な誤りがある。総括的には、日本がこうしたデフレ、構造デフレから脱却するには、内外企業をしてこの安くなった土地、労働力を有効に吸収させるには、投資と生産を選択する環境を作ることが急務である。先に述べた税制、そして規制の軽減、撤廃、そしてFTAの促進などを通じて、不利におかれている日本企業を外国企業と同じ条件で戦わせて拡大を図るしかない。
    一斗枡の中に、一升枡で大豆を十杯入れると数量的に満杯になる。別段、ニュートンが言ったわけでもない。当り前な話である。この一斗枅を三回、四回と揺り動かすと、ほぼ八十パーセントぐらいまでに減ってしまって、枡に二割ぐらいの隙ができてしまう。つまり一斗枡のなかに静かに物(ぶつ)を盛って、定規差しで平らに引くと、正しい秤りができる。しかし余計な手心を加えると、違った結果が出てくる。原理を知っていれば文句は無いのだが、ことは全てそうはいかないのが世の中である。夏目漱石の、知に働けば角が立つである。大豆の袋詰めや、米の俵詰めは、人の目を欺いて判らぬように素早く袋や、俵に詰めなければならない。昔から目ざとい米屋の丁稚がいっていたことである。たしかに昔、米や麦を供出するときや、売りに出す場合によく注意してやったことである。物を入れた後、枡や袋を揺すったりしてはいけないのである。それも時と場合による。
    物理的に揺さぶるわけではないが、現象は時間が経つと揺らぎも落ちついてきて止まり、正常に戻ってくる。尖閣諸島の衝突で、日中問題も冷静になって落ち着けば、カッカときたお互いの頭の中を、静かにまとめていってくれる。それまでガタガタ云って騒いでいたのが馬鹿なくらいに見えてきて、時間のロスだったことにも気付いてくる。
    マルクスが書いた共産等宣言がある。冒頭に「ヨーロッパに幽霊が現れた。共産主義という幽霊である」とある。夢物語りと思っていた共産党の政治・経済思想の実現する手段としての暴力革命が、まさか今の中国に抬頭して、近隣諸国と世界に対して向き合ってくるとは思わないが、領土問題で、力による恫喝的行為で、外交関係を解決しようとするのは如何なものだろうか。穏やかな温家宝首相が、国連総会の余席で、こぶしを振り上げて日本が逮捕した船長を即時釈放しろと威きり立っていた姿は、びっくりな思いをさせた。政治的一党独裁を以て、十三億の国民を統治する政治組織は、それなりの理由があっての事であるが、跳ね上がり分子に撹乱されると一気に流れが変ってくるので警戒しなければならない。当局も大変だろうが、事態を冷静に見て、時間稼ぎに徹して、沈静化に勤めているのだろう。お互いに装ってでも冷静になる必要がある。日本には、人の噂も七十五日と言うことわざがある。黄河の流れではないが、竜虎の如く荒れ狂ってもらっては、内外は困惑してしまう。最近、中国に対し、民間経済外交もカントリーリスクが生じつつあると云う馬鹿げた風潮が、当局の努力で、極力流布しないようにしてもらいたい。中国は経済大国として今や破竹の勢いで進撃中だが、ブレーキがかからなくなってきてしまうと、大河の如く激しさを増してきてしまうので、早いうちから穏やかに手を打ってもらいたいものである。書生臭い理屈をこねて恐縮だが、マルクス理論によると、経済の自由化、市場化が進んでくれば、即ち経済穂諸関係の次第が、これを社会の下部構造と称し上部構造を決定すると云うマルクスの理論が勇敢に台頭してくるだろうか。     
     古代社会から土地に寄りすがり命をかけて人間は生活してきた。その重要性は今でも変らない。マルクスでさえ、経済の基本的三要素として、土地、資本、労働を挙げている。現代経済社会においてもこれは依然として変らない。否、土地の重要性はむしろ上がりつつある。土地の下には、或るときは膨大な資源が眠っているからだ。だから、人間の住めないような土地にだって、国同士が領有権を主張してにらみ合ったりつばぜり合いを演じているわけである。 
    然るに、日本は今や、もともと資産としての土地の効用性が高いはずだ。価値が喪失したままの状態である。これでは国も、国民も浮かばれない。小さな家庭を持つ意欲すらなくなってしまう。国民は努力する気概を持たないだろう。自由主義経済で、努力が報われて一家を形成し、家庭を持つことが、人としての目標で無ければ、勤労意欲も努力も沸いてこないだろう。一家が家庭を持つときの家庭とは、文字通り家族が住む 「家と庭 」 の事である。土地の上に住み着くことが人間の本能である。この家庭こそ、夢であり資産であり、安全なものとして国家が守らなければならない。
    国土を潤すとは、土地の稀少性を以て付加価値をあげ、流動性を高め、資産価値の拡大をはかることである。さもないとタイミングを失った日本は、新興国が持ちつつある潤沢な資金を以て、日本の土地の買収を図ってくるだろう。豊かな土地とは、日本のような民主主義が定着し、その政治体制が続いていることであり、多くの人たちに納得いくような平和主義、自由主義と表裏一体の姿である。国の法治性と安全性が、外国人の目にとっては最大の魅力である。
    不景気から脱出できないのは、石油ショックでもないし、リーマンショックでもない。平成二年に始まった不動産の融資に対する強烈な規制であり、あの時の政策の失敗がいまだに続いている。即ち、当時から依然として改善がなされていないのである。発想の新規、且つ大胆な転換が必要である。民主党に期待したが、前例踏襲でリスクを負おうとしない。相変わらずの権力闘争にうつつを抜かしている。ようやく峠を越した感じであるが、今度は国民の期待に沿って全精力を注いだ政策面での発想の転換である。
    膏薬で傷口を張るような、その場限りの人気取り政策では病根は癒しがたい。バラマキ予算みたいな仕組みを撤廃し、有効な経済政策を打ち出さないと、日本は、あなた任せの旧態然の状態が続いて、他国にどんどんと追い越され、早晩、吸収されていってしまうだろう。老朽化し、陳腐化している経済構造の実体に早く気づき、反省し、実行の道に邁進すべきである。唯々諾々として時間を掛けている余裕は無いはずである。  あわてて書いていたら、寝言のようなことになってしまったようである。寝言を寝言として済まさないで、本音で以て臨んでもらえば、民主党も絵に描いた餅でおわらないで済むだろう。 住みにくい世のなかだからといって、人間は霞の国に行って生活するわけにも行かない。経済のバロメーターである衣食住で、今なお住が覚束ない。読んで字の如し、 なんとしても住む家と、土地の就いた、庭の就いた形を以て、はじめて「家庭」であり、人間が住めるような環境と条件を可能にするような政治をしていったもらいたいものである。 これが満たされていれば、色々と難しいことをあげつらって論じるよりも、単刀直入、よい政治、よい経済、よい暮らしのバロメーターとなるからである。 10月4日


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      札幌講演親睦会、開催。

    去る九月10日、札幌グランドホテルにて当会主催の講演親睦会が行われました。古くから釧路の地元に強固な地盤を持って地方経済の発展に活躍する当会の会員企業の要望によるもので、今回は当会の理事である高木新二郎先生に講師を務めていただき、札幌まで出かけていただきました。
    高木先生は、現在、野村證券株式会社の顧問を務めています。産業再生機構の委員長の要職につき、バブル経済の崩壊で不況に陥った大型企業の再生に取り組み、多くの企業再生に辣腕を古い、以て日本経済の回復に大きな活躍をされて多大な貢献を果たされました。
    弁護士界から任官第一号の裁判官に就任し、後、山形、新潟地方裁判所の所長を務め高裁判事に戻り、斯会に異彩を放ってきています。退任後、弁護士に復帰、大型倒産事件を次々に処理し、特に協栄生命の4兆6000億の債務処理を電光石火に解決したこことは未だに記憶に新しいところです。    私の知る限りですが、朋友である氏の生い立ちを語ると、その豪放磊落と、正義感溢れる歩み方は多くの人に、とりわけ若い人たちに多くの教訓を与えるものではないかと思っております。蓋し、中学校時代からの朋友ですが、唯々諾々の道を嫌い、世に言うところの天才の出世コースを捨てて、ひたすら努力研鑽、一匹狼の武闘派を以て世を渡ってきた学兄です。波乱万丈、紆余曲折をへ、若き頃は艱難辛苦に耐えて、思いを貫き己を研磨することに邁進していました。佳境に至り人生の王道を歩んできた彼の苦闘の道は、時に豪快そのものであり、時に緩急を得て他の追随を許さぬものと思っているので、私の見識と評価は間違いありません。日本経在新聞の人気欄である私の履歴書にこそ、抜きん出て掲載するに価いするものだと、かねてから思っているところです。
    多くの論文を発表、沢山の著書を発刊されていますが、全ては法律に関する専門書ばかりです。東京大学の法学部の中に民事紛争処理研究会なる財団法人の研究機関があります。その中に高木新二郎賞基金が設けられています。創立の時には私も微力ながら参加しましたが、この基金は、若い法律家や、弁護士や、研究者を資金的に支援して、将来の優秀な人材を育成するために設けられたものです。毎年、優秀な論文を発表し活躍した諸君たちに贈られます。日本学士館での授与式には私も参列したことがあります。
    ところで札幌の講演会での模様については、月刊誌・昭和経済にて掲載する予定であります。昭和経済は、各界の第一線で活躍する著名な先生方の時局論壇を始め、講演記録や、会員各位の情報を掲載し、相互の啓発・啓蒙に大いに役立ってきて、77年が過ぎようとしています。文字通り、日本の近代史を綴ってきた生きた証人でもあります。学生諸君や、ビジネスマンにはいつも言っていることですが、これ一冊をもって世に臨めば、他の勉強にまさるとも劣らぬ広い知識と、豊かな情操と、人間陶冶に役立つこと計り知れないものがあると伝えておるところです。    10月4日


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ノーベル化学賞の受賞、 根岸、鈴木両博士に

    明るいニュースが飛び込んできました。日本人の化学者二人に、ノーベル化学賞が授与されることが決まりました。
    根岸さんは旧満州で生まれで七十五才、東京工大卒業後1958年に株式会社帝人に入社、のちに研究のため渡米、ペンシルベニア大学で博士号を取得しました。かってのノーベル化学賞を授与した著名な故ブラウン博士のもとで研究を続けまその気、その気概がどうも湧いてこない。
結果、ホームページで、九月の理事長室からの発信は、短評に終り、当たり障りのないものとなった。載せるべき原稿は整って書いてあるが、いつもの通り,その場限りの即席であり、直感的なので、複雑怪奇な事象については精査、吟味したものではなく、出した。
    鈴木さんは八十歳、北大理学部を卒業後、北大助教授を経て1963年に渡米、同じくブラウン博士のもとで研究を重ねました。二人の共通した研究と成果はともに今回の受賞の対象となり理由となりました。ブラウン博士は1979年にノーべル化学賞を受賞してブラウン研究所を創設、幾多の研究員を輩出してきております。今回受賞した根岸、鈴木両博士も今までもノーベル章受賞候補に上がってきたこともあって、ブラウン博士の威徳と功績の輝きでもあります。
    功績として注目されるクロスカップリング反応とは、炭素原子同士をパラジウムを使って容易に結合させたことで、これによって、多様な産業分野で広く応用、活用されるようになりました。医学の分野でも然り、日常使われている商品に於いても欠かせない物質を多く作り出しています。 
    お二人のノーベル章受賞の知らせは、学術研究、技術立国日本の若者たちに、一縷の希望の光を放げかけるもので、これをもって若い学徒諸君が益々奮起して、日本のため、ひいては広く世界の人々の救済と向上にために尽くすべく、学術、研究に邁進して行かれることを期待して止みません。     10月10日  

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     チリの落盤事故  

    チリの北部にある銅の鉱山で、落盤事故が起きて今日で69日目が過ぎようとしています。事故現場では、地下620メートルの坑道で生き埋めになった33人の抗夫の懸命な救出作戦が連日連夜、突貫工事で進められています。地上から3本の救出用のパイプがうちこめられて、そのうちの一本がようやく地下の現場に届いて、全員の生存が確認されています。地上との連絡が取れて彼らの安堵と喜びの様子は意外と冷静な喜びに伝わってきました。思うに、地上から連絡の耐えた17日間の不安と苦闘は計り知れません。そしてもしかすると今日中にも一本のパイプから救出用のカプセルが搬入されて、地下に生存している抗夫を一人ずつ地上に引き上げる作業が始まるかもしれません。地下に閉されてから70日近く、その不安と苦痛と危険に耐えている強靭な肉体と精神は、感動と賞賛の叫びを上げて励ましの言葉をかけずにはいられません。抗夫たちの強靭な心身を思うとき、あたかも一人ひとりの上に、確かな神さまの霊が乗り移っているのでしょう。被災者の幸運と、神の救いとを祈るばかりです。
    一刻の猶予も許されませんが、危機に直面している坑内の男たちはなんと陽気に、お互いが団結して、恐怖と不安に立ち向かっていることでしょうか。地上で迎える家族たちも泣くどころか、600メートル地下の家族に向かって手を振ったりして笑って励ましているではありませんか。この陽気な場面こそ、正に人間賛歌の真骨頂を見る思いがします。
    報道によると間もなく抗夫たちの救出大作戦が実行に移されようとしています。我々はこの感動的な世紀の瞬間と場面を、固唾を呑んで見守っています。どうか神さま、一人ひとりをお守りくださり、全員が無事に地上に救出されんことをお願い申します。
    救出を待ち望んでいる地下の抗夫たち、救出を待ちわびている家族たちも、救出に懸命の作業の人たちも、これを見守っている全世界の人たちも、ひとしく神さまからの大いなる救いと恵みと喜びが授からんことを!                10月13日。


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頻発する炭鉱、鉱山事故

    資源の国際的価格の高騰も手伝って、今まで不採算部門の部門だった旧鉱山の採掘が可能になって、閉山になっていた鉱山の再開が活発に行われています。そうした鉱山は、今までに稼ぎまくっていた残骸であり、坑道の整備もなされておらず、設備も老朽化して使い道のないものが殆どでありますが、尻を叩かれてなりふり構わずの危険な作業がおこなわれて居るのが多かれ少なかれ現場の状況です。そうしたところでは旧態依然の作業を続け、貧しい労働者が安い賃金で厳しい労働を強いられているのです。知らないところで多くの悲劇が生まれ、多くの犠牲者が出ていることに、私たちは大きな関心を払うべきであります。チリの鉱山の落盤事故も起こるべくして起きた人災であります。危うく難を逃れて、救出されました。こうした影で今もどこかで同じような悲劇が生まれつつあります。平時の怠らぬ注意と、改善が必要であります。
    新華社通信によると16日午前6時ごろ、中国河南省の炭鉱で、今度はガス漏れ事故があって、閉じ込められた抗夫の26人が死亡したとの報道の記事が朝日新聞に載っていました。以前から度々報道されていることですが、中国国内の猛烈な石炭需要に追いつくために、石炭の発掘作業が盛んに行われてきておりますが、発掘技術が遅れているために、各地の現場で事故の多発が心配されてきております。犠牲になる人たちも多く、いずれも貧しい出稼ぎの人たちが大半です。経済の発展に寄与している人たちの本当の姿と現実に目を向けたときに、表面的な繁栄に浮かれて、利益追求に翻弄している人たちが、大いに反省しねければならないのではないでしょうか。
    特に経済大国としての威厳と貫禄を以て、これが本当の実力とでも云いましょうか、世界に寄与しなければならない中国にとっては、内外に正しい報道を発信し、国内の噴出する幾多の矛盾を摘出治癒していかなければならないと思います。細事にこだわらず、大道につくゆるぎない信頼感と緊密間の構築に邁進してくれるよう、大いに期待したおります。       10月18日



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奈良の古寺、仏像展


和歌(うた)を詠んだり、俳句を作ったり、エッセイを書いたり、時局を論壇したりしていると季節の移ろいに敏感になってくるのは当然である。今年の気象は異常であった。春先の冷たい長雨、梅雨が明けた途端に襲ってきた記録的な猛暑、彼岸が過ぎての残暑も異常な暑さだった。十月半ばが過ぎてようやく凌ぐやすくなったと思ったが、今度は急に寒々とした日がやってきて、慌てて暖房器具を取り出したりした。短い秋が、しかも駆け足で通りすぎ、すぐに降雪の報せである。気温がぐっと下がって、北海道はもとより東北地方は雪におおわれた。
    そんな時、台風が発生して沖縄付近にあり、本邦を窺う気配である。雪と台風が一緒にやってくるなど聞いたことがない。確かに、異常気象に振り回されている。気象庁では、今年は寒い冬と予報している。天気予報は当てにならない。一方、世の中もいろいろなことが起きて人々も右往左往し、このところ天も地も騒がしい。人々にストレスも溜っている。健康を損なうことのない生活に心がけたい。
    歌(うた)の世界では、奈良遷都千三百年を振り返って、万葉のこころを旅する日が続いている。先日まで「会津八一のうたにのせて、奈良の古寺、仏像展」が東京日本橋の三井記念美術館で開かれていた。会場が近くでありながら、なかなか見にゆく機会がつかめなかった。淵の同人の大野雅子さんからは、早くからお知らせ頂いて、広目天の写真の絵葉書まで送ってくださっていた。お気持ちに感謝している。会場に出かけたのは結局、小生にとっては最終日となり九月十八日の金曜日の午後五時にオフィスを出て六時迄の四十五分間、充分に拝覧してくることが出来た。時間の長さではなく、受け止め方で心は充分に満たされるもので、満足して帰ってきた。
   とりわけ四天王像と、夢違観音菩薩の前では釘づけになってしまった。美の世界では、豪胆さと優美さの両極の粋を味わうことができた。いつまでも残る印象である。催しで惜しむらくは、八一の作品の展示が少なかったことである。しかしながら忙中の閑、天平の美の世界にしばし逍遥することができて感謝である。
            
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     奈良古寺と仏像展の開かるる八一の和歌にのせてゆかしき

     いかるがの里におはせるみほとけに会ひぬ三井記念美術館

     いかるがのさとのおとめのつきそひにみほとけにあふ美術館にて

     天平の奈良のみやこのよみがえる今ふるさとは錦おりなす

     われもまたうつつごころに夢ちがい観音菩薩にむかひたつなり

                              10月26日
 

平成22年10月4日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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