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VOL24.11
石破内閣の誕生
石破茂氏が総理総裁に就任し、石破内閣が誕生して早や一か月が過ぎた。聞くも忌まわしい「金と政治」、極めつけは「裏金と派閥」といった課題を負っての政権担当の難しさは、石破さんにとっては何かにつけて大変な船出となった。首相となって全ての決済は自分の信念に基づいて進められていくものと思っていたが、さにあらず、人事の面で何かと苦労が付きまとい、大派閥の旧安陪派は完全に解体されたものの、意に反して旧勢力成るものの発言を無視することかなわず、苦肉の条件をのまざるを得なかったに違いない。民意に沿って十分に審議を尽くし国民に判断しやすい材料を提供してから、解散総選挙を行うとしていた持論も果たせずに、そして加えるに、27日に衆議院の総選挙の投開票が行われ、国会での議席の過半数割れが現実の問題になった。
役員人事では、幹事長に重鎮の森山を置いて老練な手腕に期待している。小泉進次郎を選挙対策委員長を指名、27日の総選挙戦に起用したが、期待外れに終わって惨敗した。まだ若いし、重荷であることは承知の上だったかもしれないが、上刃だけの人気に全てを買いかぶってしまった点は否めない。過半数割れして単独では政権が何事も決議しえない状態を生んでしまったが、何十年と積み重ねてきた自民党政権の「膿」を払しょくするには、下野してでも、政権離脱の覚悟を決めた大手術が必要である。石破さんはその点実に苦渋の決断をして、裏金作りの不良議員を自民党候補から外したりして蛮勇をふるった方である。石破だから、時代の寵児としての辣腕をふるうことが出来たのである。議席の激減は致し方ない。 続 11月1日
共和党のトランプが大統領に
高齢ながら精力的で瞬発力のあるトランプが、米大統領に帰り咲くことになった。日本時間で11月6日夜から始まって全米の大統領選挙人の選挙で各州の投票結果が発表され、トランプの圧倒的な勝利が確定した。米国民はもとより世界の経済、政治がこれから先激浪に晒されて、良くも悪くも激しく翻弄されていくに違いない。民主党からすれば43件もの訴追事案を身に抱えたランプが法廷闘争と戦いながら、或いはこれらを封殺しながら、或いは自分も含んて恩赦を取り付けたりしながら、内外の政治経済に立ち向かっていかねばならないから、タイミングが狂えば気の荒さで何をしでかすか分からないリスクを多分に負っていることに気づかねばならない。
更に付け足せば、生来の嘘つき、詐欺師的な手法を以て、世の中をかく乱するような行為を平気でしでかすことだってありうるだろう。老人につきものの異常な執着心はますます病的に増幅し、勝手気ままな政策を使い自らの欲望を果たそうとするときに、側近が勇気を以て止めることが出来るかどうか、人事面で懸念が残る。イーロン・マスクのような人物が出てきて、媚びを賭けながらトランプの顔を札束で撫でまわすこもとありうるから、余ほど気を締めてかからないと、飛んでもないとばっちりを受けかねない。金さえ出せば何でもしてくれるといった風潮が、ホワイトハウスに蔓延すると、その廃頽振りはあからさまであり、政治はますます混沌としていくであろう。大いに警戒すべき点である。
選挙中、自分が大統領になったらウクライナ戦争を一日で終わらせると豪語してはばらなかったが、それほどの気概は実に見上げたものである。一日や二日で戦争を終わらせてくれとは誰も思っていないが、渾身を振り絞って問題解決に力を注いでいくといった心意気を高く評価したい。まさか嘘でもあるまい。先ず手掛けてもらいたいことは、紛争の解決と、平和への道筋である。プーチンや習近平のような人物を相手に交渉するといった場面では、笑ってばかりいる共和党のハリスでは心もとない気がしていたが、そうした心配はなくなって済むので、トランプの大胆、巧妙な手腕を発揮してもらいたい。相手も嘘つきだし、いかさまな人物だから、互いに腹の探り合いに徹して好勝負である。役者揃いの芝居を観てるなら駆け引きを見るので面白いが、現実はそんな暢気なものではない。真剣勝負のディールである。しかしながら賢者の交渉は、ディ-ルだけでは収まらない。青臭い話になってしまうが、議論のさなかでも根底にあるのはヒューマニズムの精神であり、奥深い人間性の発露である。トランプにその一片たりともうかがい知るとすれば、彼の言う通り、戦場の惨状を一刻も早く食い止めなければならないという気持ちが湧くだろう。そして戦地で悲惨な惨死を待つばかりの兵士たちを一刻も早く家に帰らせることである。更には貧困と飢餓にあえぐ民衆を、恐怖から救い出いだし平和な生活に取り戻すことである。
アメリカ第一主義を唱えるトランプに、自分と地域と国の繁栄と進歩を第一にするトランプに、果たして他人の苦しみを解消する気概が沸き起こってくるだろうか。アメリカ第一主義はかっての政策であり、彼の大統領時代にすでに経験済みの古臭い思想と政策である。既に経験済みのものであり、駄目だった政策である。見方によれば失敗に終わったということもできる。力に借りたアメリカ第一主義がいかに古臭い保守的なものであったか、多くの混乱と紛争を巻き起こし、今日国と地域の、対立と戦争の遠因にもなったと思われる。協調と共存から逃走し、アメリカはそれで孤立の道を進んでいったのである。いまだにこうした内向きの政策に固執し、流動化し包括化する世界の動きを大観することが出来なければ、トランプの勇ましさは、かっての無知蒙昧の時の時代に逆戻りして得るものなく、トランプの知力、体力、想像力、発想力、判断力、大きくいって統治力、指導力といった基本的な素質、要素に大きな欠如を認めざるを得ない。つまるところ誇大妄想、雄弁に借りた欺瞞的、詐欺的弁舌と云ってしまうだろう。裏社会にも通じて、どろどろしさがある。彼の生い立ちと事業の成功の軌跡を見れば、明々白々である。アメリカ版、田中角栄である。
アメリカ第一主義は既に、古臭い。今のアメリカの現状を見ても、経済は比較的安定しているし、理想的な成長路線を走っているし、所得格差の縮小に専念して、社会も比較的安定している。「新しき酒は新しき革袋に盛れ」という箴言がある。新しき世に向かった新しき発想の展開こそ、第一主義におかなくてはならない。「日々新面目あるべし」で行こうではないか。 11月6日
一方、第二次石破内閣が発足した。石破さんは言うなれば自民党の改革者として登場し、旧来の古臭いしがらみで持ってきた自民党の「膿」、ウミを出し切って大手術を行う人物として登場したので、少数与党の内閣、組閣は十分承知の上であった。むしろ逆に野党の主張を十分に取り入れて、脱・自民党を目指し、全く新しい政治体制を敷くことに意義があると思っている。それは石破さんでなければできないことだと思っているし、石破さんはその大役を背負って登場した新しき時代を象徴するものと思ってよい。権力と利権を欲しいままにしてきた自民党が、長年行ってきた裏金と脱税に癒着した政治体制が、結局のところ終末を迎えて息詰まり、崩壊した姿を篤と認識しなければならない。自民党の一強政治を許してきた日本の国体も、言うなれば野党の諸君の不勉強と力不足にあった。裏金と裏社会は、早晩崩れ落ちる宿命にあった。政治資金規正法の弱点を突いた自民党議員の奔放さを突いたのは、市井の一市民であった。波紋は広がり、大きな渦となって、百名を包して権力を掌握してきた安部派は、音を立てて崩壊したのである。後を追うように領袖たちは形振り構わず、派閥解消に走った。当局の捜査を恐れた連中が、こぞって領袖の地位を捨て、温床であった派閥の解消に走ったのである。これは良いことであり、政治の浄化を進める意味で大きな収穫であった。残骸がまだ温存されているが、根こそぎ断ち切って払拭しなければ、国民はおろか、国自体が激浪に晒されて沈没しかねない運命に晒されるところであった。裏金貯めてそれを収奪した団体とその議員、検察の捜査と訴追を逃れようと躍起だが、収奪した金を返そうとも思わない、欠落した倫理観と良心はいかんともしがたい。国会議員が斯くのごとしだから、裏社会の蔓延を漫然と許していったら手のつけようのない結末を迎えるはずであった。
激浪に立つ大統領の選挙戦矛を収めて鎮まりにけり
軽快に踏むトランプのフラダンス独自の故に我も習ひぬ
高齢に合はず精力を温存し巧みに発揮致すトランプ
見事なり軽快に踏むトランプのダンスに惚れて我も合はせり
雄弁に語るトランプの演説に分別付かず合はす黒人
トランプの別名詐欺師の名を馳せてトランプタワーも建ち上げにけり
税金も払わずいかさま申告に蓄財の後あちこちにあり
トランプの肉食、捕食人種にて喧嘩っぱやく血の気多きも
トランプの支持者の多くが貧困層市民に秘める謎のまた謎
物乞ひの気持ちに似たり金持ちを崇拝すると神に崇めて
ハリス氏を破り大統領に帰り咲くトランプの執念いま実りけり
混戦を予想す人の暴動も起きるという米大統領選
トランプの勝利に株式の暴騰す何ぞ日米時を同じゅうし
日米の為替もドル高円安にふれてためらう日米の企業は
アメリカは多種多民族の国家にて統治に課題山積の民
雄弁とアジに乗っかり身を落とす罪なき民のいつずこにも
一枚の赤紙に召し戦場の露と消えたる若きつわもの
戦場の露と消えたる若者の亡霊となって出でしこの頃
はしゃぎ居る櫻井よしこと高市ら極右勢力の担ぎ手図る
真っ先に戦場に行き爆死せよ無為に冠者を煽ることせで
トランプの捕食動物に相似たり貪欲のほど知る選挙戦
米国の自由と民主を叫びつつ民に分断と亀裂走るは
トランプの勝利に雪崩と打って出る極右政治の生まる兆しに
人格のトランプと能力のハリスとの争点となる今ぞ怪しき
トランプの壊し屋による世の中の広く秩序を乱しけるとは
アメリカにガラスの天井を突き破る女性の又も立たず惜しまる
原爆のあるこの時代に大国のまさか戦争なぞ有るまじきとも
米・中・ロみな専制、独裁の国家へと世界に跋扈す時となりけり
これほどに自由、民主と叫ぶ世に専制、独裁の国の出でばや
トランプのアメリカ第一主義をいうまたぞろ地球に争ひ絶たず
トランプの陽気に踊るステップも自由と民主の国なればこそ 11月7日
大統領選挙で民主党のハリスに勝ったトランプは、さっそく政権の移行に着手して人事の組み合わせを行っている。大体の大枠を構築しつつあるが、衆目のウクライナ戦争の終結に意欲を示し、プーチンと接触しているとか、そうでないとか情報が錯綜している。ウクライナのゼレンスキーにとってはトランプが勝手に戦争終結の条件を設定されても困るに違いない。悪いのは侵攻して戦争を始めたプーチンであり、その時以来祖国を守るために莫大な犠牲を払ってきているので、やすやすとプーチンの要求を受け入れるわけにはいかない。むしろ泥棒に等しいプーチンの悪行を殲滅したい心境なのではないか。
ここにきてどうした風の吹き回しかしれないが、北朝鮮が余計なちょっかいを出して、北朝鮮の軍隊をロシアに送り、ウクライナの前線に配置して戦闘に参加させたりしている。既に12000人近い兵士を国境のロシア領のクルクス州に移送し既に戦闘を交えているという情報も入ってきている。一部では戦地に慣れない北鮮の兵士は、ウクライナ軍の砲火を浴びて多大な犠牲者を出している由である。金正恩の思惑と行動は以て複雑怪奇、残虐と云わねばならない。兵器砲弾を以て外貨獲得なら話はあろうが、未熟な兵士を輸出して殺害させ、見返りに外貨獲得とくれば、専制、独裁者の何と恐るべき行動かと、恐怖政治の何物でもない蛮行である。北鮮軍がロシア軍と作戦行動を開始し、ウクライナに攻撃を仕掛けたとすると、先に取り交わした軍事同盟成るものを実地に確認しており、拡大解釈すればアジア極東地域に大きな脅威となってくる。
トランプ政権の始動を前にウクライナとロシアの仲介に立つトランプの思惑をめぐって、ウクライナとロシアとの領土分割と割譲をめぐって熾烈な戦闘が続いており、占領地の拡大に北鮮軍が加担して戦火を交えている。トランプの作戦がどこにあるか、まさかプーチンの言いなりなるとしたらウクライナが承知するわけにはいかないだろう。プーチンの大幅な譲歩を引き出すには、アメリカが撃って出ている経済制裁の一定の解除と引き換えにデイールするかどうかである。ウクライナに大幅な譲歩を強いることは、ゼレンスキーのその後の政治的な不安定を招きかねない。侵略者はプーチンだから、プーチンに対し譲歩を引き出す工夫が必要である。厭戦気分が出かかってきているし、いつまでも国内向けに嘘をついていられるわけでもない。国内の反政府グループがいつ反旗を翻してプーチン打倒に走らんとも限らないからである。その伏線として、北鮮の金正恩を実質的に味方に引きずり込んだ節がある。両方とも専制的独裁主義国家だから、馬が合ったのだろう。無知蒙昧の国民を牛うまの如く使い捨てて顧みることがない、野蛮極まりない偽善者だからである。
国たみを牛馬のごとく操りて殺す専制独裁者たち
牛、馬の如く邦民を酷使して戦場にまで送りり死なせり
北鮮の未熟な兵士をウクライナ戦線に出し稼ぐ外送り
やばんなる専制独裁者の私利私欲みたし国民を死に追ひにけり
意のままに使ひ国たみを牛うまの如くに専制独裁者たち
民衆を恐怖と圧制のもとに置き口を封じておのが意のまま
独裁の政治の末路は民衆の蜂起にあひて惨殺のあと
歴史的古今東西のおきてなり独裁政治は長く続かず
アメリカよ自由と民主を標榜す良心に覚め王道につけ
トランプのシャーマン術の幼稚さよ酔う民衆の幼稚さも又
ウクライナ戦場に不可解な動きが出てきて、状況の意味するところが分からなくなってきた。東洋人らしき顔つきをした兵士が硝煙立ち込める前戦に突如として現れ、ウクライナ兵に銃口を突き付けて突撃してくるではないか。ロシア兵かと思っていたが明らかに人種の違った顔と体型からして、今まで見たこともなかった東洋人である。なぜ東洋人が今になって全く敵味方として関係のないウクライの最前線に加わってきたのか、軍の指揮系統が狂ってしまったのか、ウクライナ兵は困惑したに違いない。銃を向けて殺すべきか否か、ひょっとすると他国の志願兵がロシアに味方して参戦してきたか、どうにも判断しかねる事態である。
暫くして軍の上官から前線に説明があって、どうもその兵士は北朝鮮の軍隊からなる兵士だとわかった。好き好んで何も8000キロも離れたこの戦場の地に、北朝鮮軍がロシアに加担してウクライナに攻めてくるんだと、両方の兵士らは訝しげに思うに違いないが、もはやこれが現実だから理屈をこねていても仕方がない。そんな悠長なことを言っている場合ではない。その理不尽な東洋人に対して、つまり北朝鮮の兵士に対して素早く銃口を向けて撃ち殺さないと、自分がやられてしまう。明らかにロシア人の兵士の盾になって、死を覚悟に向かってきている。昔の日本人兵士がまさしくそうであった。肉弾三勇士、人間魚雷、特攻隊、自爆、戦場に連れられてきて上官の命に従い戦場の露と消えていった若者たちを思い出すのである。
こうして送られてきた若者たちは、プーチンと金正恩との間で結ばれた条約によって強制的に送られて、生死の境界に立たされて二者択一をしいられている。
専制独裁国家ならば洗脳された市民が従順に戦地に赴き、独裁者や国家のために殉死することを美徳として死んでいくことはあるかもしれないが、自由で民主主義国家を標榜する市民にとっては、生命の尊厳をないがしろにしたりすることはない。悲しい運命に晒される若者たちは気の毒であってはならない宿命だが、貪欲さと支配欲がこの世に付きまとっているからには、悪魔の声がこの世から消え去ることはないと思われて無念たるものがある。
地球儀をまわしてみても広大なロシア領にはびっくりするが、それでもあの小さなウクライナに侵攻し僅かな領地を略奪しようとするプーチンの魂胆が全く分からない気がする。狩りだ出された前線の兵士にとって、残酷な死という境遇に立たされた若者にとって、ウクライナが勝つかロシアが勝つか、そんなことは全く兵士には関係ない。自分という一個の人間の存在価値を自覚すれば、国家という概念すら末梢的観念である。ましてや一君主や独裁者のために自らの命を絶やすなど、自らの価値観を否定するような観念は、以てこの世に生まれてきたことを考えれば、人として塵芥に等しい。敵、味方関係なく双方の戦士たちが戦場での犠牲者とならず、弾に当たらず生き延びてくれることを望んでいる。
硝煙と廃墟と藪より銃口の向けられおれば直ぐに地に伏せ
授かりし命があれば何時いづこ価値あるものと理解するべし
己が身の天命の身と認識し勝手に絶やす術は無きなり
殺される前に相手を殺すべし戦場での垂訓とも聞く
鬼となれ悪魔となれと戦場の掟も空し銃口の先
政治評論家、藤原弘達
昔のこと、政治評論家の名を以て一世を風靡した男に明治大学の教授をしていた藤原弘達がいた。テレビ東京の日曜日の朝の早い時間帯に「時事放談」という番組があって、辛口で評判の高かった細川隆元や日経の社長をした小汀利得などが常連で出演していた。のちに藤原弘達や斎藤栄三郎などがレギュラーで出演して、云いたい放題の厳しい評論を交わし、時事性の高い知的番組であって、小生はいつも見聞きしていた。最近でこそ、自由奔放に自説を述べて民衆を啓もうする弁士が居なくなってしまったことは寂しい気がする。そうした御仁がいないわけではないが、スポンサーがついていたり、商業主義に走って辺りを気にしながら発言する人物が多く、魅力に欠けるものが多いのである。
昭和経済会では長年、こうした人物の登用を以て大方の講演会を開いてきているが、顧問の斎藤栄三郎に至っては、常連の講師として年に五回ほどスピーカーを依頼し、先生も気安く毎回来られて経済問題を中心にして親しく学習させていただいた。斎藤さんは生真面目な人柄で、最初に講演する内容を列挙し、順を追って論点を明かしながら、しかも原稿を見ないで何時も経済問題を解説し参加者にわかり易く話しかけるので評判が良かった。参加者はそれを参考にしながら日常の経営方針に盛り込んで、大いに利するところがあった。商学博士、法学博士、文学博士の三つの称号を持った人物は沢山はいないはずである。そうした培われた博識を以て公演は多岐に及び充実していた。参議院議員になって後、第一海部内閣では閣僚の一員に加わったりしたが、本命とする経済企画庁長官ならず科学技術庁長官だったことがくやまれていたようである。
経済通の斎藤さんの提言に従って経済財政政策が運営されていたならば、その後の日本経済に大きな影響をもたらしていたに違いない。国会での代表質問は原稿なしで30分の長きにわたり朗々として立て板に水の如く、完膚なきまでであったことが記憶に残っている。政治家として志高く掲げて政界に進出したものの、過酷な政治の世界は、斎藤さんの性格、品性に合わないのではないかと思われた。学者として道を歩んだ方が孤高の優れた斎藤さんには水があっていたような気もする。又この時期に、自民党の政治家諸君は大した人物がいなかったような気がする、陣笠連中が権謀術数を駆使して暗躍していたのが特徴であった。親しくしていただいたが、軽井沢の別山にあった別荘に案内されたが、その時は日本橋の小料理屋、藤井の女将と、味の素の城戸崎夫人とご一緒の旅先だった。懐古趣味がふと脳裏をよぎったのである。
ところで番組は細川隆元と小汀利得らの時代を経て、斎藤さんの日曜対談は、特に藤原弘達さんとの丁々発止のやり取りが痛快であった。対照的な性格と論法が互いに、対談を際立たせていた。礼儀正しい斎藤さんに対し、乱暴気味の論調で自由奔放の藤原さんが豪快に見えて、一刀両断に遭遇する大物政治家も辟易の体であった。その藤原さんを講師に招くことは当時、名物男で人気が高く難渋を極めたが、昭和経済会の要請を好意的に受け止めて快諾を得、赤坂のプリンスホテルで盛大に開催したことがあった。公演中、突然「冗談言っちゃいけねぇー」と聴衆を沸かし「北方四島の返還をめぐって、ソヴィエトとドンパチされたらたまったもんじゃねえ」「被害が大きいし、そんなものくれてやれぇ」と喝破していたことが記憶に残っている。「けちけちしねえで、日本は金が余って困っているんだ。いっそのこと金を払って買い取ってしまった方がさっぱりして、気が済んでいいのじゃねえかねぇ」とも申して、あっけらかんとしてぶちまけていた。金で解決するといった正鵠を得た豪快な外交手段であった。あの時、藤原さんの言う通り北方四島を買っておけば、今のロシアとのでれでれした交渉もなく、いざこざもなく、北海の豊かな漁場を手にしているはずであった。あの時大いに賛同して意気高揚の小生も日本国は、戦争を放棄したのだから、戦わずして平和的に領土を奪い返すにはそれしかない。北方領土については気前よく金を払って手に入れるべきだと、締めのあいさつに申し上げたことがある。ロシアとの交渉が続き、返還する気など全くないプーチンは、安部さんとの交渉ではたかる一方であった。自慢ばかりしていた安部さんはプーチンを親友扱いして27回もの会談をしていながら騙され通しであった。今になって振り返ると、騙されどうしだった安部さんが気の毒に思うのである。
戦争の苦しみを体験した者にとっては至極共鳴することが出来るが、今のウクライナにしても、ロシアのプーチンは戦費に費やす莫大な金を、なぜ欲しい今の領土の買収に当てないのか、理解に苦しむことである。力を以て他国の領土を合意だつしようとする魂胆が、そもそも考えることがおかしいのであって、この世の世界で暮らす資格がない。盗人猛々しで、けちけちプーチンのだらしなさが伺えてならない。ましてや何万という兵士を犠牲にして、顧みない有り様である。馬鹿に付ける薬はないと申すが、地獄の果てにたたき落されない限り、気づくことが出来ない輩である。チャップリンではないが、個人が殺人を犯せば重犯罪人として裁かれるが、国家の名を利用して何百万人の人を殺しても罪に問われないでいる。こんなことが許されてたまるもんか。国際社会はようやく目が覚めた。ウクライナを侵略して多くの殺人を犯しているプーチンは、国際司法裁判所から戦争犯罪人として逮捕状が出るありさまで、政治家として、否、人間性の欠如も歴然であり人として失格である。イスラエルのネタニアフも同一である。元気のよい毒舌舌鋒の藤原さんが生きていたら、プーチンを捕まえて何と申されることか、顧みて万感迫るものがある。
動き出したトランプ政治
政権移行を前にトランプ政権の発動を控え、トランプによる関税を武器に使った劇場型のディール外交が、既に始まったようである。平和な国際関係の維持については自由貿易を主軸に拡大させることが望ましい。関税をなくして各国の物品がスムースに取引され国内経済の活性化に大きな役割を果たして、平和外交の維持に大いに協力していくことが望まれるのに、関税の障壁を取り払うのではなく、自国の都合をよい方向に持っていくために関税を設けて外国の製品を排除しようとする試みが時にして強行されることがある。火こそ噴かないが、弾丸やミサイルに代わって、関税を武器にした新しい攻撃型の戦争の形でもある。一例として例えば対中国の関税引き上げの場合である。中国の軍事的外交政策に対し、はたまた国内の過剰在庫を安くダンピングして輸出することに対抗して、または中国で作った合成麻薬がアメリカに不当に流れてきていることに対し、中国に対し一律10パーセントの関税を上乗せすると発表した。中国からの輸入品に対し一律に10パーセントの関税を課せられては、中国にとって多大な損を被ることになる。
具体的には、トランプ次期米大統領が25日に、「来年1月20日に就任した際の最初の大統領令の一つとして、メキシコとカナダから米国に入るすべての製品に25%の関税を課す」と強調した。また、「中国から輸入されるすべての製品に追加で10%の関税を課す」考えを明らかにした。大統領の就任前の、55日前に「関税爆弾」を予告して、「米国第一」を前面に押し出した世界経済の再編にスタートを切ったのだ。影響は直ちに為替に表れた。米ドルに対する主要国の通貨価値が下落し、各国の金融市場が揺れるなど、「トランプリスク」が現実のものになっている。
トランプは亦、「メキシコとカナダから押し寄せる数千人が、米国に前例のないレベルの犯罪と麻薬を広めている」と非難し、「両国がこれを解決するための権限を使うことを求め、それまで非常に大きな代償を払わなければならない」とSNSに投稿したという。そして、「この関税は、麻薬、特にフェンタニルと、不法移民の侵入が止まるまで効力を発揮するだろう」と付け加えているているという。トランプ氏の今回のメッセージは、就任初日に隣国であり同盟国であるメキシコとカナダに対する関税を25%に引き上げる大統領令に署名するという意味である。米国は、これまで自由貿易協定(FTA)の一種である米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を結んでいるメキシコとカナダに無関税を適用してきた。しかし、この自由貿易協定を一方的に排除するという解釈である。早くもと乱歩のむっ鉄砲なラッパが吹いたが、これから先めぼしい国々を相手に、ラッパを乱打して世界を騒がせていくに違いない。
又、トランプは、中国に対しては「フェンタニルの搬入について何度も話をしたが、何の役にも立たなかった」と不満を示してきた。そして先に述べたように、中国がフェンタニルの原料の流通を止めるまで、10%の追加関税を課すと明らかにした。具体的には、第1次トランプ政権の時には、3700億ドル、約490兆ウォン規模の中国製輸入品に、一律7.5~25%の関税賦課を指示したが、今度はこれに加えて10%を上乗せして課すということである。
メキシコ、中国、カナダはそれぞれ昨年の米国の1、2、3位を争う貿易国である。トランプ氏が最大貿易国をターゲットにした関税圧力を強化し、主張するところの「アメリカ・ファースト」のためには、グローバル貿易体制をも揺るがす考えを明らかにしたとみられる。これにより、バイデン政権のグローバル・サプライチェーンの再編に伴い、メキシコなどに投資を増やした韓国企業などは、そうした被害が避けられない情況である。
トランプ主導によるアメリカによる厳しい貿易戦争再燃の恐怖がすでに始まっており、これまで結ばれてきた国際的諸国の関税障壁の撤廃などの連携が、揺さぶられたりして国際秩序が破壊されないとも限らない。国際社会において尚、経済格差の広がりを助長する方向に走っていき、あらぬ対立、軋轢を誘発する要因ともなりかねない。相互補助、助け合いの精神が活かされていれば、国境を越えて他国を侵略する必要も起きてこないし、戦火を交えて互いに殺傷を繰り返し悲惨な状況を作らないでも、人間社会は平和裏に楽しく過ごすことが出来るのである。自分さえ良ければいいという利己主義が、排他主義につながっていくことは自明であり、アメリカ第一主義の傾向が、日本に及ぼすことなども真剣に考えて、当局の対応の誤り無きを期待したい。これまでの国際間、地域間に於いて友好的に確立されてきた国際秩序を堅持するためにも、トランプ政権がアメリカ第一主義を貫くために、関税引き上げの跳ね返りも起きて来ることをアメリカ自信が真剣に配慮、検討すべきである。壊すことはいとも簡単だが、作り上げていくことは困難を極めるということである。 11月27日
苦渋の石破さん
今年は世の中が騒々しく過ぎていった。近くには、政治的な話になるが岸田内閣が裏金問題で行き詰まり、岸田さんが政権を投げ出した結果、自民党の総裁選に突入して待望の石破さんが総理、総裁の椅子に座った。待望のと云うのは、ご本人もそうだと思うが、小生が主催している昭和経済会の席に二回ほど講師に招いて話を伺ったことがあって、以後親しく交誼を重ねた来ているからである。期待し、支持してやまぬ石破さん、非主流派を自認してこれまで安部や岸田などと距離を置いてきただけに、単独行動には党内事情もあって制限が付く。意に反して電光石火、10月11日に衆議院の解散、27日に即日投・開票という選択を強行した。これは意外だった。
日頃の落ち着き払った様子はどこへやら、選挙運動中、せめて自公で半数確保を目標にめまぐるしく動き回った石破さんだったが、蓋を開けてみたら自民、公明の過半数割れというみじめな選挙結果であった。満身創痍、自民党というどろ船に載せられた石破さんだから、結果は致し方ない。重々承知の上のことである。立憲民主党が大幅に躍進し、国民民主党が四倍の28議席を取ってキャスチングボートを握って登場した。今回の選挙では野党の諸君も足並みが揃わず、票の食い合いとなり、幸いにして野党の連立政権に至らず、自公は少数与党に転落したには違いないが、それを以て政権を野党に譲り渡すことにはならなかったことは、石破さんの、自民党の勝利だったとみていいだろう。下手をすれば下野する状況であった。
野党も虎視眈々として互いに党勢拡大を狙う状況になった。自公も少数与党として政権の運営のかじ取りを、野党の諸君と協議、合意形成の上で行っていかねばならない。今までは自民一強の政治に甘んじてきたが、これからはそうはいかなくなった。もともと派閥の集団だった自民党だったから、金と政治、裏金作りの母体を成していた派閥の実態が白日に晒されて、党の崩壊寸前にまで追い込まれたからには領袖たちは、雪崩を打って派閥解消に乗り出した。自らの身にかぶさった火の粉を取り除かねばならない。うかうかすれば刑事事件で逮捕・拘束の身にならんとも限らない。機を見て敏とは政治家の持って生まれた機転である。その数があまりにも多いことゆえ、事の重大性に鑑み検察もうかつに手出しができないでいた。
自民党内では清廉潔癖、無派閥で孤高を貫き、変わり者として相手にされず、大半がどろどろした政治集団の自民党内からは、当然のことながら決して好感を持たれる身ではなかった。裏金作りと派閥の解明に懸命の努力してきた、岸田さんすら首相の椅子を投げ出した自民党、崩壊寸前の自民党の危機を救うには、石破さんしかなかったに違いない。早期解散、総選挙に打って出た石破さんが、国民の熾烈な批判の嵐にあって敗戦の将に立ち、野党の攻勢にあって過半数割れを覚悟していたに違いない。その試練は党の改革と刷新を意味し、党の命運と存亡にかかっていることは自覚していたはずである。国民も自民党一強政治が、政局の安定につながり、国家繁栄の道と思っていたことが、裏目に出たことを自覚するに至ったことは、雨降って地固まるの箴言の如く、国民の意識改革として大きな進歩につながったのである。どろ船に載ってどこまで連れていかれるか分からない情況に、神の声がかかったとしか理解できない様に、自公による長年の政治が瓦解し、広く野党の声を組み込んだ、これぞ挙党一致内閣とでも云おうか、少数与党内閣は今や、野党の政策、思想を汲んで広く一般国民の意向を尊重していく政治体制に改革されていくことになってきたことは、以て幸いとしなければならないし、歴史の必然性でもありと理解している。そうした大きな流れに適した人物と云えば、今まで与党内野党を自他ともに認めてきた石破さんに白羽の矢が立ったいということになって、それぞ天命であり、その使命たるや極めて大と云わねばなならない。
思いもよらず石破さんは腐りきって沈没寸前の自民党の泥船を操縦する役目に躍り出たが、政局の運営が少数与党の内閣の身にあることが幸いし、野党との協議、熟議を経て合意形成によって、むしろ優れた国民本位主義にのとった民主厚生的政策の遂行に邁進できるのではないだろうか。そのように解釈するのが本道である。石破さんの躍如たる姿勢が、本領を発揮する場面が、これからの努力如何で成就されるに違いない。何だかんだと云われながら、次第に風向きが石破さんに向いてくるに違いない。
一強与党内閣の強みに甘んじてきた自民党であるが、与・野党逆転の国会運営を強いられることになり、政局に不安な要素と流れがあるにもかかわらず、不思議な安定感を感じるのは、日本政治の構造的流れに特殊な変化が本流として流め始めたからであり、そうした流れに慣れるまでは石破さんは忍の一字に耐えるしかない。自民党に在籍していながら主流にあらずして、その自民一強政治の手法に対し批判的立場を貫いてきた。長年、陽、忍の一字に徹した男が立ちあがった以上は、実を結実すること確実である。
選挙の年だった世界
アメリカ大統領の選挙が終わって、またぞろあの喧しい共和党のトランプが民主党のハリス候補を大差で打ち負かして新しい大統領が決まった。民主党のハリス候補は善戦したが後半疲れが出てきて馬力を失い、初の女性候補としてガラスの天井を突き破ることが出来なかった。勝利したトランプの大統領の就任式は新春一月の二十日である。就任する前から人事が進められて、トランプを取り巻く陣容が次々と決まって、こちらはトランプ一色である。トランプの腹心として忠誠心を誓った人物ばかりで身辺を固めているから、これからのアメリカは保護主義の最たるものでアメリカ・ファーストが幅を利かすだろう。関税の引き上げを武器にした大国と、弱者ぶち壊しの外交政策が展開されてくる。既に中国がやり玉に挙げられて輸入品に一律10パーセントの関税の引き上げが決まっている。カナダ、メキシコには25パーセントの引き上げである。理由は、不法移民と麻薬をアメリカに持ち込み犯罪の温床となっているし、それに対する報復処置である。近くには気候変動による地球規模の災害が頻繁に発生しているが、CO2,二酸化炭素の排出量の縮小を進める国際機構も、解体される問題に直面するかもしれない。国内への宣伝では、既に石炭、石油のさらなる発掘、増産の声をあげてるからである。
アメリカの選挙と日本の選挙のほかに世界ではたくさんの国々が選挙によって政治体制が変わったりした年であった。今年はそうした世界の動きと流れが一挙に噴き出て、慌ただしく変貌する年に代わろうとしている。生活の身辺が、日常の政治の動きを激しく反映させていくに違いない。しかしそうした内外の変化に振り回されることなく、我々は、原理、原則を胸に秘めて、大地に足を強く踏みしめていくことが大切である。我々の健康を原動力として、世に臨む秘訣である。心身の健康を持続化させる問題であるが、母校早稲田大学の創立者、大隈重信は「人間にとって健康であることが大切な要諦である」として、肉体的健康法と、精神的健康法なるもの自ら案出して、日常の生活に積極的に取り入れていたのである。この教訓は、世間一般でもほとんど取り沙汰されていないし、聞き及んでいない事柄である。
取り分け小生が重視してやまざるものに、精神的健康法五ヶ条がある。真理は単純にして平凡であるという言葉は、同じく早稲田大学名誉教授で経済学博士の堀江忠男先生が、小生に書いてくださった色紙である。大隈の精神的健康法五ヶ条を読むにつけ、それは極めて常識的な簡単なものに聞こえるが、しかし堀江教授の色紙を、しみじみと思い起こすのである。しかし簡単で平凡だが、云うべくして成し難きことでもある。 続
月刊誌、淵の刊行物
私は縁あって、近代を代表する大歌人の、会津八一と、植田重雄早稲田大学名誉教授が創刊した短歌同人誌・淵・を定期刊行物として編集、発刊しているが、持ち回りで同人の投稿したうたの論評を掲載している。二四六号を数える今回は、小生が担当している。抜群の印象に残った各位のうたの中から二、三首を選んでこれに論評を加えることになっている。結構面倒な仕事なので、文章で論じる代わりに歌で読み返して趣向を凝らすのも粋な遊び心で、これを返歌として扱ってみると、和歌の活きた方向を探ることもできるかなと、勝手に思っている次第である。
万葉集には有名な額田王の詠んだ歌に、返事をしている皇太子の有名な和歌が両者合わせて二種が載っているが、試しにその事例を挙げて見ると実に優雅であり、そこに詠まれている心情の光景がきれいに浮かんでくるから不思議である。
あかねさすむらさきのゆきしめぬゆきぬもりはみずやきみがそでふる
と呼んだ額田王に対し
むらさきのにほへるいものにくくあらばひとずまゆへにわれこひめやも
と皇太子は返歌を詠んで返している。
そこで小生も粋な遊び心を演出してみたいと前号から試みてみた。さすれば、うたを詠む機会もそれだけ多くなるということでもある。昭和経済の読者諸兄には、日本古来の和歌を詠む機会もあって、ちょっとした情操発揚の場に知識を折り重ねて試してみることもできて楽しいのではないかと思っている。昔は恋歌の返歌として、例えば「愛しているわよ、あなたが好きで仕方がない」といった趣旨の歌を詠んで、彼女に送るわけである。それを受け取った彼氏は「私もたまらなく好きでしょうがない。思うばかりに夜も悶々として寝られなく過ごすことがある。この気持ちを分かって下さい」。と嘆いた言葉のうたを以て、相手の心をくすぐるのである。
今どきの男女の関係を、こうした気持ちと手法を以て恋愛感情の高まりを会得する機会が、全くないわけではないが、今では直接的、直情的に、手っ取り早く恋愛を体験したいという風潮である。昔はそうでもなかったような気がするが、NHK の大河ドラマの「ひかりへの君」で今、大きな人気になっているところを見ると、しっとりとした恋愛感情と交際の仕方について、あこがれのような気持ちを持たないわけではない。昔の優雅な恋愛感情のやり取りなども、出来たら自分でも持ってみたいという気持ちも当然湧いてきたりする。万葉集にもこうした歌い方の輪かは随所にみられるが、今どきとは言え返歌、返事といった処方を、うたを以てやり取りするのも乙な感じがして、今でも実際に繰り返すことが出来れば幸いなことだと夢想に近い思いである。
翻って今回、作者の投稿に対して私は批評、鑑賞といった形を以て対応しないで、それを肯定したうえで、自分なりの考えをうたを以て返したということである。自分のうたを重ねて読むことが出来て良かったと勝手に考えている。淵のうたの鑑賞を今回、左記のような正式を用いて編集してみたので、読者には、これを読んで鑑賞してもらいたいと思っている。
前号(淵)の歌の鑑賞
返歌 佐々木 誠吾
植田重雄
○肥後の国昔ながらの濁り田にのどかに生きよ殿様蛙
返歌
戯歌、漫歌酒脱な和歌を詠みこなし酒に田にしをくらふ植田師
学園に恥ずかしながらえせ学者居りて生徒を惑わしにけり
○禿頭に墨くろぐろと髪を描き捲毛まで添ふ老教授あり
返歌
老教授はやかん頭に墨を塗り生徒手駒に学習の部屋
先生の厳しき姿勢に伺える一首のうたにうなずきにけり
○不合格な悲しみそ受験生釈迦キリストは大卒ならず
返歌
裏金と政治家といふ論文を書き博士号を取得致せり
他人(ひと)の説触れ周り説き盗作す身元あやしき学者多きに
生徒らにデカルト、カントの学説を説き世を渡り行くいかさま教師
渋谷富子
○小町通り若者の街と代はりたり古書店・喫茶もスイーツ店に
返歌
鎌倉の小町通りを化粧した男の源氏が胸を出しゆく
古くより古書や漆器を売る店の伝統なれば消ゆるさびしき
○水無月の風ははやくも夏を呼ぶ遍路の装束まぶしき程に
返歌
お遍路のつもりになりて友とゆく五剣山はるか遠く見指さして
○お大師さまの「生誕祭」とふ甘茶受く幼少像のにこやかにし
返歌
山道をお遍路姿に見習ひて即身成仏と唱えゆくかな
佐々木誠吾
○青草のおほふ若草山に立ち眺むうららな大てらの屋根
返歌
青草は深まりゆきて枯れ草に果てに世のひとをあはれ見るかな
〇闇の世を隈なく照らしいつくしむ天たらす身の我が前にます
返歌
我が前におそれ多くもおはします大きほとけに手をあはせけり
○空海の教へにならひ目を開き汎我一体の理に立つ
返歌
このごろの我に覚ゆることの葉に汎我一体のひびき重しも
大野雅子
○七十路も半ばとなりて久し振り同窓会の知らせ届きぬ
返歌
喜寿の身のまだ若きかなふり返る身に青春の時の友らも
返歌
○会食のステーキなども怱ちに皆食進みまだまだ元気
返歌
年のこと気にせで放題に喰べ尽す健啖にて健康を長く維持せん
○話すうち持病の付き合い皆ありて一病息災上手に暮しぬ
返歌
友らみな達者に世をば渡りゆくさまに一病息災のあと
忘れまじ 大宮ふじ江
○山梨のひまわり見たしと夏の日の畑を歩く山風うけて
返歌
忘れまじふるさと熱く描く身のひまわりの花ゆるる大地に
○古希すぎし友と二人で川越へ地図を片手に喜多院さがす
返歌
喜多院を詣でに友と行かんかや古来稀なる年を祝ひて
○喜多院の五百羅漢のお姿に笑い誘われ心安らう
返歌
極楽のほとけの多くおはしまし汝ら無病息災を期し
ま夜のトレモロ 木下容子
○「ラ・クンパルシータ」亡父爪引きしマンドリン流るる部屋にスウィングのわれ
返歌
曲もよし軽快なれば心浮き身軽に踊る君はたのもし
○憂いひとつ晴れて嬉しもさりながら心の傷のま夜のトレモロ
返歌
汝(な)がゆへに天使の静かに舞ひおりて心の傷を消さむトレモロ
○久々に明るき声で娘の電話「淋しいけどね」愛犬逝きし
返歌
雨音もきらめく星も汝が胸に贈り賜へる神のささやき
久方の雨間の夕星やさしかり心和みてあ
かず見上げぬ
蛍火 澤田鞠子
○サッパ舟あやめあやめの水路行き花色ひかる雨滴を弾く
返歌
あやめ咲く濡れた佐原の街なかの水路をサッパ舟を漕ぎゆく
○補聴器に微かに届く川音の時おり弾け耳朶をくすぐる
返歌
補聴器を我もこの頃かけて聴く川音ならで雑き音のみ
○清滝のたぎつ川音鎮もれば蛍火一つ闇に浮かびく
返歌
うらやまし清流の音補聴器に流れ心身共にさやけき
雨の短夜 丹波ともこ
○ときめいた心見つめるひとり旅海山里に君を想えり
返歌
想ひ染む人をたよりにひとり旅美しかりしまだ若き君
○女とは灰になるまで女とふ少しわかりぬトマト熟せり
返歌
我も又証の歌とも覚へきてまだ先長き方と思へり
○わたしだけとしをとったとわらわれる亡父と無性に酒交わしたき
返歌
意味深く前詠のうた読み返へし今宵の酒を飲むも嬉しき
會津八一の梵鐘を訪ねて 伊達美智子
○四国路の八十五番八栗寺に詣り写経す祈る復興
返歌
八栗寺の観音菩薩は喜びて若きおなごを迎えけるかも
○魅せられし八一の鐘の厳かな残響に浸る仲間とともに
返歌
八栗寺の汎鐘をつく乙女らに八一の胸もふるへけるらし
○平安の昔に生れし八栗寺を見守り続く五剣山仰ぐ
返歌
空海の霊あらたかに至る今息吹く大樹の盛りなりけり
社団法人 昭和経済会
理事長