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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.05-03 土地の流動と景気回復

 首都圏の大型商業施設の建設が、今脚光をあびています。既に同類の商圏が立ち上がって、収客力、収益力を発揮しています。周辺の地域も呼応して、独自の地域性や、新企画を以って対抗し、集客に力を注いでいます。こうした動向が起爆剤となって更に他の区域に拡大していけば、地域開発に新たな効果及ぼしていくことが期待され、土地の活用と流動が、本格的な景気回復に大きく寄与するはずです。地価の下落に歯止めがかからないと、本格的な景気回復は望めません。デフレ状況からの脱却も望めないことは明白です。即ち、この傾向を支援して持続させる政策をとらないと、折角浮上してきた景気回復の兆しの芽を摘んでしまう結果になってしまいます。幾多の経済指標から、停滞気味の景気を以って今、盛んに「踊り場論」を展開している政府ですが、そうした消極的な姿勢でなく、追加政策に積極性、果敢性が望まれるところです。
 今、都心での大型商業施設の開発に踏み切ったのは、例えば三井不動産です。計画によると、5ヶ所でこれを手掛けますが、その店舗面積は全体で28万平方メートル、8万4千坪という大きな規模で、頼もしい限りです。物販、飲食のほか、シネマ・コンプレックスや、美術館なども誘致する予定ですが、是非とも成功裡に実現してもらいたいと期待しています。同社では今まで住宅、オフィスが収益事業の柱でしたが、今後の計画には、これらのショッピングセンター事業を新たに加え、戦略を練り変えました。
 首都圏の高層ビル、並びに商業化の開発に拍車をかけているのが、最近設置された不動産投信、いわゆる「リート」という金融商品の開発です。既に東京証券取引所に上場され、大きな成果をあげています。土地、建物を積極的に買入し、その運用益を投資家に還元するものですが、この力が首都圏の地価の堅調さを支えています。これも持続的な景気回復と、将来の地価の上昇が期待できないと、「リート」も途中で息切れがしてきてしまい、折角手にしたチャンスを無にしてしまうという、それは大変な失敗となり、この際あってはならないことです。
 又、時代的背景として今、大規模の病院とジョイントして、老人医療向け施設のマーケットも、いよいよ拡大する傾向にあります。築地に展開された「聖路加病院」、「国立ガンセンター」はその例であります。今年の独立行政法人化の法改正で、事業化推進に拍車がかかっています。この種の施設で、有資産家に開放されるマーケットは、今後大いに期待されるところであり、法改正後の病院経営の健全化と、拡大化を目指した新しい動きとして注目されてきています。
 医療の技術は日進月歩であり、一方、高齢化社会に対応したフレームを構築するニーズは、日増しに高まっています。ちなみに診療の電子化とデータ化で、病棟は機拭化される一方ですが、こうした傾向は、診療にあたる医師と看護士に対する待遇改善が望まれてこそ、患者に対する真のサービスに直結するものであります。専業者の待遇を改善することが、現場での勤労意欲の発揚と向上につながることを認識しなければなりません。医師と看護士の質的向上が、治療の質的向上につながり、患者の治療の質的向上に直接結びついていくことになります。
 要は、「医師と患者」との信頼関係、「看護士」と「患者」の信頼関係を築くことが「真療」であり、即ち、現場での人問閲係が大切であることの証左です。信頼と期待が現場に大きく育っていくこと、これが「真療」のもといでなければなりません。
 高度な医療技術と、データの電子化が、逆に真の治療、医療をなおざりにされるという、皮肉な弊害も出て来ているのが現状です。そうではなく、「医師と患者」、「看護士と患者」の関係が、信頼と緊張感で立ち上げてこそ、初めて医術の高度化と、施設、データの電子化の効能が十二分に発揮されるのです。病院経営の健全化を目ざすと同時に、医療の基本理念、即ち、「人間重視の哲学」が組み込まれてこそ、真の治療が確立されると考えなければなりません。少子高齢化の社会にあって、医師、看護士の医術の向上に、人間としての観念が加わってこそ、「医療の近代化」は大きく開花するものであります。

(機関紙『昭和経済』56巻2-3号巻頭言より)

平成17年3月9日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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