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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.7-13 福田新内閣発足

 

    自民党の新総裁になった福田康夫氏が、昨、25日に開かれた国会で第91代目の首相に指名されました。前国会の冒頭で所信表明を行った翌日、安倍首相の突然の辞意表明で、国民の間に困惑と動揺が走りましたが、幸い政治空白は二週間足らずで収束できたことは幸運でした。解決に向けた関係者の努力に敬意を表します。政治的混乱を回避し、目出度く誕生した福田首相の登壇と、福田新内閣の発足に、これもまた祝意を表します。
    自民党は参院の選挙で惨敗を喫し、民主党に参院の第一党を許しました。安倍政権は、責任ある退陣の機を誤り、無残な憤死を遂げました。唐突な辞任と、国会の空白は、前代未聞の醜態で憂慮されました。参院選挙では、民主党の圧勝でしたが、国民の支持が日常の民主党の政策と活動に全面的に流れたと云うよりは、むしろ自民党政治への不信と軽薄、醜態極まる閣僚の続出で足元をすくわれた安倍政権と、その政治手法の幼稚性と脆弱性が次第に露呈され、それが最高責任者の安倍首相の政治家としての素質と重なるものとなり、国民の顰蹙を買った所以であります。
    安倍内閣での軽薄、音痴的な大臣の続出と安倍首相の人事と処遇の拙劣さについては、国民は一種の苛立ちさを覚えていました。こうした状況に対する国民の嫌悪感は、やり場を失って、参院選挙では、一挙に民主党へ票が流れたとする見方が有力であります。
    自民党の随性と腐敗への警鐘と、民主党の何でも反対の姿勢と、おごりを戒めるものとなれば、政界の覚醒と活性につながるものとなり、両党の大人への成長と回帰を目指すものとなり、さすれば国民はそれに期待して勇気づけられ、将来に大きな夢と希望が持てるはずであります。
    福田康夫氏の厳父、福田赳夫氏は、直接、間接、当会の理解者、協力者の一人として共通する意思を通じ合ってきました。昭和経済の裏表紙には多くの講演招聘者の名を記載しております。福田赳夫氏もその一人であります。しかも氏の足跡を示して冒頭に名を載せて、古く、永きに亘っております。福田赳夫氏は永い政治生活ののち、71才で首相に就任、時代的意義を担った改革者の一人として、千載に名をとどめる宰相でした。親子二代に亘って首相を務めるのは憲政史上初めてのことですが、福田康夫氏は穏健実直にして意志堅固であり、対話重視の路線を貫く姿勢は、つとに好感されます。安倍内閣の課題を背負ったままの厳しい船出となりましたが、高齢ながら心身ともに健康に恵まれています。重厚味はおのずと安定感があります。明るい活力を以って、日本の政界に熟達の新風を吹き込み、以って悲観ムードで沈滞気味の日本経済に回復、成長の烽火を高々と揚げて、国民の意気を鼓舞してもらいたいと思います。
    役員人事を見ても一般的評価とあわせ、派閥の領袖が顔を揃えたあたりは古色蒼然とした印象ですが、今日派閥の実体は脆弱化しております。内外からの締め付けと、国民の厳しい監視で昔日の勢いと面影はありません。有名無実といってもいいのではないでしょうか。むしろ派閥解体がかなり進んで、利益誘導型の力と嫌味は薄れてきております。この傾向と方針を貫いていくことも重要であります。領袖がおくびも無く顔をそろえていますが、ひところのような悪質な顔はほぐれて、苦労して練れてきたところもあります。彼らの登用は、熟練、熟達した重量感のあるもので、今回はさりげなく受けられるものではないでしょうか。
    又、国会開期中とは云え、組閣も迅速に断行し、政治空白を最小限にとどめることが出来ました。福田内閣が背水の陣で政局運営に臨む姿が窺え、現在の自民党の危機的状況を乗り越えるには、安定度が増した布陣と云えます。我々は、その実力発揮を期待しても良いのではないでしょうか。
その期待とは、内外の情勢に処して穏健な対話を以って協調路線を堅持してゆくことです。同時に、人気的、劇場的風評に引きずられないことでしょう。安倍前首相は就任直後、中国、韓国を訪問し、アジア外交重視を示す一方、欧米との関係堅持に進めました。こうした努力は高く評価されています。同時に安倍政権が「政治と金」「高級官僚の天下り」「拉致問題」「憲法改正」などに終始し、これらが足かせとなって肝心の経済問題について、何ら明快且つ積極的な発信を行わず、実質的政策を遂行することがありませんでした。毎日の経済生活こそが、国民の重要案件であります。これを怠り無視するような政府であってはなりません。これは前政権の最大の欠陥でありました。
    経済問題について傍観的立場に立つことは、グローバル化した世界経済と、激しく急速に発展している欧米、アジア、新興国に大きく遅れをとり、経済的後退を意味してゆきます。これは日本にとって悲惨な国運の将来と云うべきであります。世界の変化の対応に、敏速を要する所以であります。効率化社会の形成を目指し、産業資本の拡充と集積を図らなければなりません。そして金融市場の活性化は日本にとって重要な課題であります。如何にして世界の資本を日本にひきつけていくか、更なる努力が必要であります。
    福田内閣には、旧体制に逆戻りする印象を拭払し、更なる構造改革と、経済の国際競争力をいかにあげてゆくかの問題に、大きく前進的に取り組んで、景気回復の持続化をはかってゆくことを希望しています。福田政権には、思想、信条と、人間的な側面から、先代の福田赳夫氏を彷彿させるものがあります。それ以上に、氏に備った沈着、重厚を覚え、ゆったりとした安定感と信頼感を感じてきます。福田政権に対する評価は、冷静に、徐々に高まってくるものと思われます。民意重視と、国民経済の更なる発展のため、尽力されんことを願って止みません。     9月26日

平成19年9月27日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾

Vol.7-12 FBR.0・5%引下げ

 
    FRB(米連邦準備理事会)は昨日、18日のFOMEで、政策金利(FF)を0.5%引き下げ年4・75%とし、即日から実施しました。
発表を受けて午後から始まったニューヨーク株式市場は、大幅な利下げを好感して買注文一色となり、ダウは尻上がり上昇、結局335・97ドル高となり、13,739ドルでこの日の取引を終えました。これを受けて東京株式市場は日経平均株価が急反発し、579円高を演じてこの日の取引を終えました。値上がり幅も五年六ヶ月ぶりのものでした。金融市場にひろがる疑心暗鬼の状況を、速やかに拭払されることを期待しています。
今回の利下げは、サブプライム・ローンの問題に端を発した金融不安や、景気の悪化に歯止めをかけるためです。これは2003年6月以来のもので、四年三ヵ月ぶりに本格的な利下げに踏み切りました。状況によっては年内更に再利下げの可能性も出てきました。当局による金融政策の大胆且つ迅速な判断は、賞讃に値します。各国が協調して金融政策を推行することにより、金融市場の混乱に終止符を打つことができれば、これにまさるものはありません。現代に要求される課題は、調和と秩序ある世界経済の発展を維持することにあります。それは人類の生存のため、軌道に乗り始めた地球環境の改善への推進となり、その力にもつながってきます。
    又、最近のNY原油も一時82ドル51セントの最高値をつけてきています。この原油高が世界と日本の景気に与える影響も無視できず、その動向が心配の種子でもあります。私は、二十年前になると思いますが、石油は、これを単に燃やして消費しては勿体ない資源であると強調しています。石油から製造される製品は広範な分野で加工製品として、私たちの日常生活に大きく寄与していることはむろん、多くの産業分野で大きな働きをして経済社会に貢献してきています。石油は有益に活用されるべきものであり、いたずらに燃料として消費すべきものでないと強く提案してきております。石油に替わる代替エネルギーの各種広範な開発は、人類にとって不可欠の問題です。科学者や、産業界では、今懸命になって石油に変わるクリーンな代替エネルギーの開発に時間を割いています。
    現在、CO2の大量の発散と推積は増加の一途を辿っています。脱石油の経済社会の推進、それによる地球温暖化の阻止は、解決すべき喫急の問題であります。既に危機状況は、地球上の各所で露見されてきており、化石燃料の大幅な制限は待ったなしです。人間の英知をもって石油依存の経済スキームからの脱却を図らねばなりません。経済の発展的技能と仕組み、それと地球環境の改善の重大な関係について、更に問題意識を強める昨今です。
                                                 9月20日 記

平成19年9月25日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾

Vol.7-11 ブッシュ大統領の緊急会見


     米国で信用力の低い個人向けの住宅融資、サブプライムローンの焦げ付き拡大に端を発した世界的金融不安は、ニューヨーク株式市場の急落を招き、またたく間に世界の株式市場に波及しました。こうした案件では、金融界が始めて経験する信用の収縮と、金融市場の混乱の危機的体験です。その後も余震が続いていますが、世界の証券市場と金融界は、これを無事に乗り切ってゆけるでしょうか。世界の主要各国は今、かたずを飲んで今後の成り行きを見守っています。
      事態を重く見た米連邦準備理事会(FRB)は、これに素早い対応を見せました。8月18日、FRBは公定歩合を0.5%引き下げて、事態の沈静化に乗り出しました。これを好感した市場は一時沈静化に進みましたが、しかし、マーケットは大幅な乱高下を繰り返していました。現在の金融システムと政策は、その後もサブプライムローンの、問題の広がりと深さがいまだ掴みきれていないので、市場は暗然として不安定な動きを繰り返しています。暗中模索、疑心暗鬼の様相が続いていました。
    ブッシュ大統領は8月31日(金)、この問題に就いて、ホワイトハウスで緊急の記者会見を行いました。大統領はそこで、サブプライムローンで焦げ付きが広がっている問題を受けて、その緊急の支援策を表明しました。即ち、返済に苦しむ住宅の保有者を助けるために国の信用保証を拡大し、優遇税制を導入するものです。又別に、税の所得控除を広げると表明しました。
    一方、バーナンキFRB議長も31日(金)の記念講演で、「流動性を供給し、市場が秩序を維持するために、必要に応じて追加措置を譲じる用意がある」と述べました。状況次第ではフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げることも示唆したものです。現在の誘導金利は5・25%です。
これらの発表を受け、午后から始まった東京株式市場は取引開始の直後から一気に反騰に転じ、全面高の展開となり、尻上がりに上昇して、終値は415円27銭高となり、日経ダウは16、569円でこの日の取引を終えました。
    不安心理で動揺していた東京株式市況は、米政府、金融当局が、政策を総動員してサブプライムローン問題の解決に取り組み、これ以上の金融不安の広がりを防ぎ、株式市場の下落を防ぐという明確な姿勢を打ち出したことで、連休前に活路を見出したようにマーケットは大幅な反騰に転じました。日本経済の状況を客観的に反映しきれないでいる、従来どおりの東京株式市場ですが、この時点で世界株安連鎖は又もや、「米国の力強い一言」で喰い止められたことになりました。しかし案件に関しては、油断は禁物です。事態の解決に各国が協調した、以後の持続的な対応が望まれます。
    小柄で精悍なブッシュ大統領は、イラク戦争終結以後の収拾で先の見えない戦いと、同時多発テロ以後のテロ対策で大きな物心の犠牲を払ってきています。そのため、人気は凋落の一途です。しかし一方では、アメリカ国内の治安の回復は目を見張るほど改善しました(私のニューヨーク・ロサンゼルス紀行 昭和経済)。色々と取り沙汰されながらもアメリカ経済は一般企業業績の好調を背景に、好調の一途にあります。ニューヨーク株式市場と幾多の経済指標は、その実体を如実に反映して、この点に就いては遅々として停滞気味の日本の株式市場のように、甚だしい遅れを取っているのと対照的であります。ニューヨーク株式は、依然として力強い上昇のトレンドにあると思われます。そうした時のブッシュ大統領の力量と手腕は、他国の政治家が足もとにも及ばない実力の程が窺えてきます。
     願わくばこの力量と才覚が、テロとの戦いは勿論のこと、犠牲を最小限にとどめ、世界の平和と秩序の確立に一歩でも近づいてもらいたいと念願し、更には持続的経済発展を期しつつ、地球環境の改善にも先頭を切って、世界の範として邁進されることを願って止みません。
    今、世界で住みよい国は、日本とアメリカだと云うことは世界周知のところです。ひるがえって、アメリカはもとより、今やブリックスをはじめ、新興国の国々、東南アジア諸国の経済発展は世界経済の発展の原動力となっています。それに比べ、日本の株式市場は、何ゆえに大きな遅れをとっているのでしょうか。現実に世界のお金は、元気で魅力ある国に投資の矛先を向けて流れていきます。日本の今の状況は、世界のお金が日本に流れてこないで、むしろ流れ出て行ってしまっている、と云っても過言ではありません。国内経済を活況かさせること、GDP の六割を占める消費を増やしめることが重要であり、これが景気上昇の大きなインパクトになるはずです。日本の株式市場は依然として低水準で停迷し、その実力を反映したものにあらず、これは日本経済の沽券にかかわる由々しき問題であります。
     折りしも中国の上場株式の時価総額は4兆7400億ドルに達したといわれます。日本の4兆7000億ドルを凌駕するにいたりました。我々は再び日本経済が、世界の飛躍台に立って国際経済を牽引してゆく様な道筋を立てなければなりません。経済のグローバル化は世界的潮流であり、改革改善の道は、常に、更に続けて行かなければ、ひとり日本のみが世界から取り残されてしまいます。国際経済の協調的枠組みに立って時代性をになって活路を求めていくこと、それは国内経済の格差なき経済発展にも大きく寄与するものと考えるべきであります。
    結果、日米大国が、油断することなく国際経済の範として活躍する舞台を打ち立てる更なる努力と研鑽が、我々に求められています。                9月1日

平成19年9月1日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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