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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.10-07 奈良の「古寺と仏像」特別展・会津八一の和歌

  「奈良の古寺と仏像」の特別展   会津八一のうたにのせて

  梅雨の合間に見た強烈な日差しに、燃えさかる青葉の光に、横溢する躍動感を覚える季節になりました。
  七夕を迎える七月七日から九月二十日まで、日本橋の三井美術記念館で「奈良の古寺と仏像」の特別展が開かれます。そして歌「会津八一の和歌に合わせて」とあります。「奈良いかるがの里」に由緒ある二十の寺院から、三つの国宝を含めた数多くの名作が一堂に集められ、歌人、会津八一の万葉の調べを以て私たちを古き静寂な世界へと、敬虔な祈りをこめていざなわれてくれます。
  会津八一は、和歌を以て日本一、書を以て日本一と自他ともに認める卓越した歌人であり、書家であります。古都、奈良の名刹には、八一、秋草道人の石文が随所に建っていて、典雅な趣きを添えています。今回は会津八一の和歌を以て古寺を訪ね、仏像を身近に拝覧出来る絶好の機会を得ることができました。是非とも観覧しに出かけたいと熱望しております。
  私は、微力ではありますが、はからずも会津八一の系譜を以て知られる短歌同人誌、淵を主宰しております。淵は会津八一の直弟子であり、八一の謦咳に深く触れた早稲田大学名誉教授、植田重雄先生が創刊された同人誌で、歴史と伝統に育まれてきた名門誌であります。今回、百八十六号を発刊し、脈々としてその趣旨を受け継いできております。植田先生は又、秋草道人、会津八一研究の大家であり、第一人者であります。文学博士として多くの学術書、研究書を著して、斯界に多大な功績を積まれてきましたが、五年前に他界されました。
  今年の元旦号、即ち第百八三号の表題には会津八一、秋草道人の名歌と書を掲載しました。一首の和歌は、奈良東大寺の大仏、廬舎那佛をあらたかに詠んだ雄渾きわまる名歌です。この掛軸は、奇しきめぐりあわせで、私が若い時に買い求めたもので、私の唯一の宝物であり、自称、門外不出の作品としてそっとしておいたものです。機を同じくして、奈良の古美術と会津八一の特別展が開かれるとは、洵にありがたき運命とでも申し得ましょうか。我ながら不思議に思っております。きっと、特別展では、奈良東大寺と、この和歌の一首に改めて接することができるかも知れません。百八十三号の淵には、たまたま「奈良東大寺」 として拙歌三十首を発表しました。
  会津八一は歌人として決して多作の作家ではありません。むしろ寡作の歌人でした。生涯を通じて詠んだ和歌は三百三十首程です。和歌は萬葉集の調べを継いで格調高く、詠まれた和歌の世界は万葉集をしのぐほどの領域を感じてきます。しかも創造的で非のうちどころなき完璧なものと、私は理解し、把えております。
八一の作歌の姿勢は、一首に幾度となく推敲を重ね、研ぎすまされたつるぎのように、ある時は繊細優美に、あるときは雄渾荘重なものとして、大和ことばの粋に迫る気迫がみなぎっています。大和ことばの美を再現するに充分であり、特筆すべきは、全ての和歌が 「ひらがな」 で書かれています。
  次の和歌は、奈良東大寺の廬舎那佛を詠んだ八一の一首です。
        *
  おほらかにもろてのゆびをひらかせて
  おほきほとけはあまたらしたり
 
もとより此の度の特別展では、東大寺の大佛さまにはお会いすることはかないませんが、あるいは東大寺の至宝と、大佛さまの写真に添えて、この一首の書を改めて見ることができるかも知れません。私の心には、再び「いかるがの里」に対する郷愁と憧憬の念が、ふつふつと湧き出てくることでしょう。   七月六日 記


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民主党 当たり前な敗北

   まさかの敗北、当然の敗北であります。菅さんはいつから自分の思想、政策のカジを切っ手しまったのでしょうか。長いこと期待を集めて、大衆政治家で草の根運動からのしあがった民衆活動家であったはずです。庶民の感覚のわかる、しかも、現実家だと思っていました。しかし、国民は期待を裏切られました。
    その民衆政治家が党首になり、首相になって初の国政選挙の参院選に臨んだとたん、民衆が嫌がる消費税増税の口をすべらしました。唐突であり、場当たり的であり、発作的であり、びっくりであります。気でもちがったのでしょうか。ここでも、「あっとおどろく為五郎」であります。
    人気取りであっても、いい方へ変身するならまだしも、大衆、低所得者いじめの大衆消費税を打ち出したら、不人気の浪を受けることぐらいわかるはずであります。判らんようでは政治家ではありません。重税を忌み嫌う民衆は嫌がるでしょう。消費税の前にやるべきことがあるだろうということです。それとも、そんなことは忘れてしまったと云うことなのでしょうか。どおいった形にせよ増税を以て景気回復を図るなどといったことは聞いたことがありません。日本の今の状態を考えるならば、消費税値下げではないでしょうか。政治家、今までの菅とはあるまじき発想であります。
    経済が本当に判らない人なのでしょうか。先日の国会の予算委員会の席で、野党が菅さんにいじわるな質問をしていました。経済用語で言う「乗数理論」 「投資の加速度理論」とは何かと、大学講義で一般論として学ぶものです。これに答えられなかったのです。この時、この人の経済は基本的に大丈夫だろうかと思ったのです。
    財政再建は今に始まったことではありません。胆略にギリシャの問題を持ち出したところで、どうにでもなるわけではありません。民主党が財政の再建を以て、安易な、国民に負担となる増税でなく、国の無駄使いの精査、削減、廃止を進める、又、公務員のリストラを含め、国会議員の定数削減など「脱官僚政治」を目指して規制緩和を促進し、地方分権推進者であると思っていました。実際に「仕分け人」の作業を、国民はもろ手を挙げて賛成し、喝采を送っていました。僅かかもしれないが、その手法の影響するところは大きかったのです。
     今までも景気を回復させるために、法人税の引き下げなど現実的な政策を提唱し、好感されていました。それ一本で行けばよかったのに、又そう在るべきだったのに、なぜか逆に消費税の問題を自ら打ち出して混乱と顰蹙を買い、そして国民は戸惑ってしまったのです。選挙運動中にも、消費税に頼って、しかも税率の引き上げは財政再建には避けて通れないと云う、平凡な理論に戻った愚か者とまでは言いませんが、あまりにも期待はずれの提言であります。消費税を5パーセント挙げてみても増収分は7兆円ほどでしょう。消費の頭を抑えてしまうほうが大きいのです。バラマキをやめて、先ず景気回復を目指し、法人税、所得税で税収を上げていく努力が肝要です。
    菅内閣の登場で国民の期待は高まり支持率60パーセント台までに上がりましたが、唐突な消費税率引き上げの発言で、国民の期待を裏切ってしまいました。国民は失望してしまいました。なぜいきなり増税なのか。支離滅裂さがきわだち、あたかも右顧左眄の分裂症状の感で、突如の病状の発覚に腰を抜かさんばかりだったのは、私だけではないでしょう。私の妻でさえ、友人でさえも同じような心境だったようです。これでは良識ある国民の支持は得られないでしょう。負けるのは当然であります。
     昨日、私は熟慮の末、個人的なことになって恐縮ですが、自分の大事な一票を Your Party、「みんなの党」に入れました。投票所から帰る途中、 梅雨の間に見た青く輝く空に、 夏の身近なことを感じていました。 7月12日。

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  異常気象が示すもの

約一週間前に、ようやく梅雨明けとなりました。各地に洪水や浸水、崖くずれをもたらした記録的豪雨の梅雨が明けました。その後、本邦は猛暑炎天の夏の到来であります。これも又、熊谷、高崎、岐阜といったところで三八度台の記録的炎暑となって、熱中症で倒れる人もあとを絶ちません。世界的には異常寒波、異常高温、異常降水、異常干ばつと異常づくめの気象が地球を襲っています。私たちは、極端に走る異常気象を体験する日々であります。
私たちの住む地球が、バランスを失ひ狂ひかけていないかと、危惧するこの頃であります。昔から、気象の変化を経験してきた人類ですが、とりわけ十八世紀後半から始まった産業革命以降の僅かな期間ですが、人間の慾望を欲しいままに文明が走ってきたつけが、大規模に私たちの秩序ある生存を蝕んできているのではないでしょうか。例えば、北極の氷山は、この半世紀で半減しました。地上の生態系を崩しつつあります。危機をもたらすスピードは乗数的に加速され、ある時点にくると、もはや制御しにくいものとなって、その限界を見た瞬間に自壊、自滅の道しかなくなります。叫んでみても遅きに逸す、という事態に遭遇しないとも限りません。ある科学者は、その日の近いこと警告しています。
もはや、経済発展と経済の成長率を云々するどころではありません。先進国、新興国を云々する国際会議どころではなくなるでしょう。時限を変えた、人間の英知が求められています。考えても見て下さい。ノーベルがダイナマイトを発見し、物理科学者が核の存在を発見し、石油や石炭のCO2排出のエネルギー燃料が拡大し、人間の生活条件は昔と違って格段の改善、進歩が促されました。人間のあくなき慾と平行し、比例して大量生産、大量消費が行われてきました。その分、秩序ある自然界を蝕み破壊してきています。メキシコ湾で起きた石油の掘削事故は、膨大な量の原油の流出となって巨大なアメリカ沿岸を襲っています。
そして世界は今また、リーマンショック後の経済の後退から脱け出すべく、懸命の努力が払われています。なかんずく、急成長を続ける中国の経済発展に世界が期待している状況です。世界が、生産と消費に躍起になっているうちに、経済社会の足もとが根本的に揺らぎ始めていることにきずかずに居ます。
人口十三億の中国の経済社会の発展は、インドも然り、ややもすると更なる地球の秩序破壊に拍車をかける結果となるでしょう。森林破壊が進み、産業廃棄物の排出も増えてこそ減ることはありません。CO2の絶体量の排出は増加し、削減の量を常に上廻っていくこと必然です。悪化は地上にとどまらず、空をはじめ、海へも波及しています。多くの自然災害は、人災によるものが沢山あります。何時までも際限なく続くこの悪循環をどこで絶ち切るか、人類に課せられた課題でしょう。
空を見上げると、地球の大気圏外の状況はなんら変らずに永遠に安泰であります。天界の秩序の軌道に乗って、整然と従って動いています。恐らく太陽系の範囲のみに通じだ理論かもしれませんが、壮大なニュートンの万有引力の法則に従ってこの小宇宙が軌道にのっています。神の摂理に従っています。これを犯す殺意をもった者の存在は確認できません。神は、悪魔の存在を許していません。唯一、生物の存在を確認できるのは、この小さな地球のみでしょう。それは、青く瑞々しく光るっています。ひょっとすると私たちは、懸命になって日々、悪魔を作り出しているのかも知れません。これは本来の人間の思惟に反するものであり、もとより神のご意志に反するものであります。
先日、宇宙最大の規模の爆発が遠くで感知されました。はるか遠くの世界、法界の出来事であり、およそ感知できない謎と見るべきでありましょう。わたしたちは足もとを見るとき、ロマンの世界を見ることが出来ます。昔、私たちの少年時代は、暑さ寒さに我慢して生活してきました。それに引き換え、現代文明に生きる私たちは、例えば冷暖房に制御された快適な一時しのぎの生活の恩恵に浴していますが、他に多くを失っているものがあります。
今の人たちは、天然に生成し、神の摂理に動く自然界のなかにあって、敬虔な祈りと感謝に満ちた生活を忘れてきてはいないでしょうか。見上げた星のきらめき、落ちていく夕日、清冽な清水、緑のかがやき、海の波の打ち返し、赤とんぼの群れ、鳥のさえずり、農耕の楽しさ、水平線に昇る夜明けの太陽、こうした身近な自然体の生活を体験することなく, ただ慌しく一生を過さざるを得ないような今の社会を考え直すことも、あるいは個人的に大切なことと思うのです。 7月26日  記
  


平成22年7月6日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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