line

社団法人昭和経済会

理事長室より
LAST UPDATE: 2024年04月26日 RSS ATOM

HOME > 理事長室より

理事長室より

VOL.17.9

 サッカー日本代表、対オーストラリア戦に快勝     賛詠三首


見事なりワールドカップ出場に日本チームの決定致す
2対0オーストラリアを撃破せりサッカー日本代表チームよ
若者の力を示し躍如たりいよよ世界の桧舞台に


   日本代表チームの、強豪オーストラリアチームとの熱戦は2-0で勝った。、攻撃的な戦術に終始貫徹した日本チームの快勝に終わった。シュートの数も十四発に及び、対戦チームの三発に比べると格段の差の内容のものである。
                *
   2018年、 FIFAワールドカップ・ロシア アジア最終予選 の第9戦が昨日、31日に熱狂する埼玉スタジアム行われた。日本代表は2012でグループB3位のオーストラリア代表と対戦した。日本は若手の浅野拓磨、井手口陽介選手の瞬時を突いた鮮やかなゴールで2-0で豪州を下した。井手口選手は21歳の若者である。若い選手の活躍はめざましく、作戦いぇき頭脳はもとより、肉体と精神、それと技術の絶妙なコンビネーションが発揮されていた場面が随所に鮮明であった。これからさらに練習を積み上げて、ロシアでのワールドカップまでには、昨日活躍した選手が全員出るとは限らない。大きな交替を余儀なくされることもあるかもしれない。若い力がものを言って、三十歳後半に至る選手の姿が消えるかもしれないほどの激しさ、厳しさである。試合を終えた本田選手の弁である。
  それにしても昨日の対オーストラリア戦は、日本チームのすぐれた連携を示した見事な一戦であった。私は手に汗を握る思いてテレビ観戦し、懸命に応援した。不思議と安心して観戦できた。これで漸くロシア・ワールドカップへの出場権を獲得した。6大会連続で、本大会出場への切符を勝ち取ったわけで、今後は世界一をめざし、国を挙げて応援して行こうではないか。
   チームを率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は満身の喜びを表し、日本選手の健闘をたたえた。思いは我々と同じである。彼は実に良い男である。     9月1日


_______________________________________

夏の盛り     

束の間の花の命のはかなさの夜空に咲きて消ゆる花火よ

束の間の華麗な光の法界に世のはかなさを悟る故かな

みほとけのかすかな笑みに慰めを得てこの寺を訪ねけるなり

いかるがの里のことなど語りあひ親しき友と明す秋の夜

この寺に静かにおはすみほとけのかすかな笑みに魅かれくるなり

月かげのさやかに照りてみほとけは笑みてみ堂にひとりおはせり

物思ひにひたるほとけの静けさにけふも魅かれて訪ひにけるかな

いかるがの里の真夏はむしあつき日差しに重くそびゆたつかな

松風にゆらぐと見しは興福のたうの入道雲のまなかに

青空をわかちもくもくと雲の湧く男ごころの奮い立つなり

興福のたつの石碑(かみ)に刻まれし名歌を読みつ汗ぬぐひけり

夕立の俄かに来れば風たちて木立の蝉も鳴き初(そ)めにけり

夏雲の輝やく折に大雨の風ともないて降りつけて来ぬ

猛暑なり暑き日差しにくらめきを覚えし来れば身をかくしける

街路樹の影に身を置き憩ふ間のそれぞれ蝉の鳴くをききおり

やかましく且つ高らかに鳴く蝉にしたゝる汗をぬぐふ我かな

青空を分つ入道雲の端(はし)に立つ重々しくも興福のたう

松風にゆらぐと見しは興福の塔の入道雲のまなかに

尾山台商店街の盆踊りスマホをもちて踊る娘(むすめ)ら

盆踊り花の舞台に踊り出る中学生の娘(こ)ら頼もしき

打ち上がる夏の夜空に大輪の玉屋の花火咲きて散りけり

隅田川涼む桟敷に席をとり連続花火にうちわあほげり

あっと云う間の大輪の花火ゆえ見るもはかなく無なしかりけり

美しくひらく花火の見物をきらふ女房のわけにうなづく

近きより遠きに眺む花火かな玉や鍵やとほめて叫べり

玉川の堤より見し丹沢の峰の流れに聳えたつ富士

富士やまに夕映え雲の大らかに棚引く日こそ幸ひなりき

夕映えの深紅に染まり移りゆくやがて黄金の空になじみつ

広々と刈り取る稲の束を乗せ荷台の後を押して行く日よ

軽やかにペダルをこいで多摩川の堤を走る今朝の光りに

小夜更けて見上ぐる空に月影の灯れば悲し秋近きかも

虫の音に身を寄せてみて鳴き声を確かめ居ればまた鳴きにけり

蓼科に過ごす友より夏の間の便りに桃を頂きにけり 9月3日


__________________________________

         目を覚ませ、金正恩委員長

    気象庁の発表によると7月3日午後0時30分ごろ地震があった。震源地は北朝鮮北部、マグニチュード6.3、震源の深さは0キロと発表された。これは一体なんだ、震源の深さがいつもとは違い異常な内容である。一帯の大地を揺るがす巨大な山崩れでもあったかと、一瞬訝った。

   否、それは北朝鮮が行った水爆の地下実験による振動と分かった。その後、北朝鮮が、地下の水爆実験が完全に成功したと発表した。これでアメリカ本土に向けてミサイルの核弾頭に搭載し、金将軍の号令一科、アメリカ本土を火の海と化し、アメリカをこの地球上から永遠に消滅させるとまで言い切った。まるで今、猛烈な戦火が始まって、北朝鮮が勝利への道を驀進するかのごとき強烈な挑発の報道である。これは実際に宣戦布告をして、攻撃開始したのと同じ内容に等しい。一瞬ドキリとした。

   この狂気に似た北朝鮮の報道は即座に、アメリカの自衛のための猛反撃を受けないかということである。それが心配である。彼らは、それに気づいていないのかと思うと慄然として来る。いたずらに危機意識を煽って、国威高揚に狂奔する姿であるが、如何にも世界を知らなすぎる。彼らの言動には、説得力もなければ何の正当性もない。やたらと狂信的、妄動に走るばかりで、話し合いの場に就くような状況ではなくなってきて、いつ暴発するかわからなくなってきている。徒らに虎の尾を踏むような危険な、盲目的な業である。その妄想的言動に、むしろ唖然として驚きを禁じ得ない。
 
   中国、ロシアの非難すら聞かず、ましてや経済制裁すら耳に聞き入れようとしない北朝鮮の狂気。既に、そのレッドラインを超えてしまっている北朝鮮。アメリカのトランプは、国際社会の一致した同意を取り付けて、軍事行動の正当性を得、一気に核実験施設を破壊する用意をしているのではないかと想像する位に不気味である。アメリカの巨大な軍事力を以てすれば、微塵すらない北朝鮮である。そうかといってアメリカの軍事介入は、朝鮮半島の混乱を招くばかりで解決には至らない。ましてや日本を含め近隣諸国に甚大な影響を与えることは、火を見るよりも確かである。石油をはじめ、より強力な経済制裁、そして圧力と云っても決定的影響を期待できず、手詰まり感を抱くばかりである。
そうした間にあっても、北朝鮮の一方的な狂気の開発は進み、猛動的な発動はエスカレートするばかりである。もはや神の見えざる手を以て、即刻中止さすすべきと期待するのである。 やってみなければわからないが、現実に核保有の実力は多くの識者が指摘する通りであり、そう下現実を踏まえた一歩前進の姿勢で、北朝鮮と米国が話し合い、体制維持を図る北朝鮮を抱き込んでいく政策を考えるべきかと思う。核保有は認めても、その使用は絶対にしないという確約を取り付けて話し合いのテーブルにつくこともやむを得ない。
   その時の外交手腕を発揮して、むしろ閉鎖的北朝鮮を開放していく道筋をつけることは肝要である。北朝鮮はアメリカが将来にわたって、北朝鮮を攻撃しないという確約を求めて来るからである。アメリカはそれに対し北鮮の行動に瀬厳しい制限を付けてこれを順守することを要求すれば、公平だからである。それには今の韓国の、日本に対して非友好的な態度を取るような姿勢は改めてもらいたいし、もっとしっかりした政治思想と体制が担保されなければならない。
親愛なる河野太郎外務大臣の英知と勇気をもった活躍を、大いに期待したいところである。 
                                         9月4日


北朝鮮水爆実験を強行し国際社会の非難浴びけり
恐ろしき事象捕捉のできぬひと事の始末を負へぬ政治家
わきまえを知らぬ金正恩の小僧っ子の暴走族の世を疾走す
金さんの法と人道を無視いたし国際平和を破る輩は
広島の五倍十倍の破壊力誇示して強行の水爆実験
ミサイルと原爆実験を重ね来て国際社会を脅す若造
若造が世の忠告に耳貸さずやり放題に手を焼きにけり
ミサイルの弾頭に水爆を搭載しアメリカ本土を狙ふ北鮮
ミサイルの発射防空訓練の昔のそれを思い出させり
身をこごめ頭に両手を乗せて伏す机の下で何ぞ役立つ
上空に飛ぶB29に竹槍を突き鉄砲を撃つに似たれり
防空壕より抜け出して千波湖の岩穴に逃げ九死逃れり
街なかは一面の焦土と荒れ果てて死体の山に驚きにけり
角栄の日中国交を果すこと北朝鮮とも付き合ふべきと
究極は朝鮮半島の問題で日本国民のかかわりのなき
悪戯に他国の紛争に口出ししその巻き添えを食らふ愚民よ
いたずらに国の紛争に口出しし巻添ひ食うふは愚かしきかな
経済的制裁が効かぬとアメリカの政府高官が困惑の体
国連の安保理事会の高官も同じ思ひを持ちて悔めり
制裁と圧力をかけ実験を阻止せんとする国際社会は
北鮮に尚強力な制裁の国連決議を促すは米
本来は朝鮮半島に日本は直接かかわりなきが筋なり
さはされど朝鮮半島の混乱の日本に及ぼす悪ろき大なり
米国と共に戦ひ北鮮と敢えて声高に言うは危ふし
米国と朝鮮半島の紛争に入りて甚大な被害受くとも
仔細なる事実に憑かれ寧辺号例えば入港許可を与ふは
ガス抜きを行ふ術も考案し北鮮軍の身体ゆるめん
米朝の互いに熾烈な挑発を行ううちの暴発を危惧す
米国の長きにわたる対応に誤算続きと記者の語れる
寧辺号せめて国交の糸口と細き望みを続けしは如何や
韓国を支援しながらも同国の敵視政策のあるは訝し
韓国を支持する日本を敵視するならば北鮮との友好は如何や
慰安婦の例えば問題を民衆に焚きつけ韓国の反日政策
北鮮と敵対関係に立つよりも現状容認の策に出でるは?

大東亜戦争に負け日本の平和に奇跡の復興を得ん
ヒトラーや東条英機のファッシスㇳISテロと同じ正体
日本の名高き肉弾三勇士なれと教はる少年時代に
最後には飲まず食わずの兵士らに敵陣攻撃身を粉砕す
不思議なり九死に一生を得て今に在るはひとえに神のご加護と
五万とも十万とも謂う焼死体人の命の軽ろき無残に
NHK放映になるインパール日本兵士ら生き地獄なり
大本営発表に反しインパール作戦行動の凄惨極めり
未だなほ燻ぶり続く亡骸を跨ぎつつ行く空襲のあと
一夜明け見たふるさとは一面の焦土と化して硝煙の立つ
戦争の残酷さを知る焼夷弾攻撃を浴びさしもありけり
原爆の死者累々と焦土にて神はいずこにおはしをはすや


早くより和解のテーブルに着くべきと吾は幾度も云ひ返し来ぬ
難しき国際政治の問題に皆が英知を発揮する時
より多く制裁を受け自滅への道を回避し話し合うふべし
北鮮の核・ミサイルの実力は了したとして対話路線へ
これ以上撃っても実験の効果なし打ち止めとし話し合ふべし

北鮮も韓国も皆相和して祖国統一の道を行くべし     9月8日


    遊び心に返って

  誉れある建国記念日を、原爆実験を行って祝うことがなく、北朝鮮の建国記念日を心から祝福する行事であってほしいと、かねがね思っていたところである。国威高揚が、悪魔の饗宴にならなくて良かった。

9月9日は北朝鮮の建国記念日であって、以前からこの日に新たにミサイル発射実験を行い、改めて一挙に緊張が高まるのではないかと思われてきたが、幸いなことにそうした挑発行為は行われずに済んだ。小野寺防衛不大臣は、北朝鮮が既に核保有国としての地位を持つにいたったと、協調することしきりの印象である。小職もそうした意見に異論はないと述べてきているつもりである。ただ今までにそうした意見が政府高官から出てきていなかったことは事実である。北朝鮮が何度も核実験やミサイル実験を繰り返し強行しようとする意図は、北朝鮮が核保有国であるという立場を、国際社会に認めてもらい一念からであるから、現実に保有国であるとすれば、それを国際社会に認知させるための無用な実験、周辺諸国に恐怖を与えかねない実験を行う必要がなくなるからである。

   北朝鮮は自国の核開発を続け保有することが、他国、とりわけアメリカの軍事的攻撃を抑止する力、即ち抑止力になると確信しているのである。そしてアメリカと将来の朝鮮半島のことについて同じテーブルで対等に話し合いたいと思っているからであった。空が成し遂げられれば、これ以上の核開発に視力、労力、時間を費やすことがなく自国の安全と体制の補償が確保されると信じているのである。それはそれなりの主張と道理が、容認できるものである。
   実験を見送った原因には、国際社会の北朝鮮に対するより強力な制裁と圧力があるからである。国連決議がアメリカの強力な主張で11日にも提出され、渋る中・ロに強烈に働きかけられている。そうした一面を見ても朝鮮半島が、将来にわたって、極東アジアの大国間の紛争の火種にならないように、その犠牲に会わないためにも、北朝鮮のこれからの自制と慎重な対応が望まれるところである。

   小職も最近の北朝鮮の緊迫した挑発行動に危惧の念を隠し切れなかったが、もしかすると嫌な予感も無きにしも非ずだが、ここは一先ず安堵して話題を好きな方向に持っていきたいと念願している。アメリカも、トランプも右往左往の大変な時局に会っているが、焦らずに事に対処してもらいたいものである。そうしたことは大国の中国にも言えることである。一帯一路の、遠大な政策を掲げる大国としての風格もあるから、いたずらに領土拡張の乱暴な行動は慎んでもらいたい。これらが争いの種になるからである。
  南沙諸島の、尖閣諸島の領有権争いのように、いたずらな、欲丸出しの行動は慎んでもらいたいものである。


      *


みほとけの情けに触れて振り返る永観遅しと促しにけり
見返りの阿弥陀如来を奉る仏間にひとり居て黙想す
若草のもえ出づるころ訪ね来て永観堂を拝しけるかな

母校とも母校でもなき実業の早稲田の名こそ高等学院
精進す大塚真平に電話して来年米寿に向かふ人なり
そね妬み恨みつらみの極まりて友の中にも悪しき人あり
一人にてオフィスに達者に居りし身の己ながらに働くは良し
躍動を覚へ仕事の道を行く人の縁ともその情けとも
内山も臼井も逝きてただ一人大塚真平の活躍のみに
朋友の仇名は大塚大明神仏法を説き書状届きぬ
横浜ゆ勇気に移り住みつきて早や三十年の齢杉にし
傘寿にてさすが大塚大明神未だひとりで日々働けり
臼井逝く共に内山組なれば歴史を刻む思ひ出多き
有難く聞く旧友の声ゆえに強く生き行く姿尊き
大明神大塚真平の人がらの傘寿の年になほ直きなり


清宮の打つ本塁打の天高し
甲子園中村選手の本塁打
本塁打放つ清宮の快男児
厄払い八坂神社の宵祭り
鉾廻す厄を払ひて気の晴れて
甲子園中村選手の本塁打
夕立や納豆の糸長く引き
思わせに下草刈に疲れ出て
夕立の止まず足止めを食らう駅
大相場日照り広がる兜町
雷雲をしらせて風の立つを見ぬ
雨宿り待つ間の夕立セレナード
夕立を待ちて逢う瀬の盆踊り
湯上りのビール一杯夕焼雲
Bタイムズ日割り駐車の懸煙草
俵編み多忙の日々や少年期
ぼうふらの如く世人の往き来して
二合まで佐賀の熱燗飲む夜は
くるくると変わる呟き風見鶏
麦焼酎今宵の月の明らけき
ボウフラのごとく世の人の往き来して
即是空むしろボウフラの如くあり

ぼうふらの末は誰にも知らぬ間に
夜祭の金魚すくひの遊ぶ子ら
十三夜ふと旧友に便り書く
さつまいも蔓を食みたる少年期
人生は通勤特急大花火
読書する尾崎士郎の青春期
山吹の暗みに咲きてあきらけき
百日紅隣に孫の慶事あり
百日紅さもや旦那の逝きしかと
旧友の熱き情けや百日紅
紅白の共に燃え咲くさるすべり
紅白の互ひによりて百日紅
百日紅情念燃やす年輪に
日本のワールドサッカー出場へ
サッカーの若者得点天高し
某会社決算に物言ふ秋来たり
ハリケーンのアメリカ南部襲ひけり
ハリケーンの被害二十一兆円
トランプの慌てるハリケーン襲ひきて
温暖化異常気象の閻魔祭
パリ協定離脱に大荒れの野分きて
洪水にヒアリが筏を組みて浮き
温暖化世界に及ぶ夏気象
パリ協定目覚むトランプ野分あと
十六夜の空すがすがしくも澄みわたり
文を書くいざよふ月のほのかなり
いざよひの月を背にして吾妻橋
いざよひに君を訪ねて行きしかな
夕立の篠突くく寺に交じる雹
雷鳴に烏の群れの乱れをり
夕立の雨に交じりて光る粒
涼風の今朝の芝生に青さかな
文月や山に隠れて青き海
文月や芦ノ湖畔の館にて
文月や寺の読経の止みにけり
立秋や二十三回忌の周次郎
墓参り揃ひて二百十日まで
文月や月の細木に光りあり
漱石の二百十日や草千里
八朔や友ら遠くになりにけり
長月や北斗の並ぶ一直線
長月やわれが造りし団地かな
素晴らしきわれが団地の秋の昼
秋の空父母が峠に居りしかや
アルプスの静かに在りし秋の空
嶺続く秋の夕日の八ヶ岳
蓼科を過ぎて湖秋日差し
鰯雲続く西かた世の無常
鰯雲心の奥を読み違え
鰯雲動く浅草五重塔
大屋根のどっしり動く鰯雲
平成もあとわずかなり月渡る
飛び魚の如く過ぎゆく年の秋

朝焼けのさざなみ映る千枚田
月影をいくつも映し棚田かな
それぞれに月を抱きて千枚田
月影をそれぞれ写し千枚田
千の月影を落として千枚田
人家なき霧に包まれ棚田かな
暗闇に光る坊主の二つの目
棚田なり七枚敷けば月七つ
観自在菩薩の念仏白芙蓉
何枚も包装を解き海苔五枚
山吹のほころび咲きて刈りにけり
やわらかき日差しにひとり端居かな


薬掘全山宝の山なりき
薬掘る山は光を放ちけり
朋友の母がこの月薬掘り
八月に働く祖母や薬掘
山に入り熊に会ふのも薬掘り

薬なり、あかね、せんびり、くらら等、さいご、りんどう、ききょう等の根

腰に結い籠に入れんと薬掘り
振り上げし鎌の光りて薬掘り
ひと振りに銭こ稼げて薬掘
五臓六腑健康なりし薬掘り
薬掘る全山深山はわれのもの
欲張りて疲れて帰る薬掘
薬掘下げる袋に盛る銭こ
根を抜けば先に真白く光る球
人を避け世を遠ざけて薬掘る
嬉しさやひとり山行く薬掘り
世を避けて神と出会ひし薬掘


蘆刈りて原一帯の明るさよ
蘆刈て背負ふ我が身の軽さかな
遠山の近くに蘆を刈る夕べ
蘆刈りて父を眺むる遠嶺かな
遠き野に一軒ともる馬酔木かな
寂寞とコオロギの鳴く月の夜
夜の更ける蟋蟀の声身に染みて
蘆を刈る遠山近く寄りにけり
名月に娘と婿が遊び来る
名月と妻が指さす白さかな
秋めく日インド取材の話あり
貧しさのインド大国バッタ飛ぶ
娘来て話題は尽きじ鉦叩き
名月と指差す妻の美しき
指さして妻立つ先に秋の月

母と行く大地は終戦記念日と
赤い羽根売りさばく日の女子学生
人混みに和む声かな赤い羽根
赤い羽根使途は何かと問ひにけり
呼び声の無鳴きし声の赤い羽根
人混みの煩わしくなくべったら市
賑はひのべったら市の小伝馬町
核よりも豊年満作北朝鮮
柚子入れてひとり天下の檜風呂
稲架かけて恵比寿大黒先に立ち
初恋や茗荷の花の色悲し
探し出す茗荷の薄き花の色
護摩炒って程よき塩の加減かな
銀飯に胡麻振りかけて野良仕事
戦火なし銀飯に胡麻振りかけり

草千里二百十日の空高し
今日も無事二百十日の草千里
秋夕焼阿蘇外輪山にほむら立つ
虫の音をかすかに聞きしひとり酒
即是空森羅万象一人酒
秋の虫鳴けばおどんまも泣けてくる
出稼ぎにてては東京さ遠花火
菜種蒔く宅地三反我ひとり
新そばを家内と二人食ふべけれ
旅鴉端にふて寝の案山子かな
深山来てぽっと咲きたる百日紅
栗飯を食ふに幸せ箸二膳
慎ましく夫婦善哉障子張り
八朔や品揃いよき青果店
稲架かけて藁の匂ひの新しき
稲架かけて移ろふ影の遠き山
渋を取る要無き宅の富有柿
渋柿の樽の焼酎濁りけり
鴉来て彩り浮かぶ花野かな        続く

__________________________________________________________________________


月刊誌 昭和経済


   昭和経済のこの月の発刊が多少遅れてしまい、一昨日、日本印刷の担当者の吉永君に事務所に来てもらって約30分で掲載すべき原稿を整理して編集をし、提出した。秘書の岩本君にも手伝ってもらった。小職が必要と思われる原稿は当意即妙、その場で書いて手渡した。昭和経済は、啓発を目的とした機関誌としては極めてレベルの高いものである。
   本誌に掲載された論文は、執筆者の見識を示し、世の中の実態と動向を深く省察してレベルの高い意見を述べているものであって、学術的に大いに、高く評価されて権威あるるものである。これが広く実践的に、且つ具体的に採用されて、実社会に大きく貢献するものであることに大いに期待するところである。特に将来を嘱望される若い学者、研究者が発表する論文については、従来とも活躍されてきている老練重厚な学者、研究者に伍して、更にこれを凌駕する気概を以て参画されていることに、深甚の感謝の意を表したい。編集者としても責任の大なることを痛感し、以て多くの読者、関係者諸氏に豊かな知識、思考の教材を提供することが出来れば、幸いと思っている。
   思うにこの「昭和経済」が、より多くの読者に提供されて、実際の社会活動の道に供されていくよう多くの方々からのご意が、事務局に寄せられることを願っている。    9月14日

        流動化する政局


  自民党の幹部のあいだでは、安倍一強内閣を維持するために、早期解散を念頭に置くよう口にするものが出てきた。状況を判断すれば、当然である。安倍首相が憲法改正をはじめとした一連の政策決定を推進しようとすれば、今の政局の力関係を見る限り、絶好のチャンスであるから、早期解散以外に考えられないからである。安倍さんは内心、賭け打って出る可能性がある。勇断は禁物だが、政治家としては致し方ない決断である。イギリスのEU離脱を国民投票に図った結果ではないが、お灸をすえてやろうと投票した結果が、集積されてまさかの結果を生んでしまって、英国にとっても、EUにとっても取り返しのつかない結果になってしまったことがある。それに手を焼いているイギリスの姿は、敗残の将、釈明し能わずで残念である。魔が差したとしか言いようがない。安倍政権についても、そうした結果にならないよう、重々気を付けるべきである。
  先の国会では森、加計問題でこじれ、防衛庁の情報隠し、隠蔽などで防衛相の不適格発言と能力欠如がばれたり、議員の資質喪失者まで出たりして散々であった。そのため内閣支持率も30%前半にまで落ち込み回復不能とまで揶揄され、絶望的であった。しかし内閣改造後すっぽん大臣がいなくなって、このところやや持ち直してきている。緊迫している北朝鮮問題にしても、外交努力が実っている感じである。水爆実験で成功した挑戦が、自信過剰、慢心がたたって行動に出ないとも限らないが、現実は象の背に蜂の一刺しであって、金正恩がそれに気づいてくれれば道が自ずと開からるはずである。選挙中に北朝鮮が暴発せぬように祈る気持ちで一杯である。

 一方、民進党については離脱する議員が多く、身勝手な議員が多いことも質の低落を印象付けている。加えて前原代表が民進党の党首に選出されて以来、人気がさっぱりで、党の再生を図るスタートとしては国民に強い期待と印象がないことが最大の欠点である。野党連合も離合集散を繰り返すだけで、自民公明の政権与党を、攻撃する迫力がない。実にだtらしない政党に落ち込んでしまっている。野党の諸君らに、今の自民党に代わる政権担当能力を持った受け皿として期待することは全くできない。この事態を、むしろ国民は憂慮している。

 気がかりなのは小池新党を立ち上げて、安倍政権に対抗する勢力を結集しようともくろむ集団である。自民に対抗する勢力としては、実体ははっきりしないが、選挙をした場合の支持政党なしの浮動票の多い現状では、都民ファーストの会と同じように、反自民党勢力として今の野党に代わる勢力として台頭してくる事態は看過できないものがある。巨大な行政機構を組織を統治するには並大抵のことではできない。石原、猪瀬、升添と三代に渡る都政、自民党のドン、内田なる人物の権力支配で、汚泥化した都政を改革する力量は大したものである。最近になって都議会の様子や都知事の政策を見ていると、小池新党に対する曖昧な動きが、不透明な印象を国民に与えてきている。これはまずい。小池自身も、当初のような歯切れ良さがなくなってきて、権力の座にありがちな傲慢さが少しばかり出てきてマンネリ化され、やや不快な印象が国民の中に出てきている。とは言っても、油断は禁物である。急場しのぎの新しい政党づくりで反自民の票が、目新しい政党に軽く流れて行く可能性は否定できずである。結果総体的に見て軽薄、未熟な議員諸侯が生まれてきても国益にかなったものとは言えない。

  急場しのぎの未熟な政策集団だから、とんでもないやつが選ばれてくる可能性もある。心配なのは議員の質の低下である。とは言っても、現在の既成の野党勢力が混乱しているとすれば、反自民の勢力が、新たに出来上がるグループに少なからず新鮮さを感じて無党派層、浮動票が流れていく可能性がある。選挙は戦術であり戦いである。状況は、小池一派のこの動向が成就して、自民党に対抗する勢力として国民に認知される前に、解散に打って出る方が自民党にとって有利である。選挙は、時間との賭け、時間との勝負となる。

 安倍政権に対する世論調査の結果も低落傾向が続いて、最近歯止めがかかっているものの、依然としてグレイゾーンである。政治姿勢にちょっとした不平不満がのこっているものの、今のところ自民党内に安倍にたてつくものもいないし、安倍を置いて現実に代わって出て来る者もいない。政権政党としては野党に比べて人材が豊富だし、加えて安定感があるのは、麻生、二階と行った長老の重用であり、健在ぶりは絶妙ある。民進党には、こうした人物がいない。居てもだらしのない役立たずの者ばかりである。   
 北朝鮮問題では、緊迫した情勢が続いており、現時点での解散の論拠については、その対応を巡って自民公明の解散総選挙は適宜とは言えないが、自民党内の現状維持論が根深いから、戦略的に見て解散は致し方ない。一方、解散になったりするとその間の政治の空白を、現時点で気にしないわけにもゆかない。するのであれば、早めに決断した方が好ましい。
  政治の世界は一寸先が闇である。民進党の混乱状態を、そして安倍政権の支持率の低迷を逆手にとって、外部環境は自民党にとって有利に選挙戦を戦うことが出来る、許された最高の情勢である。小池新党を立ち上げる動きも気がかりである。安倍首相は臨時国会開催の冒頭に、遅くとも中盤には一気に解散に打って出る可能性が濃厚である。 9月16日

                   *

  新聞報道によると、安倍首相は国連に出席するため羽田を経つ前に、公明党の山口代表と会談、又自民党の二階とも会談、席上、臨時国会の冒頭に衆議院解散、10月22日に投票日とする旨言い渡した。解散は首相の専権事項だから、野党諸君は突然のしかも冒頭解散で非難囂囂であるが、致し方ない。選挙戦に打って出て精いっぱい戦うしかない。自公民は現状維持で、今以上に票の獲得に狂奔する必要がない。国民の信任を得て、若干の議席減少は覚悟の上で臨んでいる。もしかすると、裏目に出る可能性もある。豊田議員、法務大臣、不倫問題と議員の資質を問われて、反自民党の票が大きく浮上しかねないからである。

  森友隠し、加計隠しと、更には情報隠蔽、隠しと喧々諤々だが、今の自民党には馬の耳に念仏、どこ吹く風である。むしろ政策論議に徹して、現実に有効な手立てを国民の前に示して戦うべきである。旧態然とした前原の消費税値上げ、同枝野幹事長の法人税値上げなど第一政策の様に云っているようでは、今の自民党には勝てない。最近の政治論だが、肝心の行政改革と財政再建が、置きざるにされて居る。とりわけ一般論として行政の膨張は大きな課題であり、各政党の共通認識でなければならないはずである。そうした意味での旧態然の規制撤廃と、既成緩和を論じなければならない。規制野党が脱皮していかないと、自民党以上にしがらみに縛りつけられていては、改革前進にはならない。
  更に勢いよく論じるならば、中央省庁の地方分散を図り、金の流れを地方に持って行くような仕事をしてみたらどうか。かってはそうした論議も真剣になされたが、中央省庁の猛烈な抵抗に遭い、いつの間にか立ち消えてしまった。当時からも、時世は大きく格段に変わってきている。極端な話になるが、箱ものは必要でなくなってくる。加えて加計学園を逆手にとれば、ああした小さな規模でなく、いかさまをしないで国の組織と機構を大改革すべく、安倍さんの言を以てすれば、本当にゆがめられている行政組織、機構を破壊すべきである。細々とした考え方では、国民の喝采を浴びることはできない。自民党、安倍政権にこれが出来るかどうかである。
  小異を捨てて大同に付く、野党連携もある。しがらみを絶つと訴える、小池新党の立ち上げもある。今の日本の停滞気味の政党政治に、新風を吹き込む転換点ともなりかねない状況である。予期せぬ旋風に、多くの国民の票が大きなうねりとなって奔流することもある。今の野党は褌を締め直し気を引き締めて望まないと、凋落の一途をたどることにもなりかねない。小池新党の立ち上げで、政局は一気に流動化する。離党が続き草刈り場とならないように、民進党の去就が注目されるだろう。自民党のために民進党は賢明な選択肢を以て戦うべきである。それが自民党を成長させ、国益にもなるからである。

国会の開会冒頭の解散にせはしくなりぬ暮の秋かな

日本の政党政治の根幹を問はるる選挙の来月に来ぬ

与野党を問はず堂々の選挙戦経て国民のために尽くせや

                                   9月20日


挑発に挑発を以て繰り返す米朝首脳の過激言動

猛撃を慎重に検討すとの北鮮のその慎重にを期待するなり

北鮮の明るき未来の実現に今こそチャンスと冷静を期す

米朝の互ひに暴言を吐き合ひて程度の低きさまにあきれり

人類を敵に回して牙を剝く狂気の水爆実験を揚げ

北鮮の世界に向けた妄想の沙汰に覚へし戦慄の業

我が和歌も近ごろ政治経済に特化しすぎと省みるなり

願わくば花鳥風月をめでて詠む風雅を旨とすべき良きなり    9月23日


              *

    連日の北朝鮮の水爆実験とミサイル発射で、宿敵アメリカを粉砕するとの連呼であるが、いつの間にか聞き慣れてきてしまって、油断することが自分自身、恐ろしくなってきた。世界が一致して自制と警鐘を鳴らす国連決議を無視して、無謀な行動に走る北朝鮮の実際の本音は何なのか、分からなくなってきている。国際社会を敵に回して、あたかも自分が天下を取れるとでも思っていることが誇大妄想狂、時代錯誤も甚だしき限りだと思っている。自分で案じていてもどうなるものでもないし、困ったものである。水爆実験を行ってきた小型弾頭を搭載し、これをミサイルで日本上空を通過して太平洋上に打ち込むという乱暴なことまで云い抜かしてきている。きれいな太平洋の海を、大量の放射能で汚染するつもりだろうか。想像しただけで身の毛がよだつ。我々はその実験的能力を云々しているつもりはない。無駄なことだから、止めろと云っているだけである。それがどうしてわからないのか。こうなった以上は、子供でも判るような言葉を以て、云う以外になくなってくる。

   こんなことを何べんも繰り返し云っていてても、うだつが上がらない。方向転換、気ままな気分転換で、好きな俳句を作って、しばらく精神浄化を図ろうと思う。されば・・・・・

衆議院解散近し暮の秋
自民党勝負を賭けての選挙戦
安倍政権起死回生の秋の陣
民進党打つ手皆無の稲架の籾
突風に小池新党の総選挙
大臣と議員の改革秋選挙
やかましき選挙の車花野行く
街宣車走る台風の去りしあと
牛引いて少女がゆきぬ野分あと
両成敗右翼左翼の松手入れ
秋の海美女の砂浜ファッションショウ
芝を刈る素足に草の蒸れふれて
庭芝を刈る先に飛ぶいなごかな
富士やまの美しかりき稲架の上
田園の空輝きぬ稲架の上
稲刈りて傍にふて寝の案山子かな
口開けて笑ふへのへの案山子立つ
行く秋を男同士の旅の空
漱石の行人を読む良夜かな
ド・トールのコーヒー渋き赤まんま
ド・トールの席に腰かけ残暑かな
匂ひ嗅ぎド・トールコーヒー文化の日
金柑の実の黄金なる色放ち
金柑の子押し籠いっぱいに収めけり
ひょうたんの五つ六つ下げ棚重き
今年初にわとり卵三つ生み
にわとりの巣箱に卵終戦日
平凡な暮らしに慣れて月見かな
裕福に暮らすこの頃蔦紅葉
幸せに味はふ日々の烏瓜
松茸に似たり急所の立ちざまに
ド・トールの店より眺む昼の月
匂ひ嗅ぎ当てて松茸宅急便
大豆抜く豆は鞘より弾き出て
枯れて抜く大豆の豆は実りけり
枯れしままはたけば胡麻の散らばりて
貧しさに咲く七草の宅の庭
味はひて昔の芋の最後っ屁い
出力のでかきおならや薩摩芋
薩摩芋食へば男のラッパ鳴り
秋場所は横綱大関総欠勤
横綱に飽きて若手の秋相撲

秋場所の気力体力充実す
秋場所や若手力士の心体技
朝顔の実の掌に数えけり
朝顔の種を大事に包みけり
飽きが来て聖天様の鳩ぽっぽ
星くずの更に霞の天の川
さまよひて心地良きかな天の川
君と漕ぐ愛の誓ひの天の川
天の川渡る今宵の流れ星
デン助や聖天さまの鳩ぽっぽ
神は漕ぐノアの方舟天の川
朝顔や花を数えて一週間
朝顔の朝こそ色の味はへり
開く音聞く朝顔や夜明け前
朝顔や垣根をくるみ笠舞台
九品仏お渡り観音大銀杏
玉川の神社の神輿宅の前
若衆の担ぐ神輿や秋盛り
玉川の神社の祭り秋日和
柿実る今年万作たわわ也
若衆の掛け声たかく神輿来る
花棒を担ぐ魚辰の若旦那
富有柿色づく今朝の宅の庭
菜種蒔く畝にみみずの這ひにけり
畝たててレタスの苗を並び植え
国府台野菊の墓の父母近く
菩提なり父母は野菊に包まれて
敬老の日に慣れてきぬ我が身かな
貧しさに逆らひて咲く葉鶏頭
うら枯れの茗荷の畑の残照なり
馬肥ゆる天下泰平日本丸
貧富の差とけて大平秋刀魚食ふ
ミノムシの畳のヘリを測りけり
四畳半茶柱立てて文化の日
ド・トールに席料払ひ彼岸花
デン助の見せ興業や年の秋
浅草に月渡る夜の遅き蕎麦
ちゃえるめらの笛も恋しき暮近く
べったらの市懐かしき馬喰町
べったらを下げて今年の勝負あり
北斎の波がしら高き天の川
秋の海波がしら飛まつ地引網
出無精の身にも優しき野分かな


________________________________________

衆議院解散

どさ回りの、田舎芝居に終始した前国会の審議であった。国民は辟易した。国会審議とは云いながら、面白半分に見ている限りは愉快で飽きない番組かもしれない。しかし後味が悪かった。安倍さんは内閣改造を以て内閣支持率低下に挑んで、仕事人内閣に取り組んだものの、わずかな回復しか見込めなかった。
   一方、民進党のごたごたは収まらなかった。五十名弱の国会議員を抱える野党第一党の前原党首が決まったものの、離党者が相次いだ。野党連合の混乱に乗じて、自民党幹部に早期解散を主張するものが出てきた。一年余の任期を残している安倍さんの気持ちが、これに動いて賭けに出た。政局は俄かに動き始めた。国連総会から帰国した安倍さんは、26日に記者会見をして28日に国会を召集し冒頭解散を示唆した。28日午後衆議院が開会されたが、予定通り冒頭に、憲法第7条によって衆議院を解散した。国会議員は一斉に、選挙運動に走り出した。投票日は10月22日、即日開票である。
   これに先立ち人気絶頂の小池都知事は、新党を立ち上げて「希望の党」と命名し、自らが代表を務めることを明らかにした。民進党の前原は、両院議員総会を開き、この希望の党に参加して選挙戦を戦うことの一任を取り付けた。民進党の事実上の解党である。名を捨てて実を取ると云い切った。まさに青天の霹靂。これには安倍がびっくりした。全くの想定外である。共産党の党首、志位も安倍さんと同様びっくり仰天である。有象無象の政治の世界は、一寸先が闇である。民進党に騙された共産党が正直すぎた。選挙共闘の野党合意を踏みにじったと、志位が怒り心頭である。世慣れてスマートな面立ちの前原に比べて、田舎丸出しのパンダのような志位の丸い顔が気の毒に見えて来た。前川のなり振り構わぬ態度については、国民は冷静に見ているし。小池の対応次第も、国民は見ている。
  前原の言を以てすれば、政策的一致を見た結果でなく、単に安倍政権を倒すための、身売りである。野合とみられかねない。全員を希望の党の公認を求めたにのに対し、小池は丸呑みはしないとし、選別をすると云った。脱落する議員は無所属から出ると云うのも出てきた。ひょっとすると、小池に反発する者も加わって、新たに新党を作る動きもないわけではない。こうなってくると、益々混乱状態となってくる可能性もある。
   東京都知事選挙の時、出馬した小池をジャンヌダルクに喩えて、私は喝采を送った。石原、猪瀬、升添をギロチンにかけ、議会のドンの内田を追放し、曲がりなりにも汚泥化した都政の刷新を図った小池である。男顔負けの度胸は、イギリスのサッチャーを目指すと豪語して、虎視眈々として政界の場を狙っている。すり寄ってぶる下がる連中も多く出ててきている。この怪しいうねりは、もはや止めようがない。自画自賛するとしたら、慢心こそが、油断である。小池はこのうねりに埋没することもあるが、政治勘は確かであり、ずば抜けている。策士は策に溺れるではないが、小池さんには初心を忘れず、絹のハンカチとは云わないが、トレードマークのブルーのスカーフをいつまでも首に巻いて、溌剌として国益のために奮闘してもらいたい。周囲から実力以上にちやほやされると自信過剰、とかく人間は浮足立って舞い上がってしまう。それが恐ろしい。舞い上がったあとに、墜落する。候補者の人選をすると云って、その人選を通じて独裁者ぶってきても困る気がする。安倍一強は、小池一強にも通じる話で弊害が出てくる。
   離合集散はせ理解の常ながら、将来は自公民と対峙して、健全な政権担当の能力を持った政党としてその育成に努めてもらいたいと思う。 日本は民主主義国家である。自民党の巨艦も政治の世界に在っては、選挙という国民の厳しい目に晒されて評価を仰がねばならない。それが亡くなったら、独裁政治であり、北朝鮮や勝手の日本軍国主義と変わらない。それはとうの昔に脱皮したはずである。10月の10日の告示までに政局は自公と小池新党、そして民進党を巻き込んで劇的に勢力図を侵食し合いながら、駆け引きで流動していくだろう。政党政治の根幹は、与党は野党の攻撃に遭って常に切磋琢磨の道こそ、時代に適った国の大きな在り方を決めていくわけで、それが日本の国益につながるからである。 9月29日

  


社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


copyright (c) Showa Economic Study Association サイトマップ プライバシーポリシー お問合せ