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社団法人昭和経済会

理事長室より
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理事長室より

Vol.05-06 眞の骨太方針

 「官業の民間への開放」は小泉内閣の目玉商品であり、国から地方への三位一体の改革、予算制度の改革と並んで最重要課題であります。財政再建は「官業の、民問への開放」という政策で達成されるべきであり、日本は今やその熟成期に来ております。ちなみに財政再建のためには、将来の小さな政府を目指した政治であり、300兆余の資金を活用、運用する郵政事業の民営化こそは、その一里塚と位置づけることが出来ます。
 日本の公務員の数は、他の先進国に比べてさほど多くありません。その代わりに日本には補助金や税制の優遇措置を受けている「官制法人」というのが沢山あります。これらの先には定年で退官した高級官僚の就職先、天下り先となっていて、専ら既得権に安住しています。従って改善、改革意識に乏しく、旧態依然とした体制の維持に努めることに狂奔しています。
 即ち官業は、民間企業のようにコスト計算をする必要がなく、単に収支計算をして、赤字が出たときは国民の税金で補填することになっています。もとより競争原理も機能せず、競争意識もありません。結果、官僚の「官業への天下り」「不透明な経営実態」「族議員の暗躍」の温床を連鎖反応を繰り返すことになり、あまつさえ国民経済の発展に大きな弊害を齎す結果にもなります。骨太の方針には、こうした弊害を絶ち切ることが必要です。最近問題となっている談合事件も、高検の捜査が入りましたが、この談台事件についても当事者のモラルの欠如と同時に、実は官業自体のこうした構造上の欠陥によるところが大です。
 単純な発想ですが、官業を廃業させることによって無駄な国の経費をカットします。他方、官業を民業へ移行させることによって企業は利益を上げるべく活動します。こうして税収を確保する図式に置き換えれば、全体として国の財政は、歳出をカットし、歳入を増やすことによって、財政収支の改善がはかれることになります。しかも民間の活力と広範囲な市場によって、多様な新機軸を創出し、雇用の創出にも大きく役立つことになります。
 ここで検討されるべきことがあります。即ち、所得税や消費税、法人税の増税を導入することによって、財政の改善をはかることも一考でしょう。しかし度々申してきているように単なる歳出のカットや増税という発想では、ようやく浮上してきた景気回復の芽をつんでしまい、出鼻をくじく結果になることを憂慮します。逆に、ここまで自助独力で回復してきた民間経済を更に強い回復に繋けてゆくことが、然り、賢者の打つ手であります。

(機関紙『昭和経済』56巻9号巻頭言より)

平成17年6月15日

社団法人 昭和経済会
理事長 佐々木誠吾


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