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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.11-08 のどかな牧場風景が一転、暗黒の世界に

のどかな牧場風景が一転、,暗黒の世界に
     
    放射能汚染の国と遂になる我らはいかに処してゆかむや
    一発の原発基地がこの国と民に災禍をもたらしにけり
この国と民をこの先如何にせん放射線量を量り生き行く
    広範の放射線能と戦ひつ実験舞台となりぬこの国
    原爆と原発事故の長大な資料に備ふ国の愚かさ
    セシウムと戦うこの先30年なほ半減期とも人の云ふなり
    良心のなき科学者と政治家の跋扈の後に病めるこの国

東電の福島第一原発の爆発で飛散、拡散した放射能は、日本国と我が民族に深刻な事態をもたらし、我々は日々多かれ少なかれ、目に見えぬこの放射能の被曝を受けながら、毎日の生活を強いられています。事故を起こした原発基地からの恐ろしい放射能の漏出と拡散は、あれから丸五ケ月が経過した今も、依然としてこれを止めることが出来ずに難行を極めております。
   例えば放射性物質の拡散は日本の大地に、空に、海に及び、日本を取り巻く環境の全ての生物が放射能の直接的影響を受けています。そしてその結果が、全生態系に及んで生物体を蝕んでいることも知らなければなりません。事態は想像する以上に深刻であります。影響の及ぼすところは計り知れません。勿論、人間もその例外ではありません。だからこそ、人体への被害、人命の危機という悲劇の到来が気になって、みんなの心の中で叫ばれているのです。赤ん坊を抱いた母の不安に満ちた表情は、象徴的です。この難問克服に全知を発揮し、防御体制を完璧なものとしなければなりません。不可能なることを以て懸念することなく、これを可能ならしめなければなりません。
   原発事故の発生と、処理を巡って、今長大な実験が日本において行われており、世界が固唾をのんでその行方に注目しています。事故から派生するさまざまな影響について、膨大且つ詳細な調査が現実に行われており、各国はその対応に追われています。たとえば三陸沖に発生した史上最大の地震と、巨大津波の発生は瞬時に、アメリカ中央情報局に捉えられ、原発基地の損壊も直ちに正確に把握され、事の重大性は翌日、アメリカ艦隊の三陸沖に派遣、停泊して原子炉の破損とメルトダウンの確認、放射能の拡散の測定に、事態の観察に素早く従事していました。その時日本国は原発基地に何が起こっているかすらわからず、現地からのあいまいな情報を頼りに、混乱を極めておりました。アメリカからの情報と支援を頑なに断り、うわべだけの威信に固執し、自力対応に体裁を繕っていたのです。日本の危機管理に大きな遅れと手落ちがあって、情報把握に、アメリカとの天と地の落差を覚えるものです。
   それに引き替えのんびりした我が国の話になりますが、因みに昨年秋、農家では稲の刈り取りが終り収穫の秋を終えました。農繁期を過ぎた農家に、靜かな休養の時が訪れました。刈った後の稲わらはそのまま田んぼや野づらに置いて乾燥させ、干し草として家畜の餌に供します。畜産農家は、自前の牧草や干し草の外に、こうした農家から稲わらや干し草を購入し、冬場の養牛の餌に備えます。田んぼや野ずらに積みあげられた稲わらは干し草は、晩秋から冬にかけての、のどかな田園風景のひとこまです。
   三月十二日の福島第一原発で起きた水素爆発は、こうした農村の平和な生活を一変させました。大気中にに飛散した放射性物質が、こうした野づらの干し草や稲わらに大量に降りそそいでいました。農家の人たちは稲わらをまとめて、家畜用飼料として畜産農家に売却していました。養牛農家の人たちは餌として、これを養牛に与えていました。しかしこのことが原因で畜産農家の牛の体内に放射能物質が残留、多くのセシウムが体外に排泄しないまま蓄積していました。肉牛農家はこれを食肉加工場を通じ、全国の消費市場に出荷しました。今回、こうした肉から国の基準の値を超えたセシウムが検出され、大きな社会問題に発展してしまいました。悲しむべ、憂慮すべき事態であります。もちろん稲わらや干し草をまとめたり運んだりした農家の人も、大量の放射能を浴びていることになります。
    国と県とは直ちにこうした牛の出荷を停止させました。出荷停止に追いこまれた肉牛農家は悲惨な状況で慨嘆の極みです。事は斯様に、放射能汚染は牛だけに限ったことではありません。地上、海中のすべての生き物に及んでいることであり、私たちが日常それを口にしている全ての食品に及んでいるとみなければなりません。たった一基の原発事故による放射能の拡散と汚染は、従来の生活様式を根底から破壊し、社会機能の全てにわたって影響を及ぼし、我々の生活を一変させ、考え方や、価値感の一大変化をうながす結果となっています。狭い国土に1億二千万人の人口がひしめくこの日本に今、54基の原発基地がありますが、そのうちのたった一発の基地が狂気の沙汰を演じた結果が、この国と民族の存立を危ぶませる局面をもたらしているのです。何と恐るべき仕業でしょうか。
    史上最悪のことの重大性にかんがみ、わたくしは一貫してこの問題を取り上げてきていますが、前門の虎、後門の狼で、悲しいかな思索、考察は立ち往生しております。解決策が見いだせないまま、放射能の半減期の三十年を待つのみなのでしょうか。そのうち、放射線量の体外、体内の両面からの被曝を受けながら、体に異常をきたす人たちが徐々に出てくるなど想像しただけでもいたたまれぬ思いでおります。被曝の程度によっては即、死に至るものであることを、そこまでのいろいろな身体疾患の発症が、さまざまな形で起きてくるのでしょうか。これに対する万全の医療体制は整っているのでしょうか。
    私たちは、人間社会生活を営んでいくうえでさまざまな事柄に会いながら、訂正、廃止、破壊、改革、創造を繰り返し、歴史上にその勤めを果たしてきておりますが、科学者が物理学の世界で陽子や、中性子や、中間子などの素粒子の世界まで首を突っ込んで、原子核というえらい化け物を捕獲するに至り、この生かし方、応用を一歩誤ると破局にいたるものであることも原子爆弾という破壊兵器を以て知らされました。神の聖域に足を入れたのも同じであることを、その利用を知って安易に手を染めたことになって、取り返しのつかないことになって今になって反省の声を上げている始末ですが、遅くはありません。ここで悔い改めなければなりません。
   核の平和的利用が叫ばれて以来、核の分裂反応や、核融合反応から出る強力な熱エネルギーを利用して、電気を作り出す技術については経済性についてはともかく、当初から原子炉の核燃料の暴走の危険性が指摘されていました。しかし、原発推進派の政治家や経済界の重鎮は、多くのサポーターを繰り出して演出し、危険性の事実をひた隠ししてメリットのみを強調するという、ある面で国民を欺き、これを国策として打ち出し経済的利益を得ようと試みました。原子村という村意識を増長し、特権意識はそのまま秘密主義、隠蔽主義を保守したまま現在に及び、その体質が歴然とした歴史を繰り返してきています。これが事故の引き金となったとも言われております。当時のノーベル物理科学賞受賞者まで繰り出して、やみくもに原発の安全性を訴え、強大な権力を以て推進してきたいきさつがあります。福島第一原発の事故は、最終的に人類存亡の危機をもたらしかねない状況を作り出してしまいましたが、人間のあくなき欲望の追求と、驕り高ぶりが、神の怒りを買ったとも言えないことはありません。所詮、万物の霊長たる人間のこと、何をしてもいいということではないのです。
原子爆弾の洗礼を受けた日本国と日本民族を襲った今回の大事件は、今や、狭い国土に巨大な化け物が暴れまわるという状況となって、人命を脅かし国と民族の存亡をかけた試練に私たちは直面しています。戦いがこの先いつまで続くことか皆目見当がつかないままで、膨大な放射線物質の半減期30年といわれる間それと付き合い、時に、立ち往生の始末です。この国の指導者たちはノー天気なものばかりで、おめでたい限りでいいのですが、実情をまったく理解していないのも困ったものです。
   国会が、政党が、首相退陣だ、日立の合併だ、円高だ、産業の空洞化だ、国債残高900兆どころの話ではありません。マニフェストだ、子ども手当だ何だかんだと、うつつを抜かしている場合ではありません。景気回復だ、円高だ、そもそも事ここに至っては、金もへちまもありません。命あってのこの世であり、国民あっての国であります。放射能拡散と、汚染の根源の息を止めなければなりません。一刻も早くです。なのに五ケ月を経過した今以て、このことが出来ずにいるのです。何たる醜態でしょう。この原発事故のことだけしか、今の私の頭の中には浮かび上がってきません。この解決なくして、何をかいわんやであります。
   元来、私たちの身の回りにあるはずがない放射線量が、程度の差はあるにしても存在しているというおこの恐ろしい事態です。日本全土が、日本国民が、この死の灰以上の、広島、長崎の原爆以上の,大規模な放射能の汚染と、被曝から、いかに抜け出すかに心しなければならない事態であります。初めのころあわてて日本を逃れていった人たちがいましたが、笑うどころではありません。牛ばかりではありません。今度はお米の被曝も出てきて、一斉に検査することになりましたが、お茶や、牛や、お米だけではありません。地域全体が汚染されていることから、そこのすべての食べ物も同じ影響下にあります。さりとて広い地球とはいっても、どこかの国の土地を借りて国民が一度に避難して移動することもできません。人間を初めとして、多かれ少なかれ食べているものすべてに被曝、汚染があると見なければなりません
   故郷を追い出され避難先で苦渋の生活を強いられている避難民がまだたくさんいます。同様の人たちがこれからたくさん出てくる可能性を否定できません。更に広い地域にわたって、起きてくるかもしれません。
   体内被曝をおそれ乳飲み子に乳を与えてよいのか、食べ物を与えてよいのか、赤ん坊を抱いて途方に暮れる母の姿は、今の日本の現実であり、私たちの宿命と、この先、背負っていく十字架であります。 神よ、この国の民を、目覚めさせ給え、救い給え、      8月3日。


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米国々債の格下げ

ドル格下げを巡って米財務省と、格付会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の苛烈な攻防が水面下で繰り広げられていました。この会社はかってあの極悪商品のサブプライムローンを最高位の格付けにしていた経歴があります。
財務省に格下げの通知があったのは現地時間で5日午后2時です。驚いた財務省はS&Pに対し、再考を促し、少し時間を置いて冷静になってから決めて欲しいと要請したとのことです。両者はぎりぎりの線まで緊迫した状況で攻防を繰り広げていました。財務省は切り札に内容を確認した上で、S&Pの推計には、中長期の債務の残高に2億の誤算があると指摘しましたが、S&Pは結論を出すには大きな影響を与えていないという主旨で主張を押し通しました。
米国々債の格下げは、トリプルA(AAA) からAA+に一段階の格下げとなりましたが、格下げ制度が制度化されて以来初めてのことで、米国と米国民にとって大きな屈辱であります。世界の絶大な信認を得、その役割を果たしてきた米国々債は、急激な経済環境の変化とは云え、激的な潮流に身をさらす結果となりました。朝日新聞などは連日、大国の落日の影を追ってドル没落の取材記事を載せていますが、今回の格下げが持続的にも世界の金融市場に与える影響は計り知れず、8月8日月曜日から始まる東京の為替市場と株式市場へ直ちに影響するもので、その動向が注目されます。そして明けたニューヨークの株式市場の取引開始が、重大関心事であります。   
    ここ数日、米国の議会では、国債発行の上限引き上げを巡って、オバマ政権と議会との交渉が激しく取沙汰されて、それを危惧して為替や株式の乱高下が続いてきました。最近はドル安の傾向にあり、各方面に影響を及ぼしていたところです。日本政府と日銀は8月5日は4兆円を超える円売りドル買いの為替介入を行ないました。この日の商いは50兆ともいわれ、ドル下落の流れにはとても抗しきれない取引量であり、勢いです。円高は、76円25銭が戦後につけた最高値ですが、これを突破する可能性もあります。
2008年のリーマン・ショックに端を発した金融危機を脱するためオバマ政権は7870億(62兆)という史上最大の財政出動による景気対策を打ち出しました。米FRBも「量的緩和」を続け巨額の資金を市場に流通させた結果、経済の危機的状況を脱し、その後の景気回復につながりましたが、多額の財政出動の国債依存度だけが残っていることで、ドルの価値が下落傾向に走りました。国債残高は14.6兆ドル(約1140兆)であり、この信用維持こそは米国金融政策の命綱であります。
翻って日本はどうでしょうか。史上最高値の1ドル76円25銭は目前であります。日本も長引くデフレと国債発行額の増大で900兆に及ばんとする借金大国です。国債の引き受けが米国と違って、その大部分が専ら国内で消化されていて、個人金融資産1400兆と云われる力に世界の信用不安をうけることなく推移してきています。従って安全資産として他国通貨を売って円を買う傾向は強まるでしょう。為替介入は大勢に抗し切れるものではありません。
   ドルに代わって基軸通貨として台頭する国として、成長力目覚ましい経済力の背景に中国、インドなどがあげられてきていますが、ドルに代わって役割を果たすには到底実力不足であり信任を得るまでには至っておりません。ドルが格下げされたとはいっても他の格付け会社の二社が最高級のトリプルAを依然として持続しており、現実にドルに代わって登場しうる基軸通貨は見当たりません。基軸通貨にあげられる国力とは、いろいろな観点から国家の実力を表示したものであって、単に数値的に引き出されるものではありません。経済力はもとよりですが、他にも政治的、文化的、生活水準的、地政学的、教育学的など総合的な意味合いが通貨の価値が深淵に含まれている厳粛なものであります。
   ところで我が国の場合、 円高は輸出産業にとって打撃ですが、輸入産業にとってはメリットが増大しています。国内のデフレ解消は、この先もおぼつかない状態が続く以上、内需拡大を更に長期的に模索する必要があります。わけても円高に対応した金融政策、企業経営が望まれます。東北大震災による壊滅的打撃は50兆とも60兆とも云われておりますが、被災地の復興に向けた経済喚起は、内需拡大の起爆剤となす絶好のチャンスであります。それに合わせて規制緩和を促し、新しい分野に企業参入する素地を提供することが重要です。
    経済特区を設けて企業誘致を促すこともできます。円の購買力の向上に合わせ戦略を打ち立て、海外投資に積極的に乗り出す好機でしょう。税制の軽減措置も必要になってきます。やるべきことがたくさんあります。ぐずっている政治状況ではありません。大災害復興資金だけでも思い切って70兆、80兆と大胆にぶち上げたらどうでしょうか。デフレの風も吹き飛ばす絶好の好機と取れば、日本再生の道はおのずと開けてくることでしょう。景気回復の輪をおおきくひろげて、大企業も、中小企業も等しく産業振興の波に浴するような政策効果をもってすれば、企業業績の拡大につながり税収の増大が財政再建に寄与する結果ともなります。それを支援する法改正や、規制解除など迅速に決めて、政治家がしっかりしていませんから、優秀な官僚の諸君が省益にこだわらず、国と国民経済の発展のために英知を競って前面にでて活躍することでしょう。明治の開国に似た献身的貢献が必要であります。大胆な発想を以て臨まなければ旧態然とした今までの姿と変わりありません。史上未経験の、未曾有の、国と国民の存亡の危機に直面している現在、その使命たるや何をかいわんやであります。
   思うに、さらには国内景気の長期低迷から脱け出し、豊富な資金と円高を利用して、海外の資源獲得を果たし、M&Aによって外国の優良企業を買収して市場拡大につなげること、日本国内の産業立地を尖鋭化し、機能集中型に変換させ、生産性の向上を計ること。研究投資と新機軸産業の確立で、新規模雇用の創立に励むなどの有利な政策の展開が望めます。要は実行あるのみです。
   こうした時に重要なことは、国の金を使用するにあたって、公明正大にその使途を明白に説明でき、いやしくもこれが私腹を肥やすような温床とならぬよう、しがらみのない、きれいな政治指導者のもとで行われるべきものであります。菅さんに代わる人がいれば別ですが、そうでない限りさしたる理由なきを以ていたずらに政変をもたらすことのないよう心すべきであります。やみくもに菅退陣の大合唱ですが、野党ばかりでなく与党の中から退陣の掛け声がかかっってこんなことは政権史上珍しいのではないでしょうか。獅子身中の虫とはこのことであります。国民にとってはこの騒ぎがあまりよくわかりません。政権交代よりも今なすべきことがたくさんあるはずです。体制を立て直すに、またぞろ多くの時間を割かなければならず、それだけの効果があれば別ですが、見回しても残念ながら器の大きな大した人物が見受けられません。所詮、コップの中の嵐で国民のために大胆に働けるような内閣を期待するのは無理かもしれません。(8月8日)

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北の空から秋雨前線と思しき気象状況に、本邦は久しぶりにさわやかな涼風を運んだ雨と風にほっと一息ついた格好ですが、昨日までのうだるよぷな猛暑が嘘のようです。東京を局所的に襲う夕立も、篠つく激しさで、熱気と埃にまみれた都会一面を一気に洗い流してくれました。これが幸いして心配の放射能までも洗い流してくれればいいのですが、そちらの方は一向に難儀して消えるでおころか蓄積、堆積されていく始末で困り果てています。いつどこにいても未だに散布される膨大な量の放射能の傘の下で、生活を余儀なくされています。戦争の殺戮に匹敵する殺人行為の潜在的恐怖は、私たちの身の上に重くのしかかってきて逃れることのできない私たちですが、夜も昼も区別なく不断に健康であるべき体を蝕んでいることは確かです。放射能という物質の正体をつかみきれない歯がゆさを覚えて忸怩たるものがあります。
  無用の恐怖感を与えるばかりが能じゃありませんが、いったいどこからどこまでが安全で、どこからが危険なのかはっきりしないところが一層の不安感を我々に与える結果にもなっています。安心感を与える意味もあって、しきりに安全宣言を発表しておりますが、確たる基準があるわけでもなく、すべては手探りの状態なのです。内部被ばくに当たっては、いろいろな臓器に放射線量が蓄積されて、これを除去する手立てもないことから、極論すれば死に至る病に遭遇しないとも限りません。また遺伝子に与える不用意な影響は、生殖機能そのものに狂いを生じさせ、妊婦や胎児に与える影響も無視できません。そのように考えると安閑として夜も寝ることができない不安に駆りたてられてきます。
  広島、長崎に落とされた原子爆弾によって、日本人は民族として苦しい洗礼を受けた記憶はいつにも忘れることがなく来ておりますが。核の平和利用をかざして世界に先駆けていこうとしたところに、驕り高ぶりがあったことは事実で大いに反省しなければならない点でしょう。そして核エネルギー開発による電力への転用によって、大いに経済的発展の恩恵を浴してきたことも事実でしょう。しかし、その代償は今日あまりにも大きく、国と民族の存亡にも及ぶ大きな賭けに出てしまったことは取り返しのつかないものであります。
  とにかく福島原発基地の事故収束を図り、放射能の漏出を食い止めて、拡散を最小限にとどめ汚染土壌の除去に努めて、人体の影響をできる限り食い止めることに努めなければなりません。長期的な戦いとなるでしょう。その間いろいろな病的疾患、精神的な疾患に悩む人が続出するに違いありません。そうした状況にいかに対応していくか、全力をあげて解決していかねばなりません。繰り返し、繰り返し幾度も同じことを言ってしまっておりますが、こればかりは事態が一向に改善されず、依然として遅滞している証拠であります。試行錯誤の連続であり、進展しない状況の有様です。世界と、人類史から見れば、まさしく人間に及ぼす原発事故の、我々は実験台に乗せられており、良くも悪くもこれからの社会と後世、にその成果を伝えていく運命にあると申さねばなりません。先輩たちが踏んできた道とはいえ、悲しむべき過ちを犯していまった結果であります。とは言いながら、被害を最小限度にとどめていくことが、この国と民族の存立を左右し決定ずけることにもなります。与えられている技術と資本と知恵を駆使して、今は前進あるのみであります。   8月19日

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最近、いらだってこの国について思うことがあります。私はこれを即興の和歌にしたためて焦燥、慟哭の極みを示して、心中のわだかまりを己ながらに発散しています。そうでないとそれが昂じて体に影響をこうむること甚だしきことを痛感するからであります。人それぞれにセルフ・コントロールの技を持っていますが、気分転換に、たとえば旅行をしたり、ゴルフをしたり、スポーツジムに通ったりしてどこかでうっぷんを晴らして息を抜かないと、自分に健康障害をもたらすことになってしまうでしょう。最近それらしき兆候が私にも見えてきました。たとえば睡眠不足に陥ってしまうことです。よく、精神安定剤などを服用して、睡眠導入剤なども使ったりする場合がありますが、依存症になってしまったりすると、せっかくの心身の健康体を損ないかねないこともあります。やはり努力して他の自然的対症療法を考案して、心身の安定を志すべきではないでしょうか。私はペンと紙を持って、それを専ら和歌に託しています。
   今考えて即詠した和歌を、たとえば披露してストレス解放のサンプルと考えてみますと、

    一発の原発事故にこの国の万象みだれ指針なき先

    性懲りもなく政争に明け暮れて民をわすれて国の墜ちゆく

    セシウムと日差しの熱き二重苦の猛暑のあとの今日の夕立

   今日降った篠つく夕立のように、地上のすべてを洗い流して清涼な地上と化してくれれば、私たちはこれ以上の法悦を身を以て味わうこともないのですが、あにはからなんや、神は斯くのごとき贅沢をお許しになってくれません。悔い改めの気持ちを持っていないことを知り尽くしておられ、たとえば性懲りもなく時局重大な時に、政界はあくなき権力闘争に明け暮れている始末です。自民党時代をしのぐ派閥抗争を国民の前に見せつけて、露骨な政権争いにうつつを抜かす民主党の姿には、政権交代をうたって出てきたことは,まさに欺瞞であり詐欺師的策謀と言われても仕方がありません。元来政治家に正義だ、真実だ、公正だと期待することが間違っているのかもしれませんが、多くの税金を使いまことしやかに国民のための政治と公表されるとついつい期待を込めてしまうのが人情であります。それにしても自民党に期待をするわけではありませんが、ここ二年間の民主党の政権運営には、はっきり申して私は物凄く落胆し、発言する言葉を失っております。政権担当能力の未熟さは仕方がないにしても、身内同士の争いをされていては国政の運営など覚束ないばかりか、国の緊急時に日夜粉骨砕身を期するなど、程遠いものであります。
   菅さんの辞任がはっきりして、また次の代表者選びが近日中に行われますが、いずれも貫禄不足の議員諸侯が手を挙げて、だれがなっても同じだということがはっきりしています。それよりもいつまでもガタガタしていては世の中も、国民の気持いも定まらないから早く決着をつけて、この際少しでも話を前に進めてほしいというのが国民のはかない願望ではないでしょうか。できた政権は菅さん以下であって、国会と政局運営はますますがたがたすることにもなりかねません。できそこないの菅さんでしたが、これを皆が支えて支援していけば何とかやっていけたのですが、だれもがそっぽを向いてしまった以上は、いくら本人に続投の意思と志があっても政治を推進して行くことはできません。
   軽薄な人、旧態然の人、見飽きた古い人たちが恥じらいもなく、またぞろ世間の表舞台に厚かましく出てきておりますが、いったいどうゆう神経なのでしょうか。古い、ひなびた人たちにすり寄って身売りしてまで政権の座に就こうとする魂胆もいただけませんが、足元を見て捲土重来を試みる輩もいかがなもんかと、判断に迷うばかりで、考えているとまたストレスがたまってあらぬ神経を費やすことになります。
   折角、世の中の改革に乗り出したかと思った菅内閣ですが、野党の攻撃も言わずもがな、身内の造反で、獅子身中の虫とあらば癒しようがありません。菅さんの力量不足とでも言いましょうか。ましてや国民は、史上最大の震災に遭遇し、恐ろしい放射能汚染に向き合って、日々苦しく不安で、はかない戦いを続けているさなか、金権政治の温床の派閥抗争に現を抜かす政治家の救いがたき現代感覚であります。ほぼ5人の候補者で争われるようですが、早くから立候補を決めた野田候補が手堅い感じがします。周囲の環境や、消去法で行くと現実的で有力な雰囲気であります。菅さん以後の政治の空白をなくすためにも、即ち、政策の継続性を含めて、自公民との公約を含めても落ち着くところが、おそらく決選投票にもつれ込んで賢明に選択されることになるのではないでしょうか。私見ですが、そうなることを願っています。金権政治の脈々とした小沢一派が依然不気味な存在ですが、この際、逆戻りがしすぎると国民の信頼をさらに失う結果となり、清廉潔白な人材登用によって、尚また野党にもさわりの良い人が、ねじれ国会を緩和させることに良い結果となるかもしれません。
   このところアラブの独裁国家が次から次えと崩壊の憂き目にあって、市民の蜂起にあって断末魔の様相です。ヒットラーを想起させるような暴虐、シリアの狂犬カダフイの断末魔を見ている昨日今日ですが、為政者の独善主義、独裁者に成り果てた末路は、悪魔の道を転がり落ちていくように哀れであり悲惨であります。アメリカをはじめ欧米の先進国はもとより、幸いなことに日本は開かれた民主主義のもと、人権尊重と自由と平和主義にのとって確固たる憲法に守られて、模範的国家の建設にまい進してきております。このもとでの今回の民主党の代表者選挙も、憲政史上のわずかな、しかし重要な一部として今、行われようとしております。
   人類史上の人物を検索しても、みな同じ運命をたどっているのは不思議であります。日本の、今置かれている空前の国難に対処して、先に立つべき人たちが、国民本位の政治的責務の何たるかを忘れ、自己中心主義に陥っている姿はもはや救いようがありません。コップの中の嵐に、貴重な時間を割いて、無為に過ごしている悲しむべき姿がここにあります。しかし、願わくば一日も早く国政を定着させて、将来の電力問題、震災復興のための政策を打ち出し、さらには景気対策、財政再建の問題、後れを取る外交問題など、解決すべき諸問題に果敢に取り組んでもらいたいと願う次第です。
   今日は、関東地方の各地にもたらした夕立は、さわやかな秋風を伴って昨日までの猛暑が嘘のようにぬぐい去られました。ひぐらしの啼く声が秋の近ずきを知らせてくれます。季節の細やかなめぐりは、幸いこの麗しき大和まほろまに繊細に訪れて、私たちの気持ちを和ませてくれることは、神の恵みとしか思えない自然の出来事であります。節電騒ぎだった毎日も、去ってみれば嘘のように忘れ去られていきます。嫌な思い出と一緒に、空中に舞うおぞましき放射能を消し飛ばしてくれればいいのですが、半減期30年という執拗さはいかんともしがたく、長い戦いが続く運命にあります。試練に耐えて、先に望みを以て行くしかありません。
   今は、放射性物質の速やかな除染と、原発基地での放射能漏れを食い止め、飛散する放射性物質が人体に及ぼす弊害を検証し、治療対策に万全を期することが先決です。加えて原発基地損壊の復興計画の工程表に従って正確に、速やかに実行してもらいたいと期待するゆえんであります。膨大ながれきの撤去も迅速を要しますが、これまた放射能を帯びていて、始末に困惑の状態です。そもそも原発の使用済み核燃料の廃棄処分にお手上げの状態であってみれば、それと同様の厄介者の処理を巡って、莫大な量の処理にに何年かかるかしれないものとも言われております。
   慣れとは恐ろしいもので、いつしか放射能拡散と汚染の恐怖は薄らいできてしまいそうです。そうした時の油断は禁物です。世界は、日本の原発事故の対応を巡って、我が国と国民を将来にわたる長大な実験場と見做し、自国の未来の危機管理に供するべく膨大且つ、詳細な資料収集と検証に懸命であります。

    国民の嘆きを無視し政争にうつつを抜かす今の為政者
    原発の事故の被害に会ふ国の世の実験台に立つ定めとも
    何かにと物云ふ間にも放射能汚染にありしこの国と民

 残暑のみぎり、各位のご健勝を祈っているうちに、今気分爽快となりました。8月26日。


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どじょうが、なまずを飲みこんだ

8月29日、首班指名に民主党の野田佳彦新総裁が指名されて民主党人事に着手した野田氏は、党運営の要となる幹事長に小沢一郎氏に近い輿石参議院会長を起用しました。挙党体制を築くため、今まで党内対立の一方の旗頭の小沢氏を取り込んで、逆に小沢氏の特異なイメージを封じこめる奇策に出ました。
特定の派閥にも属さず、地盤、看板、鞄のない地味で真面目な一兵卒が、大派閥を率いる金権政治の権化の大物を抑えこんだ形です。反小沢を誇張する余り、今まで得てしてその風評が、逆に小沢氏個人の存在を煽り、影響力を政界に闇将軍として、はたまた世間に広めつつあったことは否めません。体の小さいどじょうが、大きな体のナマズを飲むことができるとしたら、きっと腹の中がでかい「どぜう」なのかもしれません。注意することがあります。第一に、消化不良を起こして下痢に犯されないように注意すること、第二に、毒気に犯され嘔吐のすえ吐き出したりしないこと、第三に、上手に消化して「しものもの」として排泄してしまうことではないでしょうか。折角飲み込んだ獲物です。毒気を除き、栄養のあるところを充分に摂取することに心がけてください。面白い政治の流れになってきました。今までの閉塞感に息苦しかった国民は、動き出しそうな民主党内の陣容を感じて、一抹の期待を寄せられる雰囲気に少しばかり安堵しているところです。    
   ここは力と知恵比べで、今後の野田氏の党運営がいかなる展開をきたしてくるか、その力量がためされるところです。柔よく剛を制し、弱よく強を制す、そしてどのようなバランスを以て閣僚の顔ぶれが決まってくるか、組閣の仕上がりが見ものであります。

    貧しさに耐へ民衆の支持を得て理想をかかげ宰相の身に
    自らをどじょうと名のり宰相にまかりいでしは野田新首相
    国難に立ち政権の舵取りをとる身に神のご加護あるべし
ぐうたらの海千山千の政界に足すくえれることのなきよう

    自らをどじょうといふもさに非ず歌舞伎役者のごとき風貌
    泥臭く生きる人生とまともなり苦労を知りて味はひ深し
    小沢より風格ありて重々しなほ人柄と顔になじみて
    この国とこの国たみをよきかたに導く汝れの栄へ祈らん     8月31日。

   

平成23年8月3日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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